【戯曲】闇の左手(ル=グウィン原作/オリジナル訳に基づく二人芝居)
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文字数 292文字
この星に来る前、僕は、真実を語る方法を一つしか知らなかった。
率直に、誠実に、語ればいいと思っていた。
だが、セレム・ハース・レム・イル・エストラヴェンに出会って、僕は知った──
ある種の真実は、沈黙によってしか語れず、
さらにある種の真実は、物語によってしか語り得ないのだと。
エストラヴェンは僕の隣、ほんの50センチのところにいた。
僕は、手をのばして、その手にふれようとした。
そのとき僕は初めて、いまだかつてゲセン人の誰一人として、手袋をはめない素手の手を、さわらせてくれたことがないと気がついた。
もしも、僕が、君の手を握っていたら、どうなっていたのだろう?
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ゲンリー・アイ地球出身。惑星同盟《エキュメン》の特使。惑星《冬》ことゲセンに単身降り立ち、カーハイド帝国の皇帝に開国をうながす。長身。性格は誠実で直情的。推定される容貌はアフリカ系。男性。
セレム・ハース・レム・イル・エストラヴェン