竹青(5)

文字数 467文字

 ところが、つぎの日、おそろしいことが起こりました。船に乗っていたひとりのわかものが、いたずらはんぶんに、魚容を弓矢でねらったのです。
 矢は、ひょうと飛んで、魚容のむねにつきささりました。竹青は、おどろいて、
「あなた! あなた!」
「竹青!」
 魚容も、くるしい息の下からさけびましたが、そのまま、まっさかさまに、みずうみに落ちていってしまいました……



 ふと目がさめると、魚容は、人間のすがたのまま、みずうみのほとりでねていました。
「気がつきましたか」
 見れば、しんせつそうなおじいさんが、魚容の顔をのぞきこんでいます。
「わしは、そこの畑のもちぬしじゃが、おまえさんがねむりながら、わらったり、ないたりしているものだから、しんぱいになって、起きるのを待っていたのだよ。気ぶんは、どうかね」



 魚容は、はずかしくて、
「すみません」
 と、また、あやまりました。
「あやまることはない。さあ、これで、おいしいものでも買って、食べなさい」
 おじいさんは、そういって、お金のはいったおさいふをくれました。
「ありがとうございます」
「元気でな。さらばじゃ」
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