第23話 レジームシフトの現実

文字数 1,603文字

(レジームシフトを整理します)

1)レジームの区分

レジームシフトは生態学の概念で、生物が棲息する環境が一括して変化してしまう非可逆的な変化を指します。

ここでは、次のレジームを想定しています。

(1)農業社会

(2)工業社会

(3)デジタル社会

農業社会では、体力のあることが経済的に有利でした。このため、男女間の生産性の違いを解消することは難しかったと思われます。

農業社会で使われる機械は、犂や鍬で、動力には、牛や馬を使っていました。

工業社会では、自動車やその派生形であるトラクターが使われます。現在は、100馬力以上の力のある自動車は、普通に走っていますが、農業社会では、100頭の馬を所有して、1人で使いこなしている人はいませんでした。

つまり、農業社会と工業社会の間には、大きな生産性の差があります。

デジタル社会の定義は、多様で、統一的な見解はないと思います。

しかし、経済の問題としてレジームシフトを考えるのであれば、筆者は、生産性に注目して、分類すべきだと考えます。

例えば、自動車はEVに移行する可能性があります。EVは、工業社会の製品化、ソフトウェアが搭載されているので、デジタル社会の製品か判断が分かれます。

このような場合には、生産性をキーに分類すべきと考えます。

EVを動力の違いで見れば、内燃機関の自動車も、EVも、工業社会の製品に見えます。

一方、EVが自動運転を可能にすれば、これは、労働生産性を大きく改善しますので、デジタル社会の製品と考えることができます。

テスラの自動車1台当たりの利益はトヨタの約7倍あります。税引き前粗利益率は17%で、業界他社平均のほぼ2倍あります。

これは、テスラをデジタル社会の企業(デジタル企業)と見なせることを示しています。

GAFAMなどのビッグテックは、工業社会の企業では考えられないような、高い利益率を出しています。

高い利益率を生み出す源泉はソフトウェアまたは、ソフトウェアと組み合わされたハードウェアです。

高度なソフトウェアを作ることができるのは、高度人材だけです。

デジタル企業は、高い給与を払って高度人材を抱えています。

最近日本では、高度人材の獲得が話題になっています。

高度人材の検討は次回にまわします。

2)レジームシフトの効果

1960年代に日本は高度経済成長を達成しました。

潜在成長率の考えでいえば、要因は次の3つです。

(1)資本整備

戦争で、破壊された設備を整備する場合には、確実な経済効果が見込まれます。

(2)労働力

高度成長期は、人口ボーナス期でした。

(3)生産性

高度成長期には、東京を中心とした大都市圏に、地方から人口移動がありました。
これは、農業から、工業への人口シフトでした。

農業の生産性は低く、工業の生産性は高かったので、その差の分だけ生産性が上がりました。


この労働移動は、農業社会から工業社会へレジーム移動の主要な部分でした。

労働移動は、田中内閣の均衡ある国土開発計画で、減速し、高度成長が終わります。
労働移動によって農業者は高齢化し、地方の集落には消滅したところもあります。

こうした場合に、人文的文化の人は、過疎問題があるといいます。

しかし、農村から都市への人口移動がなければ、生産性はあがらず、日本は先進国にはなれませんでした。

つまり、過疎問題という独立した問題は存在しないのです。

「農村から都市への人口移動の適切な速度はあるか」、「格差は不可避なので、それを補填する政策があるか」など複数の切り口で問題を整理する必要があります。

科学的文化では、こうした複雑な問題は、適切な評価関数を設定して、評価関数が、最大または、最少になる手段を検索する数学問題に置き換えられます。

人間の頭で扱えるパラメータの数は7つ程度で、各パラメータのレンジも5から8段階(3ビット)程度です。これより複雑な問題は、数式に置き換えて分析しないと、解くことができません。


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