6章

文字数 14,793文字

「【プリンセス・トルナーレ!!】」
 静かに唱えるミル。彼女を白いクラブ型の光が包み、ただの中学生の姿に戻した
「あれ?クローバープリンセスはどこに行ったんだ?」
「今の今までここにいたはずなのに……どうなってるの?」
 ミルを囲んでいた人々が疑問の声をあげる。人波を静かにかきわけるミル。でへでへと笑うアリセに近づく。そしてコツンと頭を叩いた。
「痛っ!!」
 アリセは急遽行っていた握手andサイン会の中断を余儀なくされた。
「いつまでこんなことやってる気だ?さっさと行くぞ」
「どこへ?」
「……港星総合病院だ。決まってるだろう」
「もっと堪能してから行こうよ」
「……」
 すっかり目的を見失っているアリセにミルは閉口した。
「お前、元の世界に帰りたくないのか?」
「いやいやあ、ミルちゃんの言いたいことはわかるよ。で・も・ぉ・もうちょっとこうしていても罰はあたらないんじゃないかなあ?」
 ごきげんの絶頂にアリセはいる。
「ほう。この世界はビョーマがうようよいるのにか?」
「へ?」
 アリセのテンションは急速に落ちた。
「のんびりしてたらまた現れて闘わなくてならないかもしれん。まぁご立派な戦士であるハートプリンセス様なら、あっさり倒せるのかもしれんがな」
「ふぇーんミルちゃん……そんなこと言わないでよう」
 アリセは涙目になり彼女の身体に追いすがった。
「でも、どうやってここから脱出すればいいの?」
 彼女はまだ人々に囲まれている。
「変身を解け。そしたらただの中学生のアリセになる」
「でも変身解いてもバレるんじゃない?だって私たちマスクとかしてるわけじゃないんだしさ」
「私を見ろ。クアトロプリンセスのお約束で、変身前と変身後で全く顔も髪型も変わらないのに、なぜか正体がバレない。この世界はその法則が生きている世界なんだ」
「そうなの……。【プリンセス・トルナーレ!!】」
 アリセも元の姿に戻った。
「あれ?ハートプリンセスがいきなり消えた!」
「どこだ!?どこだ!?」
 アリセはミルの言葉の正しさを身を持って体感した。
「それでな少年たち。キックというのはだな、このように軸足が大事で」
 サイン会を終え、ちびっ子たちにハイキック講座をはじめていたサキ。そのサキの頭をミルがコツンと叩いた。
「痛え!!夢の中なのに痛え!!」
「おいサキ、早く【プリンセス・トルナーレ】と言え。そしてついてこい」
 有無を言わせないミルの態度。
「……なんだよミル。私の夢に出てきやがんのなら、現実と違ってもっと優しい性格で出てきやがれってんだ」
 つんとつきだされた唇。サキは思いきり頬を膨らませた。
 彼女たちの思いもよらぬ初めての死闘。それが無事に終わりかけようとしていた時だった……

「どうだポゾ?これでわかったんじゃないかポゾ?」
「自分たちがクアトロプリンセスであることをセルビー」

 聴き覚えのある二つの声がミルにかけられた。慌てて彼女は首をまわす。
「お前……ら……」
 顔色が変わり白眼が広がっていく。二匹の愛らしい顔をしたマスコット。ガードレールの上にちょこんと立っている。瞳に曇りはいっさいない。
 ミルはずんずんと彼らに向かって歩いていく。微動だにしない二匹がぐんぐんミルの視野で大きさを増していく。アルキメデスの首根っこを掴んだミル。そのままコンクリートの塀に彼の小さな身体を押しつけた。
 そのまま捻り潰してしまうかのような勢いだった。アリセ、サキ、マコはいきなりの事態にきょとんとした視線を送っている。
「おい貴様らふざけるな、どういうつもりだ!?危うく私たちは死にかけた!!」
 憤怒の感情を思いきり浴びせかけるミル。アルキメデスはぐぐぐとうめき声をあげた。
「おいおいミルぅ。そういうのは私の担当だぞ」
 サキが軽口を挟んでもミルの表情は少しも変わらない。
「や、やめんるんだセルビー、ミル。こうするしかしょうがなかったんだセルビー」
 ミルの手の力は緩まない。どんどん青から紫に変わっていくアルキメデスの顔色。
「お、お願いだミル。それ以上やるとアルキメデスが……セルビー」
「ミルちゃん、やめて!!」
 アリセの言葉にミルの頬の筋肉がわずかにだけ緩む。
「おい小動物」
「な、なんだセルビー」
 ミルの刺すような言葉にどきりとするビルビル。
「『しょうがなかった』と言ったなあ。どういう意味だ?」
 ビルビルは慌てて口を動かす。
「あなたたちには全然クアトロプリンセスであるという自覚がなかったセルビー。一刻もはやく自覚を持ってもらうためにこの世界に来てもらったんだセルビー。確かにあまりにも乱暴な方法だったことは認めるセルビー」
「自覚?なんでそんなものが必要なんだ」
 ミルはビルビルを睨む。
「と、とにかくアルキメデスを離してほしいセルビー」
 アルキメデスの口の端から白いあぶくが出はじめている。ミルはふんと鼻息を吐きパッと手を離す
。アルキメデスは力なくその場にへたりと落ちた。
「さぁ質問に答えろ?」
 今度はビルビルに詰め寄る。桃色の身体のマスコットは恐怖で身体を硬直させる。
「なぜ私たちを無理やりこの世界に連れてきた?なぜ私たちを無理やりクアトロプリンセスたらしめようとした?」
「……それは最初に行ったはずセルビー。この世界に……」
「この世界に現れた恐ろしいビョーマ、ビョーマの帝王を倒して欲しいからポゾ」
 ギョッと足元に視線をやるミル。いつのまにかアルキメデスが四つ足で立ち上がっていた。


