51 降っても晴れても
文字数 4,172文字
わたしに遅れること半時間の後 、ルータも病室に戻ってきた。一人だった。
「テンは帰した」彼は言った。「宿まで送ってきたよ」
「彼、大丈夫かしら」わたしは訊いた。
「どうだろう」ぐったりと椅子に座り込んで、ルータは老師の寝顔に見入る。「話をどこから聞かれてたかが問題だな。あの男、いったいいつ来たのか……。店に入る前に確認した時には、どこにもいなかったはずなんだが」
わたしはいまだ鮮明な記憶のなかの映像に、くまなく照明を当てていった。そして丁寧に一つずつ場面を検証した。
「わたしにも、正確にはわからない。だけどあの人のコーヒー、わたしたちが店を出る時にはまだはっきりと湯気が立ってた。わたしも外にいたからわかる。あの気温の下だと、ものの一分 もしないうちに紅茶は冷めちゃったわ」
「つまり、来たばかりだったんだな」ルータがベッド越しにわたしを見あげる。「〈テルル〉のことが話題に上った、その後 だった」
「おそらく」わたしはうなずく。「運が良かったわ。あなたたちの会話は、ほとんどなにも聞かれずにすんだと思う。テルルのことも、最後にテンシュテットが言いかけていたことも……」
祖父の手を優しく握り、ルータはほっと一息ついた。
「まったく、なんて油断ならない奴なんだ。……というか、リディア。助かったよ。ありがとう」
「イサクのおかげよ」わたしは老師の腕を抱きしめている彼女の背中に、手を置いた。
「ありがとな、イサク」兄が妹に声をかける。「おまえの予感は当たるね」
「そういつもじゃないけど」イサクは顔も上げず、ただ少し肩をすくめた。
「でも、これからどうしようか」わたしは腕組みをする。
巻いたままだったマフラーを解 きながら、ルータは壁の時計を見やる。もうじき午前が終わる。
「もうこのままずっとここにいよう」彼は言った。「すっかり暗くなってしまうまで」
「その頃にはまた空は荒れてるかしら」
「降っても晴れても、今夜行くしかない」ルータがきっぱりと言い放つ。「それに、天気が崩れた方が好都合だと思うよ。多少なりと人目 に付きづらくなるはずだから」
「そうねぇ……」
小さくため息をついて、わたしは窓辺に向かった。用心のため、カーテンはぴたりと閉じてある。わたしはそれをほんの少しだけ開けて、そこから川向うの自分たちが暮らしていた部屋を眺めた。
ちょうど、あの黄色い髪のアトマ族の女性が、その部屋のベランダ付近をふらふらと飛んでいるところだった。
わたしは二人を呼んだ。
三人でカーテンの隙間の前に上下一列に並んで、彼女の動向を観察した。
「やっぱり、ああやって来てたんだな」ルータが嘆息する。
「この病室も知られてるのかな」イサクが眉間に深く皺を刻む。「まさかここまで来たりは……」
「それはたぶん大丈夫」兄が妹の頭上で言う。「病院の場所は把握していたとしても、用のない者は誰も――人間であろうとアトマ族であろうと――入院病棟には入ってこられない。そういう警備は、ここはかなり厳しいよ。怪しい奴はみんな入口で弾かれるみたいだ」
「ならやっぱり、ここで夜まで待つのが賢明ね」わたしは小声で言う。別に今ここで声を抑える必要なんかないんだけど。
「けど、どうやってここから出るの」イサクが立ち上がって腰を伸ばす。「まさかこの窓から飛び降りようってんじゃないよね」
わたしとルータは窓の下の通りを見おろす。そこには幅の広い煉瓦敷きの道が川と平行に伸びている。近くに大きな橋や市場の玄関口があることから、人や馬車の流れが昼夜問わず途絶えることがない。大柄な老師のお体を抱えてここから出ていくのは、まったく気が進まない。かといって、病院の表玄関から出るというのも、考えられない。職員や業者が利用する通用口も裏口も、おなじく却下だ。院内を移動する最中に必ずや看護士や職員と擦れ違うに決まってるし、それでもし騒ぎにでもなったら収拾がつかなくなる。わたしたちという立つ鳥は、絶対に跡を濁すことは許されない。「決して我らの神技 を世人の目に映すべからず」――わたしたちの一族に数千年の昔から伝わる掟だ。いかなる境地に至ろうとも、たとえ最後の一人になろうとも、わたしたちは可能な限り掟を遵守 する誓いを立てている。だってそうやって、わたしたちやわたしたちの親たちをこの大慾 の世界から護り抜いてくださった数多 の先人たちが、いらっしゃったのだから。
少しずつ強さを増してきた風が、窓の外でうううと唸 り始めた。まるで、わたしたちを焚 きつけるみたいに。
「……あそこしかないかな」
顎を指先で摘まんで、ルータが独り言のようにつぶやいた。そして廊下側の壁を、透視するようにじっと睨む。階段の踊り場がある方向だ。
「そうね」わたしもそちらへ顔を向ける。
「でもあそこの窓って、ちゃんと開くのかな」イサクが眉をひそめる。「ていうか、あれってそもそも窓なの?」
「鍵が付いてるからね。ということは、開けたり閉めたりできるはずでしょう」
「ちょっと待ってて」
そう言うとルータは一人で部屋を出ていった。そして一分もしないうちに戻ってくると、ドアを閉めるなりうなずいてみせた。
「たしかに窓だね。壁そのものが一枚の窓になってる。ずいぶん長いこと開けられたことがないみたいだけど、開くには開きそうだ。しかし……」
「すごいでかいよね」イサクがつまらなそうに言う。
「ああ。誰にも気付かれずに開けるのは、ちょっと骨が折れそうだ」
「でもあそこしかないじゃない、もう」わたしは組んでいた腕をぱっと解く。「夜のあいだじゅう、じっくりと機会を伺いましょう。きっとそのうち好機の一つや二つ、見えてくるはずよ」
「だね」うなずいて、ルータは立ち上がる。「それに、あそこから出られたら都合が良いよ。なんせあの下、人が全然通らない路地裏だから」
わたしたちは互いの顔を見あわせ、一斉に時計を見あげ、それから無音の呼吸を繰り返す老師のお顔を見つめた。
「今のうちに支度を済ませておこう」ルータが言った。
日が暮れるまでに、わたしたちはいろいろな手筈 を整えた。
まず、老師のお体を守護する厚手の衣服を揃えた。それから、全員ぶんの外套 も用意した。雪山にアリアナイトを採りに行った時に着ていたものだ。穀物袋みたいにがさがさとした生地で織られた素っ気ない代物 だけど、なにしろ地味で目立たないし、このあたりの地域では似たようなものを着用している商人や旅人がたくさんいる。大ぶりのフードも付いていて、雨風からも人目からも頭部を守ることができる。装備に関しては、ひとまずこれで事足りそうだ。
いちばん時間がかかったのは、手紙の執筆だった。丁寧に言葉を選びながら、わたしたちは全部で三通の手紙を書いた。一通は、シュロモ院長先生宛て。そしてあとの二通は、短い期間だったけどおなじ屋根の下で暮らした、管理人のサラマノさんと小さな友人ラモーナに宛てて。三者それぞれに対して唐突な(そして無礼な)別れを陳謝し、心からの感謝を伝えた。シュロモ先生への封書には、諸費用の支払いを確約する証書類と、そして、どうかくれぐれもハスキルの健やかな成長を見守ってくださいという、なにより大切な追伸も添えた。
夕方頃、わたしが変装して一人で郵便社に出掛けていった。いずれも近場の宛先だが今の時間の受託だと配達は明日の昼以降になるだろう、と言われたので、問題ありませんとわたしはこたえた。全部明日で、かまいませんと。
老師のための夕食は、もう運ばれてこなかった。点滴もなし。ただ酸素を供給する器具だけが、その口もとに繋がれている。あなたたちはなにかお食べになったらと看護士に勧められたので、そうしますと返事はしたのだけど、誰もなにも食べる気など湧かなかった。
病室のドアを閉めきって、三人で老師を囲み、ひたすらに院内の騒々しさが鎮まるのを待った。
やがて面会時間が終了し、見舞いに来ていた人々や昼勤から解放された職員たちが、続々と外へと出ていく。
地上はとうに暗闇に包まれている。
風は吼 え、雪は錯乱した蜂 の群れのように夜空を踊り狂っている。街の石畳も、建物群の屋根も、もうすっかり真っ白だ。
一言も口を利かず、わたしたちは全員で――もちろん老師も含めて――互いの手を結び合い、その時が来るのを待った。
どれくらい経ってからだろう。
ある時点を越えた途端、まるで縺 れていた糸が突然するりと解 かれたかのように、病棟全体が静寂に包まれた。
「……そろそろかな」
ルータが重い口を開いた。
けれどまさにその時、誰かがドアを叩いた。
顔馴染みの看護士の女性だった。
コーヒーを作ったのだけれど、と彼女は言った。あなたたち、なにも食べていらっしゃらないでしょう。せめて温かい飲み物でもと思って、あなたたちのぶんもご用意したの。
断るに断れず、ルータとイサクが看護士に連れられて詰所に向かった。
彼らが行ってしまった後で、わたしもこっそりと廊下へ出てみた。
右手に少し進んだ先に、後 ほどでまた四人で来ることになっている下 りの階段と、その突き当たりの踊り場の窓が見える。窓はどっしりと分厚く、縦幅も横幅もとても広く、生半可な力ではびくともしなさそうだ。開閉のための鍵は錆 だらけで、まるで得体の知れない毛虫みたいに見える。
左手には長い廊下がまっすぐに伸びている。そのなかほどに、看護士たちの詰所がある。ルータとイサクがそこに入っていくのが、さっきちらりと見えた。かすかに、その奥からコーヒーの香りが漂い出てきている。
わたしはしばらく廊下の壁に肩をつけてそちらの方を観察した後、ドアを開いたままにしておいた病室のなかへと戻った。
その瞬間、わたしの背筋は凍った。
一本の蝋燭の炎だけが揺らめく仄暗 い室内に、未知の何者かの気配がある。
老師の枕もとの小さなテーブルには、野花の活けられた一輪挿しの花瓶と、水差しとコップと、そして葉書 ほどの大きさの卓上鏡が置いてある。わたしはとっさに廊下へと後退し、鋭く身を屈 め、その鏡に映る人影を凝視した。
部屋の隅 に、一人の男が立っていた。
彼は人差し指をみずからの唇に押し当て、わたしの瞳を鏡の向こうからじっと見つめた。
「心配しないで」テンシュテットが言った。「きみたちの手助けをしに来たんだ」
「テンは帰した」彼は言った。「宿まで送ってきたよ」
「彼、大丈夫かしら」わたしは訊いた。
「どうだろう」ぐったりと椅子に座り込んで、ルータは老師の寝顔に見入る。「話をどこから聞かれてたかが問題だな。あの男、いったいいつ来たのか……。店に入る前に確認した時には、どこにもいなかったはずなんだが」
わたしはいまだ鮮明な記憶のなかの映像に、くまなく照明を当てていった。そして丁寧に一つずつ場面を検証した。
「わたしにも、正確にはわからない。だけどあの人のコーヒー、わたしたちが店を出る時にはまだはっきりと湯気が立ってた。わたしも外にいたからわかる。あの気温の下だと、ものの
「つまり、来たばかりだったんだな」ルータがベッド越しにわたしを見あげる。「〈テルル〉のことが話題に上った、その
「おそらく」わたしはうなずく。「運が良かったわ。あなたたちの会話は、ほとんどなにも聞かれずにすんだと思う。テルルのことも、最後にテンシュテットが言いかけていたことも……」
祖父の手を優しく握り、ルータはほっと一息ついた。
「まったく、なんて油断ならない奴なんだ。……というか、リディア。助かったよ。ありがとう」
「イサクのおかげよ」わたしは老師の腕を抱きしめている彼女の背中に、手を置いた。
「ありがとな、イサク」兄が妹に声をかける。「おまえの予感は当たるね」
「そういつもじゃないけど」イサクは顔も上げず、ただ少し肩をすくめた。
「でも、これからどうしようか」わたしは腕組みをする。
巻いたままだったマフラーを
「もうこのままずっとここにいよう」彼は言った。「すっかり暗くなってしまうまで」
「その頃にはまた空は荒れてるかしら」
「降っても晴れても、今夜行くしかない」ルータがきっぱりと言い放つ。「それに、天気が崩れた方が好都合だと思うよ。多少なりと
「そうねぇ……」
小さくため息をついて、わたしは窓辺に向かった。用心のため、カーテンはぴたりと閉じてある。わたしはそれをほんの少しだけ開けて、そこから川向うの自分たちが暮らしていた部屋を眺めた。
ちょうど、あの黄色い髪のアトマ族の女性が、その部屋のベランダ付近をふらふらと飛んでいるところだった。
わたしは二人を呼んだ。
三人でカーテンの隙間の前に上下一列に並んで、彼女の動向を観察した。
「やっぱり、ああやって来てたんだな」ルータが嘆息する。
「この病室も知られてるのかな」イサクが眉間に深く皺を刻む。「まさかここまで来たりは……」
「それはたぶん大丈夫」兄が妹の頭上で言う。「病院の場所は把握していたとしても、用のない者は誰も――人間であろうとアトマ族であろうと――入院病棟には入ってこられない。そういう警備は、ここはかなり厳しいよ。怪しい奴はみんな入口で弾かれるみたいだ」
「ならやっぱり、ここで夜まで待つのが賢明ね」わたしは小声で言う。別に今ここで声を抑える必要なんかないんだけど。
「けど、どうやってここから出るの」イサクが立ち上がって腰を伸ばす。「まさかこの窓から飛び降りようってんじゃないよね」
わたしとルータは窓の下の通りを見おろす。そこには幅の広い煉瓦敷きの道が川と平行に伸びている。近くに大きな橋や市場の玄関口があることから、人や馬車の流れが昼夜問わず途絶えることがない。大柄な老師のお体を抱えてここから出ていくのは、まったく気が進まない。かといって、病院の表玄関から出るというのも、考えられない。職員や業者が利用する通用口も裏口も、おなじく却下だ。院内を移動する最中に必ずや看護士や職員と擦れ違うに決まってるし、それでもし騒ぎにでもなったら収拾がつかなくなる。わたしたちという立つ鳥は、絶対に跡を濁すことは許されない。「決して我らの
少しずつ強さを増してきた風が、窓の外でうううと
「……あそこしかないかな」
顎を指先で摘まんで、ルータが独り言のようにつぶやいた。そして廊下側の壁を、透視するようにじっと睨む。階段の踊り場がある方向だ。
「そうね」わたしもそちらへ顔を向ける。
「でもあそこの窓って、ちゃんと開くのかな」イサクが眉をひそめる。「ていうか、あれってそもそも窓なの?」
「鍵が付いてるからね。ということは、開けたり閉めたりできるはずでしょう」
「ちょっと待ってて」
そう言うとルータは一人で部屋を出ていった。そして一分もしないうちに戻ってくると、ドアを閉めるなりうなずいてみせた。
「たしかに窓だね。壁そのものが一枚の窓になってる。ずいぶん長いこと開けられたことがないみたいだけど、開くには開きそうだ。しかし……」
「すごいでかいよね」イサクがつまらなそうに言う。
「ああ。誰にも気付かれずに開けるのは、ちょっと骨が折れそうだ」
「でもあそこしかないじゃない、もう」わたしは組んでいた腕をぱっと解く。「夜のあいだじゅう、じっくりと機会を伺いましょう。きっとそのうち好機の一つや二つ、見えてくるはずよ」
「だね」うなずいて、ルータは立ち上がる。「それに、あそこから出られたら都合が良いよ。なんせあの下、人が全然通らない路地裏だから」
わたしたちは互いの顔を見あわせ、一斉に時計を見あげ、それから無音の呼吸を繰り返す老師のお顔を見つめた。
「今のうちに支度を済ませておこう」ルータが言った。
日が暮れるまでに、わたしたちはいろいろな
まず、老師のお体を守護する厚手の衣服を揃えた。それから、全員ぶんの
いちばん時間がかかったのは、手紙の執筆だった。丁寧に言葉を選びながら、わたしたちは全部で三通の手紙を書いた。一通は、シュロモ院長先生宛て。そしてあとの二通は、短い期間だったけどおなじ屋根の下で暮らした、管理人のサラマノさんと小さな友人ラモーナに宛てて。三者それぞれに対して唐突な(そして無礼な)別れを陳謝し、心からの感謝を伝えた。シュロモ先生への封書には、諸費用の支払いを確約する証書類と、そして、どうかくれぐれもハスキルの健やかな成長を見守ってくださいという、なにより大切な追伸も添えた。
夕方頃、わたしが変装して一人で郵便社に出掛けていった。いずれも近場の宛先だが今の時間の受託だと配達は明日の昼以降になるだろう、と言われたので、問題ありませんとわたしはこたえた。全部明日で、かまいませんと。
老師のための夕食は、もう運ばれてこなかった。点滴もなし。ただ酸素を供給する器具だけが、その口もとに繋がれている。あなたたちはなにかお食べになったらと看護士に勧められたので、そうしますと返事はしたのだけど、誰もなにも食べる気など湧かなかった。
病室のドアを閉めきって、三人で老師を囲み、ひたすらに院内の騒々しさが鎮まるのを待った。
やがて面会時間が終了し、見舞いに来ていた人々や昼勤から解放された職員たちが、続々と外へと出ていく。
地上はとうに暗闇に包まれている。
風は
一言も口を利かず、わたしたちは全員で――もちろん老師も含めて――互いの手を結び合い、その時が来るのを待った。
どれくらい経ってからだろう。
ある時点を越えた途端、まるで
「……そろそろかな」
ルータが重い口を開いた。
けれどまさにその時、誰かがドアを叩いた。
顔馴染みの看護士の女性だった。
コーヒーを作ったのだけれど、と彼女は言った。あなたたち、なにも食べていらっしゃらないでしょう。せめて温かい飲み物でもと思って、あなたたちのぶんもご用意したの。
断るに断れず、ルータとイサクが看護士に連れられて詰所に向かった。
彼らが行ってしまった後で、わたしもこっそりと廊下へ出てみた。
右手に少し進んだ先に、
左手には長い廊下がまっすぐに伸びている。そのなかほどに、看護士たちの詰所がある。ルータとイサクがそこに入っていくのが、さっきちらりと見えた。かすかに、その奥からコーヒーの香りが漂い出てきている。
わたしはしばらく廊下の壁に肩をつけてそちらの方を観察した後、ドアを開いたままにしておいた病室のなかへと戻った。
その瞬間、わたしの背筋は凍った。
一本の蝋燭の炎だけが揺らめく
老師の枕もとの小さなテーブルには、野花の活けられた一輪挿しの花瓶と、水差しとコップと、そして
部屋の
彼は人差し指をみずからの唇に押し当て、わたしの瞳を鏡の向こうからじっと見つめた。
「心配しないで」テンシュテットが言った。「きみたちの手助けをしに来たんだ」
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