Fortune-Fortune 序文
文字数 1,059文字
――果たしてそれは、幸運なのか悲運なのか?
かつて、『世界』の命運を賭 した争いが在った。
それは、生存を巡る争いという、ありふれたものだった。
勝利とは『世界』の無事な存続であり、敗北とは『世界』の荒廃と崩壊を意味した。
その闘争を制したのは、神。
『世界』の柱たるものとして、全てを見届ける役割を担 うもの――。
そう、『世界』は存続を約束されたのだ。
しかし。
約束されたのはそれだけではなかった。
非常な混乱と混沌も『世界』を待ち受けていたのである。
命運を賭した争いとは、命を賭すに能 う争いである。
辛くも勝利したものの、神は力尽き、永きに亘 る眠りを余儀なくされたからだ。
柱たるもの欠いた『世界』を見舞った混乱と混沌――
それは、しばしば『世界』の外側から持ち込まれ、『世界』の内側から育まれた。
『世界』は困惑する。神の如き真似も可能ではあるが、神に非 ざるものであれば。
不在の神を責める訳にはいかない。けれど、神の役割も担えない。
決断は迫っていた。
このまま呑まれるのか。
それとも、抗うのか。
そして、決断した。
可能性を好み、それをのみ追い求める『世界』の決断。それは――
それは――目には目、刃には刃、毒には毒、というものだった。
それは、異なる『界』より混沌を制し、混乱を鎮 することが能う可能性を導き入れること――
果たしてそれは幸運であろうか?
退屈な日常が、行き詰まりさえ見せていた生活が、突如として崩壊すること。
果たしてそれは悲運であろうか?
開けていた未来が、疑いもしない明日が、突如として変転すること。
答えは誰も持たない。
何故なら、誰も知らないからだ。
何が幸運で、何が悲運なのか。
それは――誰にも決められない。
或 る者は失意と共に朽ちることを選び、或る者は歓喜と共に駆け出し、或る者は嘆きと憎悪を以て混沌に準じ、また或る者は反発と理想を以て秩序の確立者となる事を選んだ。
勿 論、居る。何も選ぶことなく、ただ流されるままに漂う者も。
風の如く、水の如く、流されるが如く――しかし、確固たる足取りを以て彷徨 う者も。
『世界』が幾つの星を狩り、集めたのか、招き、導き入れたのか、知る者はいない。
そして、此処 にもまた一つ、星がある。
幸運であるのか、悲運であるのか、判別し兼ねる星が。
――そう、貴方である。
突如として、異世界で目覚めた貴方。
約束されたのは一つだけ。
自由である、ということ。
嘆くもよし、歓喜するもよし、恨むもよし、希望に燃えるもよし。
全ては、自由である。
それが幸運と称えられるべきなのか、悲運と忌まれるべきなのかは――
まだ、誰も、知らない。
かつて、『世界』の命運を
それは、生存を巡る争いという、ありふれたものだった。
勝利とは『世界』の無事な存続であり、敗北とは『世界』の荒廃と崩壊を意味した。
その闘争を制したのは、神。
『世界』の柱たるものとして、全てを見届ける役割を
そう、『世界』は存続を約束されたのだ。
しかし。
約束されたのはそれだけではなかった。
非常な混乱と混沌も『世界』を待ち受けていたのである。
命運を賭した争いとは、命を賭すに
辛くも勝利したものの、神は力尽き、永きに
柱たるもの欠いた『世界』を見舞った混乱と混沌――
それは、しばしば『世界』の外側から持ち込まれ、『世界』の内側から育まれた。
『世界』は困惑する。神の如き真似も可能ではあるが、神に
不在の神を責める訳にはいかない。けれど、神の役割も担えない。
決断は迫っていた。
このまま呑まれるのか。
それとも、抗うのか。
そして、決断した。
可能性を好み、それをのみ追い求める『世界』の決断。それは――
それは――目には目、刃には刃、毒には毒、というものだった。
それは、異なる『界』より混沌を制し、混乱を
果たしてそれは幸運であろうか?
退屈な日常が、行き詰まりさえ見せていた生活が、突如として崩壊すること。
果たしてそれは悲運であろうか?
開けていた未来が、疑いもしない明日が、突如として変転すること。
答えは誰も持たない。
何故なら、誰も知らないからだ。
何が幸運で、何が悲運なのか。
それは――誰にも決められない。
風の如く、水の如く、流されるが如く――しかし、確固たる足取りを以て
『世界』が幾つの星を狩り、集めたのか、招き、導き入れたのか、知る者はいない。
そして、
幸運であるのか、悲運であるのか、判別し兼ねる星が。
――そう、貴方である。
突如として、異世界で目覚めた貴方。
約束されたのは一つだけ。
自由である、ということ。
嘆くもよし、歓喜するもよし、恨むもよし、希望に燃えるもよし。
全ては、自由である。
それが幸運と称えられるべきなのか、悲運と忌まれるべきなのかは――
まだ、誰も、知らない。