湖面 乱れた月

エピソード文字数 591文字

 湖面
 乱れた月
 映じる
 白い
 乱れる
 真白い
 乱れる
 真白い
 乱れよ
 天頂の白 

 乱れよ。白。
 腹の昂ぶりが急激に大きくなった。私は我を忘れ、上体を仰け反らせた。腰を押さえていた彼の左手が、背後から私の左肩を掴んだ。同時に私の内奥深くまで身体を進めてくる。割り入る質感に、細胞が一気に騒ぎ出す。ぶつかり合う。
「はっ」
 突き上げられるたびに、喉が反る。肩を掴んだ男の手が、私を自分のほうへと引き寄せる。ぎりぎりにまで仰け反った上に、彼と繋がることを課せられた私は、腰の中心から折れてしまいそうだった。それでも、繋がった甘さが何もかもを柔らかく感じさせてしまう。動かされるたびに、身体の奥深くで蕩ける感覚が広がる。私をぐじゅぐじゅと、腐らせていく。
 彼の右手が、私自身を包み込んだ。湖水に没したそれをゆっくりと扱く。強い圧迫を加えられると、自然に私の唇から吐息が零れる。そのたびに、私は湖の水を飲んだ。おそらく、私はこのまま湖水に蕩け出す。そして湖の一部になる。自然に笑みが零れた。
 それがいい。このまま、この男とともに、進化しよう。人外の何ものかへ。それでいて、限りなく私に近い何かへ。背後の男を見た。彼が淡く笑う。その笑顔は、纏った鮮やかな色彩の中で、際立って柔らかい色を帯びていた。私はなぜか、怖くなる。
 自分の中から溢れ出す愛しさが、怖い。
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