 アルキメデスはまっすぐな視線を持ち、実に真剣な表情をしている。それを見ているとミルも毒気もだんだんと抜けてくる。
「帝王、そいつは何者だ?」
 声も幾分か落ちついた。
「この世界にいる最凶のビョーマだポゾ」
「……そんな漠然とした答えじゃわからん。具体的にそいつは何者なんだ?そいつは何をしようとしているんだ?」
「後の問いは簡単だポゾ。帝王は造物主様を殺し、この世界を滅ぼそうとしているポゾ」
「……」
「この世界が滅びるまでもう一刻の猶予もないセルビー。そして帝王を倒せるのはクアトロプリンセスだけセルビー。だから……あなたたちに無理やり来てもらったんだセルビー……」
 ビルビルは申し訳なさそうにこうべを下げる。ミルは彼らに悪意はなく、話すことも真実であることを悟りはじめていた。
 が、その頼みをおいそれと聞くわけにはいかなかった。何せ敵である【ビョーマの帝王】について具体的なことが何ひとつわからない。【造物主】という人物のことも同様。もっと言えば本当のところ【この世界】が何かすらもわからない。
 そんな状態で、ハイと安請け合いするやつはとんでもない馬鹿だろう。
「ねぇ、ミルちゃん。倒そうよ、そのビョーマの帝王」
 ここにその馬鹿がいた。簡単に言ってのけたアリセにミルはキッと目を向ける。
「そ、そんな怖い顔しないでよミルちゃん……」
 怖気づくアリセ。
「私も賛成だな」
 そう言ったのはサキ。パッとアリセの顔が華やぐ。
「そいつがいわゆるラスボスなんだろう。倒せば覚めんだろ。そろそろこの夢にも飽きてきた」
「……サキちゃん、あのお……」
 マコは実に言いづらそうにしている。そんなマコにアリセが勢いよく被せた。
「ねぇマコちゃんもいいよね!?一緒に闘おう!!」
「へ、あのぉ……そのぉ……」
 はっきりとせず弱々しく身体をくねらせるマコ。口をよじらせたのはミルだった。
「お前らいい加減にしろ!!」
 彼女は、短絡的な仲間たちに腹がたっていた。
「残念ながら頼みは聞けん。おい小動物、さっさと私たちを元の世界に戻せ」
「そ、そんな……ビョーマの帝王を倒さないとこの世界が……造物主さまが死ぬポゾ」
「造物主さまが死ぬ……。あの方はクアトロプリンセスを心から愛し信頼してくださってるセルビー……。それをむげにするなんて……あんまりだセルビー……」
 ビルビルは涙ぐみはじめる。アリセ、サキ、マコは憐れみを含んだ表情になる。そしてミルの方に目線をやる。
 ミル。彼女は眉尻を下げた。
「……わかった。ではとりあえず、その造物主に会う」
 皆の表情が華やいだ。
「協力してくれるのかポゾ!?」
 涙を止めて顔を上げるアルキメデス。
「そいつに会ってとりあえず話す。全てはそれからだ」
 ミルはあくまで冷静を保ちながら言い放つ。足元を見られないように鋼鉄の鉄面皮を携えていた。
「で、そいつはどこにいるんだ?」
「それは港星総合病院だセルビー」
「「「えっ!?」」」
 アリセ、サキ、マコは告げられた場所に、驚きを隠せない。ぎょっと目を丸くする。
「……そうか」
 ミルはただ一人、納得したように、少し考えてから軽く頷いた。和らいだ空気。その中で彼女だけは冷静に思考を回転させていた。


