第1話 運命の日①

文字数 4,561文字

(今日の榛名春奈(はるなはるな)先生は青、いや深紫。ひょっとして黒かな…)

目の前のクラス担任の透けブラを凝視しつつ、少年は心の中で呟く。

(明日から春奈先生に会えないなんて…)

現在教室では、帰りのホームルームが行われていた。今日は7月の終わり、夏休み直前の木曜日の午後…つまり終業式の日だ。


式は午前中に終わり、ランチルームで昼食を済ませた後、生徒達は教室に戻り、夏休みのしおりを広げている。


これより、私立水上学園中等部の生徒達は夏休みに入る。あと1時間もすれば、全寮制であるこの学園に帰省バスが到着して、生徒達を駅まで運んでゆくのだ。

(このまま引き離されるのか…夏休みの間、ボクは何をすれば良いんだ…)

クラスメイト達は、待ち切れないとばかりにソワソワしている。そんな中、まだ表情に幼さを残す一人の男子生徒が、担任の榛名春奈へ向けて熱い視線を飛ばし続けていた。

(ああ…後ろから手を回して、あのおっぱいに触りたい)

少年の名前は水森当真(みずもりとうま)。私立水上学園中等部1年7組に所属する生徒だ。

(思いっきり掴んで揉みまくりたい! あのGカップを!)

そして、当真の放つ熱視線の先にいるのは、担任である榛名春奈。Gカップという押しも押されぬ爆乳の持ち主だ。

(うぅ、春奈先生を押し倒したい!)

水森当真は中学一年生ながら、自分の担任の先生を相手に童貞卒業を目論む、無謀な男子生徒だった。

(くぅーっ! 春奈先生とセクロスしたいな…)

やや妄想が過ぎる所があるが、性格は善良、今の所は年相応の社会的通念を備えている。

ただ彼は今、思春期真っ只中なだけだ。この将来(さき)どう成長していくかは分からない。

(一学期は無理だったけど、二学期こそは機会(チャンス)を作ってやる…!)

□□□□



どんっ!!

「うっ…!」

中等部東側校舎裏。体育倉庫のあるここは、授業以外で職員生徒達が近寄らない場所。

「おらっ!」

「うわっ…!?」

そこで水森当真 (12才) は同級生達にインネンを付けられていた。3人のクラスメイトに囲まれてしまい、当真は抵抗出来なかった。

「舐めてんじゃねーぞ!」

ホームルーム終了後、榛名春奈が教室を出ると同時に、当真はこの3人から強引にここへ連れて来られたのだ

「調子に乗りやがってよ!」

どんっ! どんっ!!

「いてっ! 乗ってないよっ」

どんっ!

「うるせぇよ!」

当真を突き飛ばしてくるのは、3人のクラスメイト達。当真達の担任である榛名春奈。その彼女の親衛隊気取りの連中だった。

「オラオラ!」

どんっ!

「うっ! ちょ、やめてよ」

身長146センチ、クラスで一番のチビである当真の身体は軽く、面白いように後ろへ後ずさっていく。

「へっ、弱っちい」

「もういいや、落とせよ」

「よぉーしっ、くらえ!」

そして当真の後ろには、何故か大きな穴が掘ってあった。

「うわわっ、やめろ!」

ドカッ!

「ぎゃあー!」

こうして、ロクに抵抗も出来ぬまま当真は穴に落とされる。イジメっ子の3人は、そんな当真の姿を上から見下ろして笑っていた。

「あははは! ぎゃ~! だってよっ」

3人から当真へ向けて、代わる代わる罵声が浴びせられる。

「ふんっ! ざまあみろ!」

言葉の一つ一つが当真の心を抉り、誇りを傷付けた。

「春奈先生をエロイ目で見やがって、次やったら許さねえぞ!」

それは容赦の無い物だった。だが、それもそのはず…彼等にとって当真は、榛名春奈という女性を狙う憎っくき恋敵なのだ。

「そろそろバスが来る。いこうぜ」

ひとしきり罵声を浴びせ終わると、気が済んだイジメっ子達は、その場を後にして教室へ戻ってゆく。

「つーか、アイツ登って来れんのかよ?」

「構わねえだろ、バスに乗り遅れても…歩いて帰れって、なあ?」

「ぎゃはははっ! ひでー奴!」

イジメっ子達は、去り際にそんなセリフを残していった。
「どうしよう…もうすぐバスが来ちゃう」




□□□□




「ちくしょうっ!」

余程張り切って掘ったのだろう。落とし穴の内部は深く、そして広かった。

「うおおおっ!」

当真はその中でダッシュを繰り返す。そうする事で、何とか落とし穴から駆け上がろうとするが…

「うわっ!?」

ズデーン!

「いつつ…」

しかし無理だった。50センチも登らない内に、少年は体勢を崩しそのまま地面(ソコ)に背中をぶつけてしまう。

「どんだけ深く掘っているんだよ…」

見上げた壁は、ご丁寧にも直角になっている。とてもではないが、一人でこの落とし穴を脱出するのは、不可能のように思えた。

「全然届かない。たぶん高さが5メートルくらいあるぞ」

もう、誰か助けに来てくれるのを待つしかない。

「あいつらアホか…」

当真は自分一人を落とす為に、ここまで大きな穴を掘ったイジメっ子達に、人知れず文句を言った。

「ミーン! ミーン!」

落とし穴の中で当真が途方に暮れていると、セミがやかましく鳴き出した。

「泣きたいのは、こっちの方だよ…」

当真が愚痴をこぼしたその時、何の前触れもなくセミの声が止んだ。

「………」

『ゴゴゴ…ゴゴゴ…』

「ん、何だろう?」

穴の中から空を見上げていた当真。そんな彼に天災が襲い掛かる。


『ゴゴゴー! ゴゴゴー!』

「!?」

突然地震が起こり、激しく地面が揺れた。そして、当真はピンポン球のように落とし穴内部を転げ回る。

「うわっうわうわっ!?」

当真が悲鳴を上げた次の瞬間、ポーン! と勢い良く彼の身体は落とし穴から弾き出された。
そして、当真が落とし穴を脱出するのと同時に地震は止み、代わりに空をドーム状の半透明な膜が覆い付くそうとしていた。
「えっ!? なにコレ…?」 
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登場人物紹介

【水森 当真《みずもり とうま》】


本編の主人公 (12)。特に目立った長所もなく、ただ単に溢れんばかりの若さを持っているだけのスケベ小僧。クラスでも埋没気味《モブ》な生徒の一人。

【榛名 春奈《はるな はるな》】


メインヒロイン(22)。今年の春に、私立水上学園中等部に赴任した新任の女性教員。そして、周囲から爆乳と称される程の大きな乳房の持ち主。


活発で人付き合いも良く、身体を動かす事が大好きである。その一方、漫画・小説・アニメ・ゲーム等の在宅趣味も嗜む。娯楽消費者として、インもアウトもバランス良くこなす性格をしている。


また、幼少より道場に通い詰めて、武芸を学んでいた。その影響で、非常時には物事をシビアに捉えるクセがあり、常人より一歩も二歩も見切りが早い。


突如現れた、モンスター達を相手に立ち回り、彼女は強力な職業《ジョブ》とスキルを取得する。その力を使い、生き残った生徒達を守ろうと奮戦する。

【絵堂沙織《えどうさおり》】


4月生まれの23才。私立水上学園中等部に勤める新任の女性教員。榛名春奈とは同期。185センチという見上げる程の高身長を誇る女性。


異世界転移前は、長身巨乳のお姉さんとして男子生徒から人気を博していた。それゆえに、彼女は当真の対戦相手として候補に上がっている…が、それはまだ先の話。


鎧袖一触を好み、テクニカルな春奈とは真逆の戦闘スタイルを得意としている。その恵まれた体格でもって、鬼に金棒という大型武器を操り、敵を一撃で粉砕する生粋のパワーファイター。

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