71. つららと放課後の魔法科学実験室

エピソード文字数 2,039文字


 仮想世界とはいえ、この世界の学校にも掃除当番は存在するのです。
 その日、私とヒカリさんは魔法科学の授業で使う実験室を掃除する当番になっていました。魔法科学とは、現実世界にはないような様々な効果を持った薬品を調合したり、薬品同士を混ぜてみたりする授業のことらしいです。
 らしいというのは、私とヒカリさんはその授業を受けたことがないので詳しくは知らないのです。
 選択科目というわけでもないのですが、死後一年目は受講できないのでしょうか。
 当番に任命された方は、私達の他にも三人います。ですが、どうやらサボりらしくやってきません。
 仕方なく私がせっせと箒で床を掃いていると
「見て見てつららちゃん! いろんな色の薬品があるよーっ!」
 ヒカリさんが壁側にある液体の入った瓶の並ぶ棚を前に、目を輝かせています。
「ヒカリさん、ちゃんと掃除をしてください。いつまでたっても終わりませんよ」
「だってぇ。目の前にこんなファンタジーめいたものがあったら、いじらずにはいられないよぉ」
「い、いじる気だったんですか!? ダメですよ、爆発するかもしれませんよ! 床を掃除するはずが教室ごと掃除しましたーなんてボケはやめてください!」
「あはは、爆発なんてしないって。漫画じゃないんだから」
 ヒカリさんのくせにまともなことを言いやがります。
「と、とにかく、遊んでないでちゃんと掃除をしてください!」
「……はーい」
 ヒカリさんが残念そうに棚から離れ、掃除用具入れに向かいます。
 そして、ちりとりを出してきて黒板の前に移動。片膝をつきます。
「……あ、あの、ヒカリさん?」
「なーに?」
「なーにじゃなくて……」
「ん?」
「何をしてるんですか?」
「ちりとり役は任せて! さあ、私のもとに集めたゴミを持ってくるんだよ!」
「ちりとり役って、座ってるだけじゃないですか。箒を使って掃除してください。そのあと雑巾がけもやるんですから」
「ええー、そこまでするのー?」
「そこまでするんです」
「他の人はそんなにやらないよーっ」
「他の人がどうこうじゃないんです。やるからには掃除だってきちんとこなしたいんです。それに、床をピカピカにした方が、次使う人も気持ちが良いはずです」
「それもそうだね。わかったよ。じゃあ私、頑張るよ!」
 ようやく箒を手に、まともに仕事をし始めます。
 そうしてゴミを集め終えたら、雑巾を専用のモップにセットして拭き掃除です。
「よーし、どっちがいっぱい床を拭けるか勝負しよう!」
 なんて、いつの間にかヒカリさんのテンションが上がっていて。
 あんなに面倒臭がっていたくせに、なんでも楽しみに変えちゃうんですから。
 やることやってくれるのなら、文句はありません。
「わかりました。負けませんよ?」
 私とヒカリさんは教室の隅に、対角線上に向かうような形で立ちます。そして、壁にかかった時計の秒針が「12」のところに来た瞬間、同時にスタート。それぞれ教室の端を磨いていきます。
 壁から壁まで何往復もし、中央の列に入ったのは同時。先に真ん中までたどり着いた方の勝ちです。
「うわっ」
 ヒカリさんはモップをテーブルの足にぶつけ、転倒しました。
 その隙に私はモップを教室の中央まで持って行き、
「私の勝ちです」
 うつ伏せになったまま動かないヒカリさんが心配になって、歩み寄ります。
「大丈夫ですか?」
「えへへ、転んじゃった♪」
 なぜだか嬉しそうに言って、顔を上げます。すると、私の着ている黒いゴスロリドレスのスカートの中に顔を突っ込んでしまって。
「あ、つららちゃん、白」
 私は勢い良くスカートを押さえ、モップの雑巾をヒカリさんの顔面に押し付けました。
「わわ、汚いよホコリまみれだよーっ!」
「ふざけてるからそうなるんです……!」
 ヒカリさんは床の上をゴロゴロと転がって、頭を机の足にゴツンとぶつけました。
 両手で頭をおさえ、ピクピクと震えるヒカリさん。
「……大丈夫ですか?」
「う、うん……」
 今度はちゃんと起き上がって、
「負けちゃったね。勝利のご褒美に、私が一つだけお願いを聞いてあげよーっ!」
 と楽しそうに言いました。
「そうですね。では……明日から毎日ちゃんと起きてください。二度寝しないでください」
「そ、それ以外で……」
「宿題は夜になる前に終わらせてください。夜中に終わってなくて泣きついたりしないでください」
「そ、それ以外で……」
「…………」
「つ、つららちゃん?」
「はあ。しょうがない人ですね。じゃあ今日の晩ごはんを用意してください」
「了解だよっ!」
 と張り切るヒカリさんでしたが。
 寮に戻るなり明日までの宿題をためていたことが発覚し、泣きながら机に向かう始末。結局、晩ごはんを用意するのは私でした。
 本当にヒカリさんはしょうがない人です。
 だけど、そこがヒカリさんの魅力なのかもしれません。

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登場人物紹介



名前:向日葵ヒカリ (主人公1)



性別:女



年齢:15歳



死因:事故死 (飛行機墜落)



体型:太ってはいないが太腿とかほどよく肉がついていてちょっとエロい感じ。身長155、胸は中程度、腰やおしりなどスタイルは結構良い



髪型:金髪のセミロングでサラサラ、通常時はペンギンの帽子も



服装:活発なので動きやすい服装。でも女の子なので可愛い服。脇とへそは見えるけど谷間は魅せない感じ。



備考:高等部F区画 1年3600組所属。超ポジティブ。行動力とコミュ力の塊。ちょっとおばかに見られがちだが礼儀正しくいい子。ドジ。努力家。いつも笑顔。庇護欲を感じさせる。影響を受けやすい。落ち着きが無い。心が綺麗。色気がある。強い意志を持っている。みんなを引っ張る存在。荷物はウインドウに出し入れできるのでカバン持ち歩く必要ないけどヒカリはペンギンのリュックで登校する。





名前:氷姫つらら



性別:女



年齢:13歳



死因:首吊り自殺



体型:貧乳、全体的に小柄で身長は145、眠そうな目



髪型:白銀(かなり白に近い感じ)、ロングのストレート、右側のサイドのみ編みこみ



服装:黒系のゴスロリ。全体的にふわふわしてるけどみるくと比較して甘さ控えめに



備考:クールだが人見知りなだけ。わりと恥ずかしがり屋。身体はちっちゃい。心の傷が深い。静音と百合華が少し苦手。ヒカリに受け入れられ死のトラウマを乗り越える。



ぬいぐるみ集めが大好きでややオタク気質。そのためか黒系の服を好みゴスロリファッションをしている。打ち解けてからはみるくの推薦を受け真逆の明るい甘ロリにもチャレンジ。口を抑える癖あり。わりと女子力ある。





名前:天ノ河みるく



性別:女



年齢:15歳



死因:心臓病



体型:とにかくちっちゃい。身長137。白い肌。つるぺたな胸。華奢。



髪型:明るいピンクのセミロング(やや長め)、ウェーブが強くかかっていてもふもふしている。通常時はツインテール、就寝時は髪を解く



服装:甘ロリ。ピンク系を好み、フリル、リボン、羽(出し消し自由)が特徴的な服をまとう。全キャラ中最も甘ったるい服装。



備考:明るい。元気。素直でなんでもすぐ信じる天使。素直故に毒を吐くこともあるけど悪気はない。寂しがり屋で負けず嫌い。ボケっぽくみえてツッコミ要員。リアルでは病弱だった。甘ロリファッション大好き。翼とフリルをまとった姿はまさに天使そのもの。どう見ても幼女なロリ。現実では病弱だったので、自由に動ける死後世界を誰よりも満喫している。だが一方で残してしまった両親のことを気にしていて、幼くしてこの世界に来てしまった子どもたちのために奉仕をしている。小さいのを気にしていて、つららにはお姉ちゃんぶる。スイーツ全般が大好き。





名前:雪桜 百合華



性別:女



年齢:17歳



死因:圧死(鉄骨が降ってきた)



体型:身長163。巨乳。スタイルが良い。



髪型:濃い紫、ツインテール



服装:ロリパンク+ヘッドホン+シュシュ(露出やや多め)



備考:気さくな喋り方をする。マイペースで軽いが実は周りをよく見ている。静音の親友で彼女のことを心配している。スタイル抜群。ヒカリのことを姫ちん、他はつららっち、みーちん、しずちんと呼ぶ。女の子をエスコートするのがうまい。



孤児院育ちで、将来の夢はバンドで金稼いで孤児院を大きくすることだった。面倒見いいからか寂しそうな静音を放っておけず彼女のツンツンにもめげずにしつこくつきまとい心を開いた。とんこつラーメンとロックが好き。運動神経は高いが何か一つのスポーツにこだわるということはない。静音が殺された際、助けられなかったことを非常に悔やんでいた。だから死後の世界で再会出来たことを非常に喜んでいて、今度こそ静音を護ってみせると誓っているが、言葉には出さない。





名前:水無月静音



性別:女



年齢:16歳



死因:刺殺



体型:吊り目だが困り眉。身長160。胸は中の上。



髪型:黒のロング、ストレート



服装:普段は制服をきっちりと着る。私服は肩を出しているという以外はきっちりとしたラフだが派手さのない服装。露出控えめだが、寝間着は少し露出増やして大胆に。スカートよりパンツ。自分の体がエロいということを欠片も理解していない。



備考:不良から女の子を助けて刺された、正義感の塊。死後の仮想世界をよく思ってない。真面目。運動神経抜群。スタイルもよくイケボ。女の子にモテるタイプ。実は可愛いもの大好きで恥ずかしがり屋。仕切り屋に見えていじられ体質?



私服ではスカートを履かないが本当は可愛い格好がしたい複雑な乙女心。両親は教師。





名前:スフレ・チョコラテシュガー



性別:女



年齢:17歳



体型:身長は155だが厚底のブーツで高く見せている。胸は中程度。



髪型:水色のセミロング。サイドが犬耳みたいになっている。



服装:ポップで黄色系。奇抜ファッションタイプ。



備考:女の子にモテまくりで親衛隊までいる。満更でもなくガチ百合。面倒見のいい先輩。ポップ系アバターブランド《キャンディゴブリン》を立ち上げた。派手さは個性!イギリス人。





名前:春風カフィ



性別:女



年齢:一万超え



体型:おっとり系巨乳お姉さん。タレ目。



髪型:薄い茶色でウェーブがかったロングヘアーを大きめのリボンでポニテにしている。



服装:ケープ、ロングスカート、ブーツ



備考:《ホワイトメイオール》の管理人。ゆるく見えていろいろ考えてはいる。



《ホワイトメイオール》において唯一の生者だが既に生身は存在しない。はるか昔、母星の消滅を前に三人の仲間と共に宇宙へと飛び出した。多くの星や生命体に触れていく中、ある結論に達する。



すべての知的生命体が平等に楽しく暮らし続けるには仮想世界を使えばいいのだ、と。



たとえ宇宙が崩壊しても世界が壊れないよう、彼女らは別の空間に仮想世界を築く。そして東西南北の銀河を各々で担当し、そこに住まう悪人以外の知的生命体が死後自分の管理する世界で再生されるよう、宇宙の仕組みを作り変えた。いわゆるロリ巨乳タイプです。



名前:黒井アゲハ



性別:女



年齢:13



死因:入水自殺



体型:胸は小さいが無ではない。身長143。ドSっぽい目つき。牙。



髪型:黒髪ロングで毛先が広がっている。猫耳。



服装:黒い軍帽と軍服、ジャケットは前全開で胸だけを隠した露出度の高いもの。同色のミニスカ(かなり際どい短さ)、ブーツ。白い手袋。



備考:つららを自殺に追い込んだイジメグループのリーダー。生前はお嬢様で、そのため取り巻きがたくさんいたが、見限られるのが怖くて強がっていた。実は同じ勇者ペンギン好きであるつららと仲良くなりたかっただけ。だが、取り巻きの前では根暗扱いされていたつららと普通に接することが出来なかった。つららを死なせてしまった後悔と罪悪感から後追い自殺をしている。自分がどうすれば可愛く見えるかを理解していて、とにかくあざとい。見栄っ張り。煽り耐性皆無。ヒカリ、過去を乗り越えたつららの両者と関わることで勇気を持ち始める。



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