「なんだよ……これ……?」
 湾星総合病院があった場所に到着した途端、サキが驚愕の声を出した。
 アリセもマコも口をあんぐり開けた。四人ともこのあまりに意外な事実に驚くしかなかった。
「ねぇマコちゃん、病院ってここだったよね?」
 アリセが聞く。
「……うん」
 マコが頷く。
「じゃあ何、この気味の悪い建物は!?まるで大魔王の城じゃない!!」
「そんなこと言われても……私にもわからないよー!!!!」
 そこにあったのは病院ではない。
 禍々しく、火傷して爛れた皮膚のような壁で囲まれた建物。満月をバックにそびえ立っていた。
「……どういうことだ?」
 ミルはアルキメデスとビルビルに目線を向ける。
「……なんでだポゾ?」
「……なんでセルビー?」
 二匹とも愕然とした顔をしている。どうやら彼らにとっても予想外の出来事らしい。
「おい貴様ら、ここは造物主さまがいる場所じゃなかったのか?」
「そのはず、セルビー」
「じゃあこれはなんだ?」
「さぁだポゾ」
 ビービーと音を立てて鳴りはじめるペンダント。
「え……」
 アリセが後ずさる。
 ガタンと大きな扉が開かれた。三匹の黒い身体の化け物。二本の角と羽根、尖った尻尾を持った典型的な悪魔のビジュアル。彼女たちに飛びかかる。
「きゃあああああ!!!!」
 顔を真っ青にするマコ。
「【プリンセス・アリヴァーレ】」
 サキは変身をする。左フックで一匹目。右アッパーで二匹目。くるりと回る。スカートをブワッと浮かせた胴回し蹴り。後ろ側にさし出したつま先を回転のスピードを乗せ相手のみぞおちに突きさす。あっという間に三匹をのした。倒れたビョーマはふっと消え去る。
「はぁ、なんてことねえな」
「よくよく見ればこいつら、アニメでもおなじみの雑魚モブビョーマだな」
 とミル。戦隊モノヒーローにもよく出てくる類の、数だけが取り柄のやられ役である。
「……間違いないポゾ」
 アルキメデスが言葉を挟む。
「ここは帝王城だポゾ!!」
 「あん?」とサキが怪訝な顔で振り返る。
「……おい、ここは造物主さまとやらの居場所だろう?なんで帝王城になってんだよ……」
「そ、そんなことを言われてもポゾ」
 先ほどから全くはっきりしない。彼らもたいしてこの世界の事実についての核心的な知識がないのではないか?ミルはそう分析する。
「ふぅ、そうなってしまってはまた対策を練らなくてはな。いったんここから離れて話し合いを……」
「いいじゃねえかミル」
 サキの声がミルを遮った。思いもよらぬ横やり。ミルはサキを睨む。
「ここに帝王がいるんだろ。探す手間が省けて好都合じゃねえか。さっさと中に入って倒そうぜ」
 サキは気にせず、鋭い眼光をとばし、唇を動かし続ける。
「なぁに。さっきの奴らも雑魚だった。私なら勝てるぜ」
「おいサキ」
 お前まだ酔って夢の中だと思っているのか?ミルは身勝手なものいいを咎めようとする。
「別にお前はこなけりゃいいじゃねえか」
「?」
 ミルは息を飲んだ。向けられているサキの視線。驚くほど敵意があり、驚くほど冷たかった。
「いつものように頭の良さそうな顔して……知らんぷりして……はたから見てりゃいいじゃねえか」
「……サキ」
「私は行くぜ……私は……」
 サキは自分の胸元。スペード型のペンダントをまじまじと見やる。
「……クアトロプリンセスだ」
 サキは開かれた入口から帝王城へと歩みを進めた。
「……サキちゃん、危険だってば!?」
 アリセはサキに追いすがる。
「僕らも行くポゾ」
 二匹のマスコットもとことこ後を追う。
「……」
 城へと向かうふたり。ネジがきれた人形のようにそこに立ちつくすミル。マコは両者をきょろきょろと見比べる。なんか最近こんなことばっかな気がする。その彼女の戸惑いを聞いてくれる者はいない。
「……追いていかないでよお!!」
 結局サキとアリセを追っていった。
 ミルの髪の毛が風にそよぎ口元を隠す。瞳は黒く塗りつぶされ空中を望む。ビュウビュウと強い風が吹き荒れている。隙間からのぞむ唇がちっと舌打ちをすると、ミルは皆の後を追った。


 城の内壁はまるで血管のようだった。ピンク色柔らかい壁がどくどくと脈うっている。地面も同じようにひくひくとひくつく柔軟な材質。一歩一歩踏みしめるたびに背筋にぞっとしたものが駆けぬける。
 生臭さ。生レバを鼻先につきつけられたかのような不快さが彼女たちの生気を奪っていく。
 たびたび雑魚ビョーマが現れる。マコはそのたびにぎゃあと悲鳴をあげる。サキは何度目かのそれを、さっとのして言った。
「……おいマコ、そんなに怖がるなら変身しろって」
「ええ、私さっき変身してないし、もし私だけ変身できなかったら……」
 不安げな瞳。
「なに変なこと心配してんだよ」
「いや……だって……」
 前方から新たにビョーマが現れる。
「うわぁぁぁあ!!」
「【プリンセス・アリヴァーレ】」
 変身をしたアリセが前に出る。えいとビョーマの身体を掴み投げ飛ばす。
「大丈夫マコちゃん。私でもできるんだから。落ちついて」
「……うん」
 アリセから送られる優しい眼差し。恐る恐るダイヤ型のペンダントをスカートのポケットから取り出す。こんな過保護に変身するヒロインって……。自虐的な想いが混じりつつ、マコはダイヤ型のペンダントをぐっと握る。そして身体の前に出す。
「【プリンセス・アリヴァーレ!!】」
 目をつむりやけっぱちに叫ぶ。無数のオレンジ色のダイヤが彼女の身体を取り囲み、ふわりときらびやかなドレスが姿を現した。
「私、変身できた……」
 脚が震え。自らの身体を見回し、少しの涙が目尻に浮かぶ。
「良かったねマコちゃ……」
 その瞬間、通路の角から一匹のビョーマが現れ、マコに襲いかかった。
「きゃああああ!!」
 マコは顔をそっぽにひきにながらとっさに両手を前に差しだす。するとさほど力もいれていないのにビョーマは吹っ飛んだ。
「あ、私……」
「ははははやるじゃねえか」
 サキが歯を見せる。
「やったねマコちゃん」
 親指をぐっと出すアリセ。
「あ、ありがと。サキちゃん。アリセちゃん」
 喜ぶマコを、足元のマスコットも祝福した。
「よくやったポゾ、ダイヤプリンセス。これでお前もクアトロプリンセスのいちい……」
 ぐしゃりと青いブーツがアルキメデスを踏んづけた。
「だからてめえ偉そうなんだよ」
 かかとでぐりぐりとなぶる。
「……スペードプリンセス、相変わらず酷い奴ポゾ」
 アリセとマコは『はは』と笑ってしまう。敵地にも関わらず和やかな雰囲気が纏った。
 サキはゆっくりと後ろを振り返る。目に映るのは、ただ一人、無表情で変身をせず透明な瞳を携え続ける彼女。
 サキはけっと口先を尖らせた。


「なぁ小動物」
 前髪を右手でサッとかきあげてサキが言う。表情には疲れが見える。
「……スペードプリンセス、それはもしかして私たちを呼んでるセルビーか?」
 げんなりとした顔でビルビルが振り返る。
「お前ら以外にどこに小動物がいるんだよ」
 呆れたように言うサキ。あちらが何かを言い返す前に質問を浴びせる。
「帝王がどこにいるのかわかんねえのか?」
「わからないセルビー」
「つかえねえ小動物」
「スペードプリンセス。小動物だけならまだしも、使えないとはなんだポゾ」
「……事実じゃねえか」
 冷たい目のサキ。その後ろには疲れきった顔のアリセとマコがいた。足取りも重い。何せもう1時間も歩きっぱなしだった。
 この城は外装からは想像できないほど広かった……というより高かった。
 入ってすぐは平坦な廊下の続くフロアだったが、その後はずっと階段を登った。U字型の屈折階段。数十階と続き終わりの見えない徒労感を覚えさせた。ようやく長い階段は終わり、なだらかなフロアになった。廊下の脇には細かい部屋がいくつもあった。探索のためひとつひとつ開いていく。時たま雑魚ビョーマが潜んでいて彼女たちの肝を冷やさせたが、大した脅威にはならない。が、目覚ましい発見もない。
 階段を見つけ上に上がる。次の階も同じような構造。その上も、その上の上も、さらにまた上も……。彼女たちの疲労はピークを迎えはじめていた。
「ビョーマの探索ならペンダントを使えポゾ」
「さっきからピッピキピッピキ鳴りっぱなしでうるせえくらいなんだよ。逆に止める方法を教えて欲しいくらいだ」
 まわりはビョーマだらけであるためペンダントはずっと音をたて点滅している。その音が大きくなるか小さくなるかの変化はあるものの、反応は一様だった。
「確かに……疲れてきたね……」
 ずっと黙って素直についてきたマコも、心中を吐露した。
「ねぇ、ここらへんで休憩にしない?」
 アリセが提案する。
「……ここでか?」
 明らかに不服な表情を浮かべるサキ。ドクドク脈打つピンク色の壁と地面。鼻をつく生臭さ。いつ敵が襲ってくるかわからない。これほど休憩に不敵な場所はない。
「うん休もう。もうクタクタで歩くの疲れたよ。ほら、そういう変わった観光地だと思えば大丈夫だって」
「どんな観光地だよ……」
 不満たらたらな顔。
「さ、敷物ないのはざんねんだけど。ここは直接地べた座ってと。ホラみんなも」
 ピクニック気分。アリセは両手でスカートのお尻の部分を押さえて、よっこいしょと座る。
「却下」
 背中を向けて言うサキ。
「ええっ!!」
「我慢して歩け」
「そんな、私はリーダーなのに、なんでそんなお荷物みたいな扱い!?そしてマコちゃんも当然のような顔しないで」
 彼女たちは再び歩きはじめた。けれど先の見えない行進に気持ちが憂鬱になっている。
「ったくいったいどこに……」
 サキが愚痴を吐いたその時だった。
「人体だ」
「「「!?」」」
 突如声を出した最後尾のミル。皆振り返る。
「この壁。病院という場所。ビョーマという存在。何を模しているかは火を見るより明らかだ。今まで私たちが歩いてきた経路からシミュレーションしたこの建造物の構造、それを鑑みた結果間違いはない。ここは【人体】の構造をしている」
 ミルは今までの沈黙が嘘のように雄弁に説明を進める。
「最初に登ってきた細長い折り返し階段。アレはなんだと思う?」
 質問をかける。
「あ、し……?」
 【脚】。マコが自信なさげにその単語を言う。
「そうだ。そして今現在私たちがいる場所は?」
「腰からお腹のあたり……かな?」
 細長い階段を登ってさらに数フロアを上がった場所であるここ。マコはそう答える。
「の、ようだな」
 ミルはひと息つく。
「さすがミルちゃん!!」
 胸の前に両手を組み感心するアリセ。その背後のサキは実につまらなそうな表情だ。
「それが分かったからなんだってんだよ?じゃあお前には帝王のいる場所はわかんのか?」
 ミルはそう問われて、躊躇もせずにアルキメデスの方を向いた。
「おい小動物。聞きたいことがある」
「だからその【小動物】っていうのを辞めるポゾ」
「【造物主】とやら、どこか身体に悪い部分があるのではないか?」
「っ!!?ポゾ……」
 息をのむアルキメデス。ビルビルと顔を見合わせる。明らかにミルの質問は核心をついている。
「そして聞く。その部分はいったいどこだ?」
 畳み掛けるミル。
「【帝王】は、そこにいる」
 白くすっきりとした鼻筋が静かに息を吐く。アリセ、マコ、サキの三人は恐れいった表情で彼女を見上げていた。


 硬い螺旋階段。彼女たちはそこをたんたんと上がっていく。
「ねぇ、ここって?」
「場所からいうと人間の背中だろう」
 アリセの言葉にミルが答える。さらにこの硬質の階段。
「背骨……だろうな……」
「おい小動物、だいぶ登ったが本当にここでいいのか?」
「『せぼねとのうのつなぎめ』……ポゾ」
「はぁ?」
 サキはハァハァときらせた息混じりに語尾を上げる。
「造物主さまはそう言われていたポゾ」
「……」
 なんとも返せずただ階段を登る作業に戻る。やがて螺旋階段は途切れ、上部にぽかりと空いた、半径50センチほどの穴が現れた。
「……ここ?」
「私が行こう」
 ここでミルが先頭に出た。穴に両手をかけ上に押し上げる。細くしなやかでわずかにまろみを帯びた上半身をくぐらせる。
 闇。目がなれるとぼんやりとだが全容が見える。硬質な壁に覆われた小学校の体育館程度の広さの部屋。他の部屋と違い、明るさがなく、生物的な脈動がない。ただ冷たく暗い無機質な部屋だった。
 何もない……。ミルは拍子抜けした。
「おおいさっさと上がれよ。いつまでお前のケツを見させる気だ?」
「まぁミルちゃんのお尻のライン綺麗だから私的にはもっと見させていただいてもオッケーなんだけどね」
 下手なことを言ったアリセはサキに小突かれ、「痛っ!!」と声をあげた。
 ミルはふぅとひと息つき上に這い上がる。三人と二匹もつづいた。
「なんだろうこの部屋……」
「誰もいないね」
 確かに誰もいない。ミル、彼女の予想ではここに帝王がいるはずなのだが……。
「っ!?」
 息をつまらせ、虹彩をしぼるミル。
 部屋の端。何者かが座っていた。
 さらに目を凝らして見てみる。幼児。真っ青で無毛。笑っているとも泣いているともつかない顔。
 驚き身構えるミルにサキは気づいた。そして彼女の目先の、真っ青な幼児にも気がついた。
「なんだよあのガキ」
 サキが苛立たしく言う。アリセ、マコもそちらに気づく。
「あわわポゾ……」
 アルキメデスとビルビルが尻尾中の毛を逆立てていた。
「おい小動物。ビビりすぎだろ」
 サキが二匹を見下ろす。
 ビーコン!!ビーコン!!ビーコン!!唸って跳ねるようにペンダントが赤く点滅する。
「帝王……ビョーマの帝王だセルビー……」
 ビルビルがぼそりと言った。
「え?……え?……。えーー!!!!」
 アリセは怒涛の展開に素っ頓狂な声を出すしかなかった。

 帝王の名にふさわしくない弱々しい幼児の化け物。それが彼女たちの目の前にいる。
「ねぇ、いきなりラスボスが出てくるっておかしくない?取りあえずは、『なんとか四天王』とか『なんとか特選隊』とかそういうのが出てきて徐々に慣らしていってから、最後に出てくるもんじゃないのー!!??」
 アリセが手をワシャワシャと動かしながらわめいた。
「ふん、手っ取り早くていいや」
 サキはすんなりと一歩足を踏み出した。
「ちょっとサキちゃん。ラスボスだよ。もっと慎重にしないと」
「関係ねえ。私はただ目の前のやつをぶっ倒すだけだ」
 腕をパキポキと鳴らすサキ。それにこいつは弱そうでいいやとにまりと口角をあげる。
 サキは肩を触れられた。触れたのはミルの手。顔を上げると彼女の顔。眼差し。警告、そして哀願。
 サキはその手を強引に振りほどいた。落とされた腕。ミルは黙って立ちつくした。それは時間にして一秒にも満たないやり取りだった。
「アリセちゃん。闘おう」
「へ?」
 マコがひと足前に踏み出していた。
「だって奴を倒せば元の世界に帰れるんでしょ」
「……そうだけど」
 アリセの目の前。マコの目は爛々と輝いていた。
 変身し何匹かのビョーマを倒したことにより、彼女はすっかり自信を手に入れていた。
「アリセちゃん、ちゃっちゃと片付けちゃおうよ」
 ぱちりとウインクを見せるマコ。
「……」
 マコちゃん、そんな人じゃなかったのに……。呆れるアリセ。
「ねぇミルちゃん、どうしよう?」
 アリセはミルに語りかけるが、頼みの彼女はその言葉に応えようとはしない。ただ静かに濁った瞳を携えている。
「ミルちゃーん……」
 アリセは困り果てた。
「さぁアリセ。君も闘うんだポゾ」
 アルキメデスが促す。
「そ、そんなこと言ったって……」
「君は世界の希望、クアトロプリンセスのリーダーなんだセルビー。怖じ気づいていてはダメだセルビー」
 アリセは耳をぴくりと動かした。
「クアトロプリンセスのリーダー……、そうだよね。私はリーダーなんだもんね。私がやらなきゃ誰がやるっていうのよ!!」
 アリセの顔はあっという間に闘志に満ちた。
「行くわよ皆。ビョーマの帝王を倒しこの世界に平和を取り戻せるのは、私たちクアトロプリンセスだけなんだから!!」
 リーダー風を吹かせるアリセ。
「アリセちゃん……なんてちょろいの……」
「ん?マコちゃんなんか言った?」
「……なんにも」
 アリセは構える。
「さぁ、ヒトに巣食い。ヒトを蝕むビョーマたち。私たちクアトロプリンセスがきつーくお見舞い……」
「うぉりゃあああ!!」
 アリセのセリフの途中でサキが帝王に向かって突っ込んだ。
「また決めゼリフが言えなかったぁー!!」
 悔しがるアリセ。
「とりゃぁぁぁ!!」
 サキが向かっていく。激しく跳躍し顔に蹴りをかまそうとするサキ。
「死にさらせー!!」
 幼児はわずかに手を前に出す。サキの脚が空中で止まる。
「え?」
 敵は動いても触れてもいない。けれどまるで弾力のある透明な壁に補足されたかのような脚。顔をわずかにあげる帝王。サキの身体はふっ飛ばされた。
「がっ!!」
 壁に叩きつけられるサキ。
「「サキちゃん!!」」
 心配そうに叫ぶアリセとマコ。
「いてぇ!!いてぇ!!なんで夢のくせにこんないてぇんだよ!!ああムカつく!!」
 サキは痛みをほぼ全て怒りに変換していた。
「【ベキーユ!!】」
 サキは早速ステッキを召喚した。
「【マルティージョ!!】」
 そしてステッキを大金槌に変える。
「小細工なし。てめぇを道のど真ん中でぺしゃんこにされて干からびたカエルみてえにしてやるよ」
 サキは身を低くして構える。
「サキちゃんまさか……」
「いきなり必殺技出す気みたいだね……」
 アリセとマコは呆気にとられる。
 ペンダントをステッキの先にはめ込み、カシャリと音をさせる。
「ブッ殺す。マジブッ殺す。ブッ殺す」
 青い光が大金槌を纏う。その光は部屋の天井を突き破らんとするほど巨大なものになっていた。
「サキちゃん、気合入ってる」
 マコが気圧されながら言う。大きく振り上げ、サキは跳躍した。
「【ラスト・ディアクリシスぅ!!!!】」
 サキはのどを最大限に震わせた。巨大な青い大金槌が振り下ろされる。帝王の顔に青い光が迫った。

 ピンッ!

「なっ!?」
 サキの必殺技は止められた。指一本で。
「そんな……」
 信じられないという表情で着地するサキ。が、サキに呆然としている暇などなかった。帝王が先ほどの攻撃を受け止めた指先をサキに向けた。サキはその指先に嫌なものを感じ、とっさに身を横に翻した。
ーシュッ
 指先から飛んだのは紅い線だった。細く、しっかりと見なければ視認できないほど頼りない、それでいてとてつもなく速かった。
 サキが先ほど立っていた場所に向け、あっという間に飛んでいき瞬時に地面に突き刺さった。途端激しい爆発が起きた。
ードンッ!!!!
 熱線がまたたき、多量の煙が四散する。サキは激しい爆風を避けきれずに、ふっ飛ばされた。
「ガッ!!」
 地面にサキは叩きつけられる。
 スカートがまくれ、白い脚を露わにした姿勢でサキは地面に横たわった。目線をなんとか上に向ける。帝王の指先はサキを向いていた。
「ちょ、ま……」
 相手の攻撃の威力を噛みしめる猶予もないまま、つぎの紅い線がサキに向けて飛んだ。

「【ディフェーザ!!】」

 そう叫んだのはマコだった。
 マコのステッキから巨大なオレンジのダイヤマークが現れる。その大きさ、対角線が3メートルもあり、彼女たちの身体を遮る。ステッキの頂点に貼りつき巨大な盾となるダイヤ。帝王の紅い線の爆風をシャットアウトした。
 あらゆる脅威から身を守る防護の魔法。それがダイヤプリンセスの魔法だった。
「おっ、サンキューマコ」
「やった……。私、役にたてた……」
 マコは胸に手をやり、達成感に浸っていた。うるうると軽く涙も流していた。
「マコちゃん、次が来てる!!」
「え?」
 アリセの声に反応し、気を戻したマコ。帝王の指先からは三発目の紅い線が飛び出ていた。
「【ディフェーザ!!】」
 とっさにダイヤの盾を再び出す。間一髪。なんとか紅い線を防いだ。が、帝王は躊躇をしない。そこからマコに向かって間断なく紅い線を出し続ける。
 バシュバシュと盾の表面で爆発が続く。
「そんなすごいの……いっぱいつづけて出せるなんて……そんなの……」
 ダイヤの盾は猛烈な爆風にガタガタと揺れる。
「……そんなの……ずるいよー!!」
 ピキッと盾にヒビが入った。
「おいマコ、しっかりしろ!!」
 サキの叱責が飛ぶ。
「ダメ……。もう耐えられない」
 マコの弱々しい横顔。ダイヤの盾は粉々に砕けた。吹きさらしのふたり。紅い線がすぐ横で炸裂し、吹っ飛んだ。
「マコちゃん!!サキちゃん!!」
 爆発に巻き込まれボロボロの状態で倒れこんだふたり。サキはぴくりとも動かない。マコはわずかながら震えているが立ち上がることができない。戦闘不能のダメージを負ったことは明らかだった。
 このままではふたりは殺される。なんとかしなければとアリセは帝王に突っ込んでいく。
「【ベキーユ!!】【エスパーダ!!】」
 ハートの剣を構えるアリセ。ふたりを助けるという目的を見事に成功させていた。なぜなら帝王の指先はアリセを向いているのだ。
「……へ?」
 表情が崩れるアリセ。帝王の指はしっかりとアリセに照準を定めていた。アリセに向け、紅い線が光速で射出された。
 アリセにそれを防ぐ手段は無かった。

ードンッ!!!!
 激しい爆発が起こった。アリセの姿は爆風に飲まれる。直撃。ひとたまりも無かった。
「アリセちゃん……」
 霞む目から見えた景色。悲痛な声を出すマコ。煙が少しづつおさまっていく。
「へ?」
 誰かが間抜けな声を出した。
「あれ?私……助かってる?」
 その声の主はアリセだった。
 アリセはいつのまにか場所を移動していた。彼女のお腹に巻きつくクラブの鎖。
「ミルちゃん!!」
 いつのまにか変身してクローバープリンセスとなったミルがアリセに鎖を伸ばしていた。
「お前らはバカだ!!やすやすとこんな化け物に向かって行って」
 ミルは彼女には珍しく感情を爆発させて怒っていた。
「あわわ、ヤバいポゾ」
「どうしよう。クアトロプリンセスが手も足も出ないセルビー」
 ぎゃあぎゃあとわめくマスコット二匹。帝王の指先が再び動く。
「まずい」
 ミルは帝王の腕に鎖を伸ばした。鎖は何重にも腕に絡みつく。
 歯をぎりぎりと食いしばるミル。渾身の力を込め帝王の動きを束縛しようとする。
 が、帝王は軽く、身体を動かす。それだけでミルをふっ飛んだ。彼女は壁に激しく叩きつけられた。
「ぐはっ!!」
「ミルちゃん!?」
 アリセはミルを心配して声を出すが、彼女にむかって帝王の身体が素早く動く。身体の筋肉が動いた様子などまるでないのに動きが素早い。あっという間に倒れこんだミルを目の前で見下ろす。ハッと見上げるミル。次の瞬間ミルは激しく蹴りあげられていた。
 身体が藁のようにしなり、吹っ飛ばされて転がるミル。アリセに彼女のことを慮る猶予はなかった。なぜならば、ミルを蹴り倒した帝王はすでにアリセの目の前にいた。幼児の小さな拳が下から突き上げられる。お腹にグシャとめり込み、そのまま吹っ飛ばされた。
「ぐふっ!!」
 胃から声を出してしまうアリセ。口からは何かが吐き出されてた。横たわった彼女はそれに手のひらをあてて確かめて見る。鮮やかな色の血だった。
 全く身体に力が入らない。内臓を損傷したのかもしれない。すぐ隣にはマコが横たわっていた。
 彼女の身体は帝王の紅い線の爆発をうけ、ところどころ火傷でただれていた。
「マコちゃん、大丈夫?」
 か細い声でマコに語りかけるアリセ。
「全然大丈夫じゃないよ。怖いし。痛いし。熱いし。……もうこんなの嫌だよ。死にたくないよ……」
 ぐじゅぐじゅと涙を流しながら答えるマコ。
 アリセが目線を動かして見ると、地面に這いつくばり、ぴくりとも動かないサキとミルが見えた。
 このままでは皆……。
「うわぁ!!ダメだポゾ」
「クアトロプリンセスが!!唯一の希望のクアトロプリンセスがやられたセルビー!!」
 ただただ戸惑う二匹。
 スッ。帝王の指先がアリセにむかって伸びていた。

 死んだ。
 アリセはそう思った。
 現代社会、死をどこか遠いものだとずっと思っていた彼女にとってそのことは思いのほかずっと重くのしかかっていた。
 中学生なのに、毎週毎週こんな恐怖と痛みに耐えながらビョーマを倒していた、ホンモノのクアトロプリンセスたちを心から尊敬した。
「とても私には無理だよ……」
 死の間際にこういうことを思ってしまうのはとてもアリセらしかった。


 次の瞬間、世界が止まった。
 まるでビデオに撮っていたアニメの画面を一時停止したようだった。
 人間は事故にあった時に周りがスローモーに見えると聞いたことがある。アリセはそれだと思った。けれどもしばらくして、それとは違うと感じた。
 完全に景色が止まっているのだ。
 舞い散るホコリも、目の前のマコの鼓動も。そして帝王も。
 次には周りの景色が消えた。はじめに帝王と四角い部屋。アルキメデスとビルビルも消えた。
 そしてそこは何もない空間となった。
 アリセ、サキ、ミル、マコの4人だけが揺蕩っていた。
「……なんだ、ここは?」
 ミルが目を覚ました。
「まだ、夢の中なのか?」
 サキも目を覚ます。
「えーん。これってアレだよね、天国だよね?私たち死んじゃったんだよね?」
 マコが言う。
 天国、確かに説得力がある。しかし、この場所にはアリセは見覚えがある。
「違うぞマコ。ここはあそこだ」
 ミルも気がついたようだ。
「夢空間だよ」
「夢空間?なんだそりゃ」
「あの小動物たちがそう言っていた。クアトロプリンセスのアニメの世界に入る前に私たちが閉じ込められた場所だよ」
「……あー!!そういえば!!」
 サキも気づいたらしい。色んな色の絵の具を溶かした水をぶちまけたような空間に見覚えがあることを。
「だけど、どうして私たちまたこんなところに……?まぁ、さっきのような化け物がいるところよりは全然いいけどさ……。というか間違っても戻りたくないよー!!」
 マコは身体を震わせた。

「皆さん、申し訳ありません」

 4人はいっせいにその声の方向へ振り向いた。立っていたのは、30歳から40歳といったところのひとりの女性だった。いかにも「お母さん」という雰囲気の女性。場違いさに4人とも面食らっていた。
「へ?だ、誰?」
 小声で言うマコ。
「あれぇ?どっかで見たことがあるような……」
 頭に人差し指をやるサキ。
「あなたは?」
 アリセが聞く。
「私の名前は友利一子と申します。クアトロプリンセスの皆さん、迷惑を掛けて申しわけありません。今回のことは全て私の娘、由衣がしたことなのです」
 女性は深く頭を下げた。
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