第64話

文字数 2,749文字


源三郎江戸日記(弟二部)64

翌日上屋敷に出仕すると次席家老が、昨日銭屋がお礼とか申して1万両持って来ましたので、預かっていますがと言うので、帳簿には銭屋への指南料として処理してくれと言うと、何の、
指南料ですかと聞くので、新規商いとでもして置けばよい、自由に使ったもよいぞと言うので、金寸は足りておりますと言って、今年のご家老の禄米分の金寸ですが、殿より便りが来、
まして必ず渡すように言われておりますので、

今日根岸の奥方様に届けます、受け取っていただかないとそれがしが殿に叱られますというので、わかった、届けてくれと言ったのです、山本から何か知らせはあったかと聞くと、総て、
の来年の作付けの準備は終わって、正月を迎えるばかりだそうです、新田開発の届けがあり5000石ほど開発が終わったそうなので、郡方が検地して確認したそうに御座います、そこで、
とれた米の年貢は2分にする書付を名主に渡したそうですと言うので、

わかった、後は自主納付にして、あまりうるさく言わないように差配してくれと言うと、承知しました、陣屋町は大勢の職人が移り住み、商家が立ち並んで賑わっているそうで、玄海屋、
の20石船をはじめ多くの川船が行きかっているそうです、叉水路の紅葉、銀杏が色ずいて水路の水面に映えているとの事で、佐倉城下からも見に沢山訪れており、旅籠も満員のようです、
と言うので、

それが終わると、椿、梅、桜、つつじ、アジサイと続くわけじあな、正月開けには様子を、見に行くとしょうと言うと、供はと聞くので入らぬぞと言ったのです、決済書類に目を通して、
いると、お茶をお持ちしましたと腰元が入って来たので、ご苦労と言って顔をみて、そなたはおゆみではないかどうしてここへと聞くと、おゆみでは御座りのせぬ、夏と申しますと言う、
ので、

そうか根岸にいるおゆみそっくりじあなと言うと、ハイ、おゆみは妹に御座りますと言うので、そうなのか、姉妹そろうて奉公しているのかと言うと、ご家老様が初めて来られた時に、
家に戻るよう言われたのですが、特別に置いてくだされた中の一人ですというので、おう、あの時の腰元であったか、奥女中であろうなぜ御用部屋の世話をしているのじあと聞くと、
殿が国元に帰られている時は、

奥は暇で御座いますので次席家老様がそれぞれに担当をきめられて、御用部屋等の世話をしているので御座います、わたくしはご家老様の、部屋の担当で御座います、ここにはあまり、
お出でにならぬので、他の部屋を手伝おうていますと言うので、そうか、沢山返したり嫁にやったので人が減ったわけじあな、それはすまぬ事をしたなと言うと、いいえ、この位で、
十分で御座いますと言ったのです、

実家は神田神保町で本屋を、商っているそうじあなと言うと、ハイ、小さい店で御座いますと言うので、それならこれからそなたの実家に出向くので、宿下がりの、許しを得てまいれ、
2、3日はゆっくりしてくるが良いと言うと、ハイ、部屋頭様に許しをこうて来ますと言って部屋を出て行ったのです、暫くして戻ってきて、許しを貰いました、お籠を用意しますと、
言うので、

いらぬ、神保町なら桜田門外の船着場から外堀を通り、神田川に出れば直ぐじあ、傍に船宿があるので川舟を用意させれば良いと言って席を立ち、次席家老の部屋に行き、決済は総て、
終わっておる、これで戻るぞというと、ハイ、後はお任せくだされと言うので、お夏をともなって船着場に行き船宿で船を頼み、船に乗り込んだのです、お夏に乗った事はあるのかと、
聞くと、

初めてで御座いますと言うので、堀からみる江戸も叉風情があっていいもんじあぞと言って、船頭日本橋で一旦船を着けてくれ、すこしの時間買い物をするので待っていてくれと言う、
と、ヘイと返事したのです、お夏は回りを見てもの珍しそうに眺めていたのです、日本橋に着いたので二人で船を下りて、風月堂に行き落雁と人形焼を買って、これはそなたの両親へ、
の土産じあと言って、

10両を和紙に包み一緒に渡すと、こんな大金宜しいのですかと言うので、長年の奉公の褒美じあと言うと、申し訳御座りませぬと言うので、気にするなと言って、船に戻り神田に向か、
ったのです、船を下りて少しあるくと文教堂と言う看板が出ているので、ノレンをくぐるとお夏が只今帰りました、ご家老様がお出でにくださりましたよと言うと、新造と申します、
このようなところへわざわざ恐れ入りますと言って奥座敷に案内したのです、

気はつかうな、ほれこの通り浪人者の格好をしているじあろうと言うと、お輿に乗らず驚きましたと言うので、お夏がとても気さくなお方なのですよと言って、これはご家老様から、
の下され物です、10両も頂きましたよと言うので、このような大金をと言うので、気にするなお夏の長年の奉公に、対する褒美じあと言ったのです、それではこの菓子とお茶を出し、
ますとお夏が言うので、

それは後でみんなで、食するが良いと言うと、それでは笹で宜しいですかと言うので、すまんな、肴はめざしは無いかと言うと、隣の居酒屋から貰って、来ますとお夏が言ったのです、
妻女が酌をするので飲み干し、そなたも飲めというと妻女が新造に酌をしたので飲み干し、ご家老様とこうやって酒を飲むなんぞは初めてですと言うので、店もあるじあろうからわし、
には気をつかわんで良いぞと言うと、

妻女がおまえさん、ご家老様のお相手を頼みますと言うと、席を立ったのです、どんな本が売れているのじあと言うと、一番は錦絵ですというので、おう役者の似顔絵じあなと言うと、
ハイと言うので、持って来た風呂敷から本を取り出して、これは薬草の絵と煎じ方に効能が書いてある、隅田川の土手にも沢山あるぞ、これは売れぬかなというと、手にとりめくって、

これは詳しく書いてありますな、これをみれば誰でも薬草が摘めますというので、それを貸しておくので、誰かに写本させてここで売るが良い、それからこれは南蛮の簡単な外科手術、
の方法と何処でも手に入る道具をまとめたものじあ、医師を目指す者、叉医師も喉から手が出る程欲しがるものじあ、これも写本してうるが良いと言うと、いかほどお渡しすればと言、
うので、

わしへは一銭もわたさんで良い、これもそなたの姉妹が奉公してくれている褒美じあよ、実家が儲かれば娘子も喜ぶであろうと言うと、何と勿体無い事をと言って、暫くの間お借りし、
ますと言つたのです、お夏が帰って来て、良いいわしがありましたと、膳に載せるので、これは美味そうだと箸をつけて、うん、美味い、美味いと言うと、お夏が喜んでいたのです、

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