1 『リグ・ヴェーダ』
文字数 2,185文字
ご存じのとおり、うちの宗派は浄土真宗で、いわゆる住職なんてものをやっちゃってるんですがね、私。
じつは仏教についてあまり詳しくないんです。
四十路も過ぎて、いいかげんちゃんと学び直そうかしら、なんて思ってるんですよ
ところが、ですよ。
いきなり冒頭のバラモン教のところでドロップアウトしたわけです。
やれアートマンとか、ブラフマンとか、
アートマンはブラフマンだとか、梵我一如とか、何を言ってるのかサッパリ・・・・・・
意味わから~ん
冷たい(笑)
あのね、乱読派のぼくはいろんなジャンルに首つっこんでるじゃない。
だったら逆にそれを活かしてね、このよくわからない曖昧模糊としたインド思想の霧の中に、多面的なアプローチでね、切り込んでみることもできなくはないよ。
それにさ、ぼくなんか所詮は学者じゃないから、学術的な厳密性に縛られず、なんていうの、バッサリと、できるだけわかりやすく解釈してみる、なんてこともできると思うけど・・・・・・
まずは世界史の復習からだな。
おおよそ紀元前1500年頃、インド西北部へアーリア人が入植してくる。
ちなみに、昔ぼくが高校生だった頃はね、このアーリア人が当時インドで栄えていたインダス文明を破壊した、って教えられたんだけど、最近の定説はそうじゃない。
アーリア人が来た頃にはもう、すでにインダス文明は衰退していたらしいね
違うみたいだね。
さて、このアーリア人だけど、神々への祭祀を行っていた。
どう? 原初的な宗教の匂いを感じるでしょ?
ちなみに、インダス文明における宗教生活については、今のところよくわかってないらしい。神官らしき石彫りの像その他いろいろと発掘はされてるんだけどね
この神々への祭祀だが、当然といえば当然のごとく、時代の流れとