阿久根駅のミーちゃん

文字数 1,531文字

 鹿児島県と熊本県にまたがる、第三セクターの肥薩おれんじ鉄道の沿線に、阿久根駅があります。
 ここには知る人ぞ知る、美人の三毛猫の、ミーちゃんが住んでいます。

 その阿久根駅構内にはかつて、「寝台特急なは号」の車両を使った宿泊施設がありました。
 廃止されたなは号の「デュエット」と「B寝台」の車両2両を使い、NPO法人が運営していたようです。
 
 そのなは号の車両のある阿久根駅周辺とか、駅の改札付近に、そのミーちゃんは住んでいました。

 その猫のことを、ネットで誰かがそう呼んでいたので、私もその仔のことをミーちゃんと呼ぶことにします。
 とても可愛くて賢そうな猫で、三毛猫というかサビ猫という感じの仔です。

 それは2014年の春。
 たまたまその寝台特急の宿泊施設に泊った私は、阿久根駅構内を散策中、そのミーちゃんと出会いました。

 首輪をつけているし、近くの飼い猫かなと思ったけれど、よくわかりません。
 近づいてみると、警戒というほどではないけれど、何となく距離を置いていたい様子だったので、少し距離を置いて、それからその仔の様子を眺めていました。

 阿久根駅は、都会の駅のようにどんどん列車が来るようなところではなく、一時間に一本とか、そんな感じです。
 しかもそこは無人駅に近い状態で、ホームへの出入りは自由です。
 ちなみにそのとき、阿久根駅は改装中でした。


 それで、ミーちゃんを見ていると、それから誰もいない駅のホームを歩いて、行ったり来たりしています。
 多分ホームを点検しているのでしょう。

 それが終わるとまたとことこと歩き始め、今度はなは号の車両の方へと向かい、車両の下へ入り、車両の下に付いている、いろんな機械なんかを見上げながら、またうろうろしています。
 多分今度は、車両の点検をしているのでしょう。

 二両とも一通り点検が終わると、今度は車両の下でごろんと寝そべりました。
 どうやらミーちゃんは、寝台特急の車両の下でお昼寝のようです。


 次の朝、私が起きてミーちゃんを捜すと、何と駅ホームの改札の台の上にきちんと座っていました。
 そして列車を降りて来た高校生ら一人一人に、頭をなでられていました。
 何とミーちゃんは、改札業務をやっていたのです!

 しかもそれが終わると、今度は故障した切符販売機の前へ移動し、棚にぴょんととび乗りまりました。
 今度はどうやら、切符の販売を始めたようです。

 とにかくミーちゃんはホームの点検、改札業務、切符の販売、車両の点検と、立派に猫駅員として活躍しているように見えました。


 そしてその数か月後、また私は、その寝台特急の宿泊施設に泊まりました。
 そのとき、阿久根駅はモダンな建物に変っていました。

 有名なデザイナーによるものらしく、ずいぶんお金がかかったような立派なものです。
 だけどその一方で、それから数か月後、寝台特急なは号の宿泊施設は、残念ながら閉鎖されることになります。
 
 全国的に、猫駅長とかブームみたいになっているし、ミーちゃんの凛々しい姿を見て、私はあの、和歌山電鐵貴志駅の「たま駅長」のことを思い出したくらいなので、たま駅長くらいに有名になってくれれば、より多くの人が訪れて、そして、寝台特急の宿泊施設だって…

  切符販売中のミーちゃん

  お休み中…




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