ひま狭間 2

文字数 509文字

「記憶再固定化アルゴリズムを開始します」

女性の声が聞こえた。

満たされていた暗闇が、もやもやと晴れていく。


それと同時に人や車の雑踏が賑やかに聞こえ始めた。

「プログラムを再起動します」

女性の声が聞こえた。

暗闇が無くなり、視界は色合いを映した。

 高層ビルやマンションの隣接して建ち並ぶ都会。

そのスクランブル交差点の中央に立っていた。

八車線の大道路には何台もの車が信号の青を待っている。

太陽光がビルの窓ガラスに当たり、ビルが朝焼けに染まる。

私の横を人々が通り過ぎる。

イヤフォンをつける人。

電話をする人。

会話をする人。

一人一人が何か目的を持って往来している。

せかせかと慌ただしい。

その歩みに合わせて息が白い。

白い息は雑踏にかき消される。

木枯らしが舞い、落ち葉が足元を転がる。

着ているコートの裾が木枯らしに合わせて揺れ動く。

スクランブル交差点の信号機が点滅を始める。

間も無く赤信号になる。

渡った人々は歩道を歩き、目的へ向かう。

きっと今から仕事なのだろう。

(そうだ、私も遅刻してしまう)

橘も人の流れに合わせて、スクランブル交差点を渡った。

車道が青信号になる。

車が行き交う。

橘は歩道を歩いた。

(今日は何も犯罪が起きなければいいんだが)
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