第6夜
文字数 1,648文字
そんなこと言ってる僕からして、ご存じの通りストーカーだ。ストーカーになる心理ってややこしいものがあるんだよ。
ありがちなストーカーの心理を教えてあげようか。
嫌がられれば嫌がられるほどムキになって追い回すのは、自分の中がまったくのカラッポだからなんだよ。全存在を否定された自分の中には、ポッカリと「
この厄介な虚ろは、自分につれなくする被害者に出会う前からあったのか?
場合によりけりだろうけど、たいていは出会いがきっかけで生じるんじゃないかな。重症になってくると健全だった時の自分を全否定することも辞さない。
ストーカーにすれば、追い回している被害者だけがこの虚ろを埋められる存在なわけだ。
頭に血が上った彼や彼女は、被害者に対して「愛してほしい」なんて言ってるんじゃない。言葉にするのは難しいけど、「せめて人間扱いしてくれ」っていう気持ちなのかな。まあ無理な相談だね。
普通の恋愛感情には程遠いし、末期状態になると被害者が好きなのか憎いのか怖いのかよく分からなくなってたりする。
要するにゾンビだ。「恋愛ゾンビ」とでも名付けようか。
あと要注意なのは、ストーカーの習性として、少しでも優しくすれば必ずそれ以上の物を欲しがる。だから 絶 対 に 気を許したり「ご褒美」を与えたりしてはいけない。少しの潤いが一層激しい渇きにつながるから、被害者は彼らの目が覚めるまで徹底的に突き放すしかない。
「お前はどうなんだ」って? 僕は……僕の愛は、そんなエゴイズムとは無縁……のつもりなんだけど。
何しろ僕の対象は文字通りの女神だ。座光寺君にとって元々は卑しい
……いや、むしろ女神だからこそ始末に負えないんだ! 欠点を併せ持つただの人間ならいずれ熱も冷めるけど、女神相手じゃ逃げ道がない。
不滅の女神である以上、僕の執着も不滅。当然だ。
もし彼が小指の第二関節に口づけすることを許してくれるなら、僕はその場で殺されたって構わない。いやむしろ殺されたい。そんなことを彼にお願いする権利が1ミリもないのは分かっているから、辛うじて自分を抑えてはいるんだけど。