キガン
文字数 377文字
亡くなった方々が彼方で幸せでいられるよう、わたしたち若い女が集まり祈願をしている。真夏の夜、轟々と燃えあがる炎のまわりに輪となって、わたしたちは廻りつづける。経典の一部から抜いた言葉を歌うように諳んじて、手に持った鈴を鳴らす。足の下には刃を上に向けた剣が並んでいる。そこをわたしたちは歩むのだ。あらかじめ口にした雌獅子の乳酒のせいか、怖くはない。廻りめぐるうちに、アア、と短く声を上げてまた一人女が倒れた。刃物の上に倒れても誰も気にせず、その女を踏みさえする。ぱたりぱたり、至るところで倒れる者が出る。しかし輪の人数は減らない。祈りたい女は世に溢れるほどいるのだから。わたしたちの祈願は夜が明けたら終るのだが、どれだけ経文を諳んじまた鈴を鳴らしても、濃密な闇の空にはまったく白む気配がない。いつまでも続く、死者への貢献。それは女にとり大きな悦びだった。
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