第1話(4)キラキラネームってレベルじゃねえだろう

文字数 1,318文字

「……いかがでしょうか?」

 食事が済んだ後、山田が緑メッシュに問う。

「うん、旨かったよ。まさか冷蔵庫の余り物でここまでのものを作るとは……」

「わたしも色々忙しくなってきたから、誰か料理が出来る子が欲しかったのよ」

「む……」

「これは合格で良いんじゃないかしら?」

「ちょっと待て、トパ」

 緑メッシュが黄色ポニーテールを制す。

「あら」

「君、アタシの部屋を掃除しろ」

「かしこまりました!」

「まあ、すぐに音を上げるだろう……」

「出来ました!」

 山田が掃除の成果を見せる。緑メッシュが唖然とする。

「ば、馬鹿な、あの汚部屋を……」

「自分で汚部屋って言うなよ……」

 水色ウルフが苦笑する。緑メッシュが呟く。

「これは……合格……か?」

「ちょっと待って、私は美容にも気を使っているの、バスルームの掃除を……」

「……出来ました!」

「こ、この短時間で、ここまで完璧に……」

 紫姫カットが驚愕する。水色ウルフが問う。

「料理、掃除は良い、問題は洗濯だ……」

「やります! 下着類などはご自分でお願いすることになると思いますが」

「お、おう……」

 水色ウルフが山田の勢いに圧倒される。

「配信をよくやるんだけどさ~ネットに関しては……」

「詳しいです!」

「おおっ、頼もしいね♪」

 ミディアムピンクが笑う。

「トレーニングに付き合ってもらうこともあるかもしれませんが……」

「体力には自信があります!」

「ふむ……」

 青ショートボブが頷く。

「高校に入ってから勉強が分からなくて……」

「なんでも聞いて下さい!」

「ほ、本当ですか⁉ パイセンに教えてもらえるなら助かる~」

 オレンジロブが笑顔を見せる。やりとりを見ていた緑メッシュが頷く。

「うん、決まりだな」

「え? 本気?」

 紫姫カットが怪訝な表情を見せる。緑メッシュが笑う。

「最初はあくまでもお試し期間だよ」

「まあ、エメ姉さんがそう決めたのなら……」

「よし、山田ガーネット君」

「は、はい!」

「採用だ、これから我が家の家政夫をお願いするよ!」

「! あ、ありがとうございます!」

 山田が深々と頭を下げる。

「早速、明日から仕事をしてもらおう。2階の空いている部屋を使って。問題ないね?」

「は、はい……」

「エメちゃん、自己紹介しないと……」

「ああ、そうだな、アタシは天翔(あまかける)エメラルドだ」

「は、はい⁉」

 緑メッシュが名乗る。山田が面喰らう。

「わたしは天翔トパーズです、よろしくね」

 黄色ポニーテールが笑顔を浮かべる。

「ウチは天翔ダイヤモンド、よろしく~」

 ピンクミディアムが手を振る。

「……オレは天翔アクアマリンだ」

 水色ウルフが腕を組んで呟く。

「私は天翔アメジストよ……」

 紫姫カットが髪の毛を指でいじりながら呟く。

「自分は天翔サファイア……」

 青ショートボブが眼鏡の縁を触りながら名乗る。

「ボクは天翔オパールです! よろしくね、パイセン!」

「え、えっと……トパーズさん、ダイヤモンドさん……って、皆さん苗字一緒?」

「そうだよ、アタシら『天翔七姉妹』、三茶では結構有名なんだけどね」

「七姉妹……」

「それじゃあ、これからよろしく」

「は、はい、よろしくお願いします!」

 山田は頭を下げる。キラキラネームってレベルじゃねえだろうという台詞は飲み込んだ。
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