安倍清明の転生術
文字数 2,438文字
自衛隊の汎用偵察ヘリ≪シャドウスキル≫は、福島沖に停泊している潜水空母≪
旧日本海軍の伊四〇〇型潜水艦をモデルとして、自衛隊内の≪
潜水艦といっても光子波動エンジンを搭載しているので、大気圏内のみならず、宇宙空間でも作戦行動可能な宇宙船でもある。
安東総理は潜水空母≪
どっと疲れが来る。
あの惨状を目にして、自分は今まで何をしていたのか、深い後悔に沈んでいた。
もっと自分に力があれば、何とか最悪の事態を回避できたのではないか。
父親である政治家の安東龍一郎への反発で無駄に過ごしてしまった青春時代を恥じてもいた。
閉じた双眸に、悔し涙がにじんでこぼれた。
しばらくそうしていた安東要はいつのまにか眠りに沈んでいった。
†
夢の中で、幼い頃、よく通って遊んでいた名護屋の清明神社に安東要はいた。
987年(寛和3年)頃、京都の政変によって安倍晴明がこの地、尾張国狩津荘上野邑(現在の愛知県名古屋市千種区清明山1-6)に流されて在住していたらしい。数年後に京に戻ったと伝えられている。
その時、周辺の村人達がマムシの害に悩まされているのを見て、晴明がマムシ退治をしてくれたという伝説が残っている。
時は流れて、江戸時代の1778年(安永7年)に再びマムシの被害があって、その際、晴明を祀る
戦時中に陸軍の兵士が
1967年(昭和32年)に県営清明山住宅完成後に、祟りを怖れた入居者達が本殿と鳥居を建てて今の晴明神社になったという。
安東要は本殿の前で思わず手を合わせて今後のことを祈った。
京都の晴明神社ほど立派ではないが、賽銭箱や
†
気がつくと、安東要は新宿のフルーツショップの側に立っていた。
ケータイを見たら、2011年3月1日の火曜日のAM11:30である。
何となく記憶をたどると、この日は女の子とデートしてたような気がする。
ランチの待ち合わせだよ、確か。
ちょっと待て。確か夢の中で安倍清明が出てきて、過去に転生させてやるとか言ってたよな。
自分は一体、『だれに』転生したんだ?
安東要あわてて駅のトイレに駆け込み鏡を見た。
若い24歳の安東要自身がそこに映っていた。
思わず、小さな叫び声を上げてしまう。
転生といえば、何かこう魔法使いとか、勇者とか、魔王とか、特別な能力がある人間に転生するものだと思っていた。ラノベの読みすぎだが。
平凡な何の特殊能力もない、若いだけの自分自身に転生するって、それって、ただのタイムスリップじゃないのか?
2011年3月1日の東日本大震災が起こるわずか10日前とか、時間なさすぎだろう。
10日でどうやって歴史を変えるんだ?
脳の中に声が直接ひびいいた。
どこかのドラマとか、恋愛本で聞いたような『超デート理論』が出てきた時点で、超不安になってきたんですけど。
安東要はこのインチキくさい安倍清明と名乗る声の主に疑いもあったが、ともかく、ここは流れに任せてみることにした。
しかし、デートと東日本大震災が起こった原因に何の関連性があるのか、その時の安東要には知る由もなかった。
(あとがき)
サクサクと話が進みましたが、まあ、何というか、『超デート理論』というのは何なんでしょうね。
次回、「24歳初デート」もしくは『超デート理論』に続きます。
ちなみに、「名護屋」は誤字ではなかったりする。