No.10 取引をしようか??
文字数 3,483文字
「こういう風に、アメリアが王城の外に出て、猛獣を飼って、海賊と戦い勝つけど、毒にやられ5日間眠ってしまったのはアナ姉さんがあの秘密通路を教えたせいですよっ!! どうしてくれるんですかっ!!」
ヒラリー姉の言ったことがまるで今までの出来事をハイライトしたように思えるな。
うちが目覚めた次の日、早速ヒラリーの説教を食らっていた。
うち、アメリナ、カレミナは正座をしていた。
仁王立ちのヒラリー姉の前で。
「だからって、なんで私も呼ばれてるの??」
「カレミナ、お前も通路づくりを手伝って、使っていただろう」
「あーー。はいはい、そういう理由で説教ね」
カレミナは降参するがごとく両手をひらひらと上げる。
「だったら、ラニャも呼ぶべきでしょ」
「ラニャ姉さんは今日エド兄さんと服を仕上げるらしいので、後に説教することに決めました。仕事の方が大事なので」
「うわぁ、ラニャ 逃げたわね」
アナ姉は口をプクーと膨らませすねる。
「ともかく、秘密通路なんて今後作らないでください」
「「やだぁーーーー」」
アナ姉とカレミナは幼稚園児のごとく反抗する。
「よく考えて、ヒラリー。私たちを外に出さなければどうなると思う??」
「普通に兵士を連れて出てください」
「そんなに頻繁に兵士さんを連れていくわけにはいかないわ、迷惑かけるもの」
「じゃあ、外に出ないでください」
「出なかったら、王城を走り回るしかなくなるでしょ」
「走らないでください」
「王城を走り回るなんて息苦しいわ。街の方がいいっ!!」
「まぁ、今後このようなことをすれば、姉さんたちのブランドなくしますよ」
ヒラリー姉は悪魔のような笑みをする。
しかも、堂々とした仁王立ち。
自分の服のブランドを自分の子どものように大切にしているアナ姉はとんでもなく悩まされていた。
ほんと、ヒラリー姉が大魔王に見えてくる。
そのころ、アメリアはもう足の限界が来ていた。
軽くなったとはいえ、正座には慣れていないんだよな…。
そういや、サンディは保護されているって言ってたけれど、どこにいるんだ??
「ヒラリー姉、サンディはどこ??」
「あのムーンライトのこと?? アイツなら多分庭園の所にいると思うが……」
「じゃあ、行ってくる」
「……え??」
窓に向かって走り出す。
「あっ、アメリアどこへっ!?」
ヒラリー姉はうちの突然の行動に動揺する。
「ちょっと、散歩」
アメリアはそういうとピーと口笛を吹く。
そして、窓から飛び降りた。
「ねぇ、カレミナ。ここって何階だっけ?」
「3階」
「アメリアーーーー!!!!」
「アメリアを追いかけろっ、多分、あの犬のところに行くはずだ」
すぐさまヒラリー姉はうちを捕えるようアーロンたちを追いかけさせた。
あの部屋からアメリナがうちを呼ぶ声がする。
「バァーカ。誰が死ぬかよ」
うちはあの海賊と戦った日から魔法が比較的自由に使えるようになっていた。
特にあのバリアは作りやすく、変形することは容易だった。
練習は昨日からこっそりやっており、3階まで届く滑り台を作ることもできた。
だから、死なないし。
ある意味最強だし。
滑り台で降りると、すでにサンディはうちの近くに来ていた。
「ワンっ!!」
久しぶりに会ったためか、サンディは嬉しそうでしっぽも振っていた。
そんなサンディの頭をわしゃわしゃと撫でる。
しかし、コイツだいぶ大きくなったな。
サンディはすでにうちの身長を超え、余裕で背中にも乗れるようになっていた。
「さぁ、外に行くかっ!!」
ジャンプしてサンディの背中に乗ると、後ろから声が聞こえてきた。
奴ら、来たな。
「アメリア様!! お待ちください!!」
「やあぁーーーーだ」
「今日は……」
アーロンが何か話していたが、ガン無視でサンディに指示をする。
「サンディ、あのボックス見えるか。あれに飛び乗って移動しろ」
「ワン」
サンディはうちが作った浮かんでいる立方体のバリアに飛び乗る。
「うまいなっ!! よし、そのままバリア飛び乗って外に出よう!!!」
うちは異世界 に来てから1番ワクワクしていた。
懐かしいな、このスリル感。
体育館倉庫で授業サボっていて先生にバレたとき、こうやって欺いて逃げてたっけ。
あの先生、ヘルニア持ちだったからな。
後ろを見ると、兵士たちはうちが作ったバリアに乗ろうとしていた。
「バイバイ」
小悪魔のような笑みを浮かべながら、バリアを消す。
「うわぁーーーー!!」
兵士たちは地面に落ちた。幸い、そこまで高さがなかったため、大けがをした者はいなさそうだった。
ワクワクが止まらないうちはサンディとともに王城の外に出る。
その時、アーロンが何か叫んでいた。
「アメリア様!! 18時には帰ってきてくださいよっ!! 今日はフレイ様がアメリア様に正式に婚約を申し込みにいらっしゃるんですからね!!」
最後の1文なんて言っているか分からなかったけれど、まぁ、いいか。
うちらはバリアで王城の塀を超え、目的地もなしに適当に進んでいると、王城の門の方から声が聞こえた。
「ねぇ、お父さんを返してっ!!!」
「誰がはい、どうぞって出すかっ!!王女様が毒で数日間眠ったままだったんだぞ」
うちとサンディは草むらに隠れ騒がしい門の前を観察していると、1人の少女と門番が言い合っているのを目にした。
「それはっ……たまたま毒が塗ってあっただけよ!! お父さんは何も悪くない!!」
苦しい言い訳だな……。
アイツたしか“この剣には毒が塗ってある”とか言ってなかったか??
「うるさいっ!! あの剣で王女様が毒でやられたのは事実だ!! さぁ、帰れっ!! それともお前も捕まりたいのかっ!!」
「うっ……」
諦めた少女は踵を返し、寂しげな背中を見せトボトボ歩く。
お父さんって言ってたけれど、アイツはあの海賊の親分の子どもだよな??
アイツ、もしかしたら面白いもの持っているかも。
期待を寄せながらうちは隠れていた草むらから出て、静かに少女に近づいた。
「なぁ、お前、親分の娘か??」
気さくな感じで話しかけると、少女は大きく瞳を開き固まっていた。
彼女からそれなりの警戒心を感じる。
「ええ、そうですけど。なぜ、草むらから人が……」
「そんなのどうでもいいだろ。じゃあ、ちょっとお前の家に案内してくれないか??」
「そこで止まって何してるんだ?早く帰れって!? アメリア様っ!? なんでこのようなところにっ!?」
先ほど少女と言いあっていた1人の門番兵士がこちらに近づいてきた。
門番は早く帰らない少女を睨みつけていたが、うちの存在に気付くと微笑み始めた。
コイツも露骨だな。
「いちゃあ悪いか。うちの家の前で」
「いえ……あのお連れの兵士か使用人は……??」
「邪魔だから、1人で抜け出した」
「アメリア様、なんてことを!?」
「サンディ!!」
草むらに隠れていたサンディを呼び出すと、サンディはすぐにアメリアのもとに来た。
うちはジャンプをし、軽くなった体でサンディに飛び乗る。
「お前も乗れ」
少女に手を差し伸べる。
「えっ?? えっ?」
少女は困惑しつつも差し伸べたうちの手をとり、サンディの背中に乗った。
「アメリア様っ!! お帰りになって下さい!!」
「はいはい、何時間後かにね」
「アメリア様っ!!」
兵士はうちらを追いかけるがサンディの足は速く、追いつかれることはなかった。
そして、そのまま少女の家があるであろうあのレグルス港に向かった。
「アメリア様―――!! 今日は何の日かご存じですよねっーーーー!!!」
遠くに見える門番はそう叫んでいたような気がした。
★★★★★★★★
「王女様」
「王女様なんてやめろ、アメリアでいい」
アメリアと海賊の娘の少女はサンディに乗ってレグルス港に向かいながら、話していた。
「アメリア様、なぜ私を……私はアメリア様を毒で苦しませた人の子ですよ…??」
「……」
「お怒りとあらば、父上ではなく私を殺してください」
「お前を殺すつもりはない」
「では、なぜ……??」
正面を向いていたアメリアは少女の方に振り向いた。
「取引をしに来たんだ」
「??」
ニコッと笑う。
それはもう楽しそうに。
「お前、海賊のトップにならないか??」
ヒラリー姉の言ったことがまるで今までの出来事をハイライトしたように思えるな。
うちが目覚めた次の日、早速ヒラリーの説教を食らっていた。
うち、アメリナ、カレミナは正座をしていた。
仁王立ちのヒラリー姉の前で。
「だからって、なんで私も呼ばれてるの??」
「カレミナ、お前も通路づくりを手伝って、使っていただろう」
「あーー。はいはい、そういう理由で説教ね」
カレミナは降参するがごとく両手をひらひらと上げる。
「だったら、ラニャも呼ぶべきでしょ」
「ラニャ姉さんは今日エド兄さんと服を仕上げるらしいので、後に説教することに決めました。仕事の方が大事なので」
「うわぁ、
アナ姉は口をプクーと膨らませすねる。
「ともかく、秘密通路なんて今後作らないでください」
「「やだぁーーーー」」
アナ姉とカレミナは幼稚園児のごとく反抗する。
「よく考えて、ヒラリー。私たちを外に出さなければどうなると思う??」
「普通に兵士を連れて出てください」
「そんなに頻繁に兵士さんを連れていくわけにはいかないわ、迷惑かけるもの」
「じゃあ、外に出ないでください」
「出なかったら、王城を走り回るしかなくなるでしょ」
「走らないでください」
「王城を走り回るなんて息苦しいわ。街の方がいいっ!!」
「まぁ、今後このようなことをすれば、姉さんたちのブランドなくしますよ」
ヒラリー姉は悪魔のような笑みをする。
しかも、堂々とした仁王立ち。
自分の服のブランドを自分の子どものように大切にしているアナ姉はとんでもなく悩まされていた。
ほんと、ヒラリー姉が大魔王に見えてくる。
そのころ、アメリアはもう足の限界が来ていた。
軽くなったとはいえ、正座には慣れていないんだよな…。
そういや、サンディは保護されているって言ってたけれど、どこにいるんだ??
「ヒラリー姉、サンディはどこ??」
「あのムーンライトのこと?? アイツなら多分庭園の所にいると思うが……」
「じゃあ、行ってくる」
「……え??」
窓に向かって走り出す。
「あっ、アメリアどこへっ!?」
ヒラリー姉はうちの突然の行動に動揺する。
「ちょっと、散歩」
アメリアはそういうとピーと口笛を吹く。
そして、窓から飛び降りた。
「ねぇ、カレミナ。ここって何階だっけ?」
「3階」
「アメリアーーーー!!!!」
「アメリアを追いかけろっ、多分、あの犬のところに行くはずだ」
すぐさまヒラリー姉はうちを捕えるようアーロンたちを追いかけさせた。
あの部屋からアメリナがうちを呼ぶ声がする。
「バァーカ。誰が死ぬかよ」
うちはあの海賊と戦った日から魔法が比較的自由に使えるようになっていた。
特にあのバリアは作りやすく、変形することは容易だった。
練習は昨日からこっそりやっており、3階まで届く滑り台を作ることもできた。
だから、死なないし。
ある意味最強だし。
滑り台で降りると、すでにサンディはうちの近くに来ていた。
「ワンっ!!」
久しぶりに会ったためか、サンディは嬉しそうでしっぽも振っていた。
そんなサンディの頭をわしゃわしゃと撫でる。
しかし、コイツだいぶ大きくなったな。
サンディはすでにうちの身長を超え、余裕で背中にも乗れるようになっていた。
「さぁ、外に行くかっ!!」
ジャンプしてサンディの背中に乗ると、後ろから声が聞こえてきた。
奴ら、来たな。
「アメリア様!! お待ちください!!」
「やあぁーーーーだ」
「今日は……」
アーロンが何か話していたが、ガン無視でサンディに指示をする。
「サンディ、あのボックス見えるか。あれに飛び乗って移動しろ」
「ワン」
サンディはうちが作った浮かんでいる立方体のバリアに飛び乗る。
「うまいなっ!! よし、そのままバリア飛び乗って外に出よう!!!」
うちは
懐かしいな、このスリル感。
体育館倉庫で授業サボっていて先生にバレたとき、こうやって欺いて逃げてたっけ。
あの先生、ヘルニア持ちだったからな。
後ろを見ると、兵士たちはうちが作ったバリアに乗ろうとしていた。
「バイバイ」
小悪魔のような笑みを浮かべながら、バリアを消す。
「うわぁーーーー!!」
兵士たちは地面に落ちた。幸い、そこまで高さがなかったため、大けがをした者はいなさそうだった。
ワクワクが止まらないうちはサンディとともに王城の外に出る。
その時、アーロンが何か叫んでいた。
「アメリア様!! 18時には帰ってきてくださいよっ!! 今日はフレイ様がアメリア様に正式に婚約を申し込みにいらっしゃるんですからね!!」
最後の1文なんて言っているか分からなかったけれど、まぁ、いいか。
うちらはバリアで王城の塀を超え、目的地もなしに適当に進んでいると、王城の門の方から声が聞こえた。
「ねぇ、お父さんを返してっ!!!」
「誰がはい、どうぞって出すかっ!!王女様が毒で数日間眠ったままだったんだぞ」
うちとサンディは草むらに隠れ騒がしい門の前を観察していると、1人の少女と門番が言い合っているのを目にした。
「それはっ……たまたま毒が塗ってあっただけよ!! お父さんは何も悪くない!!」
苦しい言い訳だな……。
アイツたしか“この剣には毒が塗ってある”とか言ってなかったか??
「うるさいっ!! あの剣で王女様が毒でやられたのは事実だ!! さぁ、帰れっ!! それともお前も捕まりたいのかっ!!」
「うっ……」
諦めた少女は踵を返し、寂しげな背中を見せトボトボ歩く。
お父さんって言ってたけれど、アイツはあの海賊の親分の子どもだよな??
アイツ、もしかしたら面白いもの持っているかも。
期待を寄せながらうちは隠れていた草むらから出て、静かに少女に近づいた。
「なぁ、お前、親分の娘か??」
気さくな感じで話しかけると、少女は大きく瞳を開き固まっていた。
彼女からそれなりの警戒心を感じる。
「ええ、そうですけど。なぜ、草むらから人が……」
「そんなのどうでもいいだろ。じゃあ、ちょっとお前の家に案内してくれないか??」
「そこで止まって何してるんだ?早く帰れって!? アメリア様っ!? なんでこのようなところにっ!?」
先ほど少女と言いあっていた1人の門番兵士がこちらに近づいてきた。
門番は早く帰らない少女を睨みつけていたが、うちの存在に気付くと微笑み始めた。
コイツも露骨だな。
「いちゃあ悪いか。うちの家の前で」
「いえ……あのお連れの兵士か使用人は……??」
「邪魔だから、1人で抜け出した」
「アメリア様、なんてことを!?」
「サンディ!!」
草むらに隠れていたサンディを呼び出すと、サンディはすぐにアメリアのもとに来た。
うちはジャンプをし、軽くなった体でサンディに飛び乗る。
「お前も乗れ」
少女に手を差し伸べる。
「えっ?? えっ?」
少女は困惑しつつも差し伸べたうちの手をとり、サンディの背中に乗った。
「アメリア様っ!! お帰りになって下さい!!」
「はいはい、何時間後かにね」
「アメリア様っ!!」
兵士はうちらを追いかけるがサンディの足は速く、追いつかれることはなかった。
そして、そのまま少女の家があるであろうあのレグルス港に向かった。
「アメリア様―――!! 今日は何の日かご存じですよねっーーーー!!!」
遠くに見える門番はそう叫んでいたような気がした。
★★★★★★★★
「王女様」
「王女様なんてやめろ、アメリアでいい」
アメリアと海賊の娘の少女はサンディに乗ってレグルス港に向かいながら、話していた。
「アメリア様、なぜ私を……私はアメリア様を毒で苦しませた人の子ですよ…??」
「……」
「お怒りとあらば、父上ではなく私を殺してください」
「お前を殺すつもりはない」
「では、なぜ……??」
正面を向いていたアメリアは少女の方に振り向いた。
「取引をしに来たんだ」
「??」
ニコッと笑う。
それはもう楽しそうに。
「お前、海賊のトップにならないか??」