藁家

文字数 1,743文字

ここで藁屋さんが執筆するのだぞ
「ごきげんよう。私は間・道輝…。まあ、もちろん君は知っているだろうが、形式上ね。」
「能力は『笑う贈呈者』という。これは人を助けるための能力のつもりだったのだがね、今はあまり使わないようにしている。

私のような立場の人間に対して世間は厳しいし、何より…相手が救われないことに気付いたんだ。」

「20数年経ったが、やっとだよ。気付いたのは少し遅かったのかもしれない。

もちろん、魔人のアイデンティティは能力そのものだ、否定する気もない。」

「だからね、君のような…将来ある若者が能力に振り回されているのを見ると、とても悲しい。」
警察庁総合庁舎、8階―。

卓上の三角形をしたネームプレートには「間・道輝 警視庁長官」の文字が光っている。その向かいには年端もいかぬ少女が縛られて座っている。

「…人生は長い。今日は見逃してやるから、出頭しなさい。まだ、やり直せるはずだよ。」
「…長官、それは」
「今日は僕は、休暇なんだ。君は僕から何も盗んでいない。偶然きた来客に対応しただけ。…それでいいじゃないか。」
束縛された少女はピクリとも動かず、顔を伏せている。
「さあ、帰りたまえ。」
僕は地面を軽く蹴り、くるり、と回転椅子を翻した。荒事は、苦手じゃない。相手にその気があるのなら、と近くに置いていたカバンを手元に引き寄せた。
「…間さん、カバン、見えてるよ。」
「…見えるように動かしたからね。もう縁起はいいのかい?」
「…いい雰囲気だったのに、もったいないなあ。」
ぱちん、と彼女が手を鳴らすと、瞬きほどの間に秘書だった女は少女に変わり、少女は縛られた秘書に姿を変えた。
「自信はあったんですけどね。タネが割れた手品ほどつまらないものはありません。


…あなたの大切なもの、準備は終わってますか?」

「勘違いしているようだけどね、さっき言っていたことは僕の本心だよ。聞き入れて欲しい。」
冷静沈着な怪盗少女はおくびにも出さないが、私はすでに仕掛けられた手品を3つほど見破っている。

カバンに引っかかったワイヤーは外したし、椅子の接着背もたれも間に布を挟んでおいた。

全く、幼稚なことだ。

「…。」
「僕のカバンは誰にも渡さないよ。なんなら、君の欲する物を当てて見せようか。」
「…君は裕福な家庭に育っているね。高価なものからゴミ同然のものまで、目利きはあるのに物に執着していない。君が最も欲する物は、親からの愛だ、違うかな?」
「僕なりにプロファイルした結果だ、昔からの特技でね、外したことがない」
カバンを漁る。
「これが、君の望むものだろう?」
取り出したのは汚れたレシート。

結局のところ、一番大切なものなんてものは他の人が見ても価値が分からないものなのだろう。

「あんたは…。」
…追い詰められた人間が、大切な物を見せられて逆上するのもよくあることだ。
ふらり、ふらりと少女は間に近寄ってくる。悪人は、心に隙間を抱えて生きているものだ。だから悪事を為す。現実から目を背ける。
そうだろう?
そう。
君の気持ちは手に取るようにわかる。
優しい僕なら、
盗ませてくれる、と思うんだろう?
瞬間、怪盗ノルドは銃弾に貫かれていた。

間・道輝の持つ拳銃によって。

Verylong_P_coat

倒れ伏した彼女からは明らかに致命的な量の血液が流れ出ていた。

一応、脈を確認してから縛られている秘書のロープを切る。

「死体の処理はたのんだよ。いつもの業者でいいから。」
「…畏まり、ました。」
「いやあ、最近はあまり殺せてなかったからね!実に爽快だ!やっぱりこれは辞められない!」
僕の心が満たされていく。同時に、然るべき手段を用い殺害された悪人のニュースは、町中の人の心を満たすだろう。

人は悪を叩き、善の粗を探すのが大好きだ。


そして、僕も人間。

悪人が死ぬのは、気分がいい。
「ニュースです。命乞い動物園に元気なカワウソが!見事、水中土下座で観客を沸かし…」
「…?…はい、……えー、ここで臨時ニュースです。」
「えー、たった今、元警察庁長官、間道輝が殺人及び死体遺棄の疑いで逮捕された模様です。詳しい情報については現在調査中です。繰り返します。元警察庁長官が殺人及び死体遺棄の疑いで…」
「確かに、盗ませていただきました。

あなたの『地位』を。


結局、あなたもその程度の人間です。」

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登場人物紹介

名前:怪盗ノルド




性別:女




特殊能力:怪盗の定理


彼女が怪盗たるための能力。怪盗の資格を自身に付与する概念能力であるが、具体的には「神出鬼没(瞬間移動能力)」「変幻自在(衣装変化能力)」「曖昧模糊(情報隠蔽能力)」などが挙げられ、彼女が怪盗でない間は使用が制限される。




キャラクター設定:


世界を股にかける大泥棒。犯行はまさに鮮やかとしか言いようがなく、犯行予告を送った標的から48時間以内に必ず"お宝"を盗み出す。警察は本名どころか国籍、性別すら特定できていない。得意のマジックで追手を翻弄する。




本名「石川 五花(いしかわ いつか)」。ごく普通の家庭で暮らす17歳の少女。何の変哲もない女子高生で、素行も良く、両親含め周りからは真面目な少女だと思われている。深い理由や強い理念があるわけではなく、ただの「生まれながらの怪盗」であり、ただの悪人。また、盗むことそのものが目的であるため、金に執着はなく、盗んだ物は協力者の古物商や宝石商に安く売りさばいている。


相手を倒したい理由:


「あなたの大切なもの、頂戴します。 ノルド」


作成者:藁家

名前:間・道輝(ハザマ・ミチテル)

性別:男


【能力名】

笑う贈呈者(ラフィン・プレゼンター)

相手が心の底から渇望していること(心の隙間)を満たすものを具現化し、ねじ込むことにより心の隙間を物理的に埋める。


(能力詳細)

 相手が心の底から渇望しているものを言い当てることにより、手にしたカバンの中からそれを満たす「もの」を取り出すことができる(相手の自覚無自覚は問わない)。


 取り出した「もの」は相手の願望から生まれたものであるため、抵抗なく相手の身体にねじ込むことができる(=心の隙間を埋める)。


 ねじ込まれた「もの」は相手の身体と融合するが、血肉は通っていないため当然身体に悪影響を及ぼし、多くの場合は死に至る。


【相手を倒したい動機】

皆の心の隙間を埋めてあげたい。


作成者:兜海老

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