第7話
文字数 4,065文字
新藤「《よいまとけ》ロボットは、いぜん日比谷通りを北上中、国会議事堂、皇居方面には向かっていません」
那稀博士「・・・・」
鈴木刑事(うむむ~どうすれば?)
宮川「装甲は戦車並み、表面も耐水耐圧耐電磁素材でおおわれています、潜水艦みたいと言われればその通りです」
原田「ええと・・それじゃあ・・」
栗元「そうだ、GPS電波を使ったニセ位置情報で狂わすとか、ハッキングで止めるとか、電磁波兵器で内側から焼くとか、どの方法も使えないということだ」
ブルー「
キラリッ!
そのとき、ブルーの左目が光り、ブラウザーコンタクトに雲ジイから連絡が入った、
「ブルー、上陸地点と思われる沿岸から魚雷のフェアリング(おおい)のようなものが見つかったぞい、半分溶けかかってはいたがの」
(何よそれ?)撫子は目で交信している
「生分解ポリカーボネイドじゃ、時間がたつと分解して海に溶けてしまうプラスチックじゃよ、昨今は魚を獲る網や仕掛けなどに使われておる」
(証拠隠滅ってこと?)
「そうじゃ、あと半日遅ければ海に消えていたのう」
(よく見つけたわね)
(漁師さんのツイッターから見つけたんじゃ、漁で変なものが釣れたと書き込んで
おったからの、この事件との関連性が高いと判断したわけじゃ)
(さすがビックデータを扱えるスパコンね雲ジイ)
(当然じゃ、正確にはわがはいはクラウドじゃが、スパコンともリンクしとるから情報は自由自在じゃ)
(スパスパコンね)
「変なネーミングをつけるな!」
(それで犯人らしきものはわかったの?)
「現在解析中じゃ、そんなに早くわかるわけないじゃろ!」
「はー」(ため息)(感心して損した)
(そっちのデータ解析は雲ジイにまかせるわ、何かわかったら教えてちょうだい)
(リョーカイじゃ、報告おわり)
原田(さっきからなぜウインクばかりしているんだ?目にゴミでも入ったのかな)
と原田は不思議に思った。ブルー捜査官は、いぜんとして判別機の前から動かない。
栗元「ミューレントゲン検査から99.999%推定8キロトンのプルトニウム型原爆だと
量子コンピューターは結論しました」
吉田警部「フランスで強奪されたものに間違いないか?」
栗元「はい、間違いありません、核種(※1)が適合しました」
と結論を言う栗元
宮川「この構造ですと、方向を変えてジャイロが狂ったりINSが止まるとその場で爆発すると思われます」
宮川も、調べて結論を言った。
一同「・・・・・」
鈴木刑事「・・いっそ対戦車ミサイルでロボットごと自衛軍に破壊してもらう、というのはどうだろう?」
那稀博士「それはいかん!核爆発をさせなくとも、放射性物質をまき散らすのはダーティー・ボムという、これもまた爆弾じゃ。とくにプルトニウムは最悪で猛毒じゃ、半減期からいって東京は2万4000年間、人も動物も住めなくなる」
ブルー「まあ!とても長いわねー」
鈴木刑事(おいおい、本当にこんな捜査官で大丈夫なのか?)
ブルー「あーっ、その目はまだ信じてないでしょ」
鈴木刑事「見た目女学生をどうやって信じろというのだ?それともなんちゃって女学生か!?」鈴木刑事も限界である
それには答えず、無視をきめこむ撫子(ブルー)
ブルー「つまり爆発させず、物理的に止めるしか方法はないってことね」
栗元「そういうことだな」
一同「・・・・・」
打つ手がなく、八方ふさがりだった、皆だまりこみ、室内には暗く重い空気がたちこめ・・・・なかった。
「じゃあ、そうしましょ!」なぜか明るく言うブルー捜査官
一同「えっ?!」
ブルー「破壊しましょう、ちょいちょいっと」
原田「おいおい破壊って、戦車なみの装甲で中身は原爆だぞ」
新藤「 ちょいちょい、ってもなあ?」
鈴木「止めるのも不可能、破壊も不可能」
栗元「どうしようもないだろ」
ブルー「要は臨界量にさせなきゃいいわけでしょ」
栗元「それはそうだが、言うはやすし行うは
ブルー「作戦を考えるわ・・・」
一同「・・・・・・・」
ブルー「えーっと・・・どうしようかしらあ~?」
ドタぁ、と皆倒れる
ブルー「・・と、いうわけで吉田警部、都内のことなら隅から隅までご存知で、30年の経験と叩き上げ現場主義の警部に、何かアイディアはありまして?」
そう言ってブルーは、いきなり吉田警部に振った。
吉田警部「現場主義とか、よくわしのことをよく知っているな・・・さすがGFPだからかな?」
さきほどから警部は、あまり口をはさんではこなかった。指揮権はもうないし、というより技術的なことはわからないし、事件の大きさもはるかに大規模で複雑なことのように思われたからだ。
「残念ながらわしには何も思いつかんよ、これはコソ泥や殺人事件のようなレベルじゃないだろう、都市をまるごと人質にとるなんて、警察の力じゃどうにもできん・・」
イスに座る警部は、なんだか元気がなさそうに答えた、声も小さく感じてしまう。
『大事件といえども最初はささいな原因からはじまる、迷ったら現場へ戻る。現場に行けば解決策は見つけやすくなるものだ。』
ブルーは目をつむり人差し指を上げ、ひと言つぶやいた。
それを聞いて警部はハッと目をひらく、ブルーを見上げながら、
「そ、それはわしが昔から、いつも部下に言っておるセリフじゃないか」
にっこりと微笑むブルー捜査官は、一瞬とても綺麗に見えた。
宮川「ロボットはゆっくりだけど、どこかへ向かっている気がします?」
ブルー「そこが『着弾点』なのね」
鈴木刑事「裏をかえせば、そこまで爆発はしない、ということだね」
ブルー(これは?戦術核と似たやり方だわ)
栗元「結局どーしようもないのだろ!ロボットの方向はかえられないし、停止もできないんじゃぁ・・」少しイライラしている栗元
原田「それをどうにかするのが、俺たちの仕事だろ」
声が大きくなる二人
ブルー「うるさいわねー!何事も初動は大切でしょ、事件は小さいうちに終わらせるの、
大事件にはさせないの!皆が知らないうちに終わるのが最上なのよ!」
ブルーがタンカを切る
「・・・・・・」全員が沈黙した
(何か警部の女版がいるような気がしてきたぞ)
(オレもそう思った)
(いろいろとギャップが激しすぎるな、オイ)
吉田警部は電子タバコを手になぜかニヤリと笑っているように見えた、少し元気が出たのだろうか?
ブルー「構造と目的地がわかれば対処の方法もたてられるのよ。とりあえず
原田「はい?」
ブルー「直径1.5mくらいの」
鈴木「おわんって、どうして?」
ブルー「いいから、必要になるだろうから」
鈴木「そんな急に言われても・・」
吉田「わしが用意しよう」吉田警部が応えた
「心当たりがある、町工場が多い大田区に知り合いがいるからあたってみよう」
吉田警部は電話を手に取る
「鉛製のおわんを4つだね、直径1.5mの・・」
ブルー「はい、そうです」
「もしもし…警視庁の吉田だが、社長はいるかな」電話をかける吉田警部
栗元「3mのロボットを封じ込めるなら1.5mじゃ足りないぞ、それに原爆が爆発すれば鉛製だろうとチタン製だろうと紙みたいなものだ、まったく防ぐ手立てにはならないよ」
「いいのよ、それで」
ブルーはそれ以上言わなかった。
吉田警部「ああ、おやっさん元気かい、実は急な用事ですまないのだが、至急作ってもらいたいものがあってね・・・いや、すまん緊急事態なんだ」
栗元「で、次はどうするんだ?」
ブルー「問題はどこへ向かっているか?ミサイルの目的地が肝心ね」
原田「目的地?」
栗元「そもそも、核兵器は空中で爆発させるほうが威力は大きいんだ、広島も長崎もそうだっただろう、地上で爆発させたら威力は半減だ、ビルや建物が
つまりは核をロボットに積んで、地上を歩かせてどうするのか?という基本的な疑問だ」
ブルー「地上爆発で大被害をもたらすなら原子力発電所かガスタンク集積所でも狙うわ、でもロボットはそちらには向かっていない、タンク集積所は海側でしょ、さらに東京に原発はないし、目的は何?」
原田「それは・・・」
ブルー「都市破壊が目的ならとっくに爆発してるはずよ、汐留のビル街を破壊したほうがインパクトあるじゃない・・・私は政治中枢の永田町あたりだと予想していたけど方向が違うわ、そもそも今日は休日だから議員もいないし・・・」
原田「じゃあどうして?」
「栗元ぉ、今日、都内で人が集まっているのはどこだ?」
電話を終えた吉田警部が大声で叫んだ
栗元「はいっ?」
「祭りでも花火大会でもコンサートでも何でもいい、今日、東京で人が何万と集まっている場所はどこだ?」
吉田警部の号令で、あわてて検索する栗元
栗元「えっ、は、はい・・き、今日は休日なので国会はありませんし」
「そんなことはわかっとる」
栗元「駅、繁華街・・競馬場も今日は主なレースはないし・・・東京ディ…遊園地」
警部「そこは東京じゃない」
千葉県民(なにか言ったかあ?)(怒)
栗元「あとはスポーツ・・野球場ぐらいしか・・・」
「それだわ!」
叫ぶ撫子、いやブルー・キャット
「戦術核は敵の集まるところ、基地や集積場を破壊して戦力を削ぐことにあるの、テロが目的なら最も大量被害がでる場所で爆発させるわね。
一箇所に人が集まっているところ、8キロトンで最大の被害がでるところは?」
栗元「それなら文京区にある」
皆はいっせいに同じ場所を想像した。
『後楽園ドーム』だ!!
~つづく~
※1「核種」原子核の組成、特定の原子の種類を言う