俺の名前はピョン吉

文字数 3,268文字

「わー、なんデスこのせっまい建物は。物置小屋デスかー?」
「物置小屋にしてはあんまり物が無いわね。あれじゃない? トイレとか」
「あわわわわ、ミィちゃん、マイちゃん……なんだか知らないけどあそこのおサルさんがなんだか怖いお顔をしてこっちを睨んでるよー……」
「おい……嬢ちゃん達……お前さん達はここで、何をしている……」
「ひぃ! しゃ、しゃしゃしゃっべたでーすー!」
「ちょっと、あんた! 未開の惑星の猿の分際でアイを怖がらせてんじゃないわよ! 殺処分するわよ!」
「……すまない、怖がらせるつもりはなかったが……ここは俺の家だ。あまり騒がないで貰えると助かる。それと出来れば靴は玄関で脱いでくれ」
「靴を脱ぐデス? 靴を脱いでたら外敵が来たとき直ぐに逃げられないデスよ」
「……敵が、いるのか? ふっ、俺と、一緒だな。じゃあ仕方ねぇ。それで、俺の家に何の用だ」
「用……ってなんかあったデスかね? ミィ達はたまたま綺麗な星が目についたから立ち寄ってみただけデスよ」
「そうか……まぁ……何にも無いところだがゆっくりしていってくれ」
「ふん、あんたに言われなくてもそうするわ……で、なんであんたはそんなに疲れた顔をしてんのよ」
「あ! マイちゃんマイちゃん! 大変だよ! この顔におっきな傷のあるおサルさん、お腹からすっごい血が出てるよ!」
「……なぁに、大したことはねぇ。ちょっと腹の中に鉛玉が五、六発はいってるだけ、ごぶっ」
「ひゃあああああ! どうしようどうしよう、おサルさんしんじゃうよー……」
「落ち着きなさいアイ。まったく、これだから未開の惑星って嫌なのよね。このくらいの傷くらい自分で治しなさいよ」
「マイー、おサルさん息してないデスよ。どうするデス?」

「仕方がないわね……あ、ちょうど良いところに活きのいいのがいるじゃない。こいつをこうして……あっ、逃げんな! そうそう、おとなしく……あれ? ちょっと間違えた……ま、いいか。はい、これで完成!!」


「……………………あ、れ? 俺は、どうなったんだ?」
「おはようデス。気分はどうデスか」
「あ、あぁ……なんでお前達、でっかくなってんだ?」
「はぁ? あたし達が大きくなったんじゃなくてあんたが縮んだんだけど? ちょうどそこに鏡があるじゃない。見てみなさいよ」
「あ、あぁ。……って、なんじゃこりゃあああああ!!? なんで俺がピョン吉になってんじゃあああ!!!?」
「え? だってあんた死にそうだったし。ちょうど良いところにウサギがあったからあんたの意識を移しただけよ……ウサギにはちょっと可哀想なことしちゃったけど」
「ピョン吉ぃぃぃぃぃぃ!!!」
「よかったね、おサルさん。あ、でももうおサルさんじゃないんだっけ。じゃあ、もうおサルさんがピョン吉さんで良いんじゃない?」
「どうするんだこれ……親父や舎弟に何て言ったら良いんだ……」
「オヤジ? シャテー? なんデスそれ。とりあえずピョン吉は落ち着いて草でも食ってろデス」
「これが落ち着いてられるか! 今は秀英会との戦争中なんだ! 早くあいつらを片付けねぇと親父達があぶねぇ!」


「おいっ、後藤!! いるのはわかってんだ、でてこいオラァ!!」
「うわ、なんかまたサルが一匹湧いたデス」
「ピョン吉が話の通じるサルなら今度のは話の通じなさそうなサルね」
「なんでこの惑星のおサルさんはみんなお顔に大きなきずがあるんですかピョン吉さん」
「みんなってわけじゃねえが……あぁ、でもこの伊藤の野郎の場合は、あれだ。海賊の漫画見て真似したらやりすぎたんだったか」
「て、てめぇら何をごちゃごちゃ言ってやがんだアァン!? おい、そこの白髪のガキ! そう、お前だよお前。いや、だからお前だっていってんだろぉぉぉ!!? なんで後ろ振り返ってさも私じゃありませんみたいな感じだしてんのぉぉぉ!? なに? おじさん舐めてるわけ!? おじさん怒ったら大変な事になるよ!?」
「白髪なのは認めますがミィはガキじゃないデス。むかっ腹がたったのでこのタコ坊主ぶっ飛ばしていいDEATHか?」
「まてまてまて、はやまるな。あいつはあんなふざけたことを言ってるがバリバリの武闘派だ。ここは俺に任せろ。おい、伊藤」
「アァン? その声は後藤か!」
「そうだ! こんな幼子を恫喝するたあてめぇ、随分とその髪の毛と一緒に男まで落としちっまったみてぇじゃねか」
「ちっ……おい後藤てめぇ、見えないところからこそこそと好き勝手いってくれるじゃねえか! 姿を見せやがれ!」
「あ? てめえの目の前にいんだろうが。なんだ? その顔についている穴の中身はビー玉かなんかか?」
「目の前だぁ? 俺の目の前には三びきのがきんちょとウサギが……お前、まさか」
「そうだ、そのウサギが俺だ! 俺は逃げも隠れもせん!」
「ぎゃーっはっはっはっは! ひー!お前、なんでそんなことになってんだよ!それは反則だろう! がーっはっはっは!」
「むむ、マイちゃんマイちゃん。私達のかわいいピョン吉さんが馬鹿にされているよ」
「え、いや、別に可愛くはないけど……けど馬鹿にされっぱなしは癪ね。ピョン吉、左手をあのタコに翳しなさい」
「いろいろツッコミたいが間に合わねえよ……あー、こうか?」
「そう。そのまま、意識の中であのタコをブッ飛ばすことを念じながら左手の掌にあるボタンを押して」
「遊びになら付き合う気はねーぞ!?」
「がたがた言わずさっさとやりなさい! あんまりがたがた言ってるとあんたの自爆スイッチ押すわよ」
「そんな物騒なもんつけてんじゃねーよ! 仕方ねえ……ブッ飛ばす、伊藤をブッ飛ばす」
「なあに訳わかんねえことやってんだゴラァ! いいよ、てめえが後藤だろうとウサギだろうとかまやしねぇ。てめえをぶっ殺してガキは海外に売り飛ばしてやらあ」
「伊藤。お前は組に入りたての時は生意気なやつだったがそれでも男気のある奴だったのに……何がてめえを変えちまったんだ!」
「うるせえ! 俺はなぁ、お前が大っ嫌いだったんだ! ことある毎に俺の頭をぼんぼん叩きやがって……なぁにが男気だ! そんなもんじゃ腹は膨れねえし女を抱くことだって出来ねえんだよ! 時代遅れの化石はとっとと眠っとけや!」
「……時代遅れだろうが、なんだろうが俺たちは世間様に顔を向けて生きていけねぇ半端な日陰者だ。そんな俺達だからこそ、男気をもって少しでも世間様に顔向けできるように生きていかなければならないだろうが。それをなんだ。ちょっとした小金程度で親父や仲間を裏切りやがって……」
「うるせえ! うるせえうるせえうるせえ! 俺は自由だ!!」
「伊藤……!!」

「あー、なんか長いからもう私が押すわ。はい、メガキャロットブラスター発射」
「え?」
「え?」
「え、なっ!? あ、嘘だろ……いや、いやだ! う、うわあああああああ!! 後藤ぉぉぉあああぁあぁぁぁっ……」
「い、伊藤ぉぉぉぉぉ!! おい! 塵すら残ってねえぞ!!」
「いっけなーい、威力の調整間違えちゃった☆」
「ひゅー! 流石マイの作ったサイコ……げふんげふんっ! キャロットブラスターは最強デスね」
「やったねピョン吉さん! これで宇宙海賊もバッチリだね」
「やんねーよ!? というかさっきから結構ギリギリ一杯の発言漏れてるかんな!?」
「まあまあ、そうは言ってもあんたもそんな体じゃ普通の生活なんてできないでしょ? あたし達と一緒に、宇宙海賊やらない?」
「確かに……って言うと思うなよ!? この体にしたのおめぇだからな!?」
「かくして、宇宙海賊アイマイミィに新たな仲間が加わることとなりました。しかし、ピョン吉さんが加入したことによって、まさかあんな大事件に巻き込まれるなんて、この時は誰も思ってもいませんでした」
「綺麗にナレーション風に締めても誤魔化せてないかんな!? もう嫌だぁぁぁ!!」
「ちゃんちゃん、デス」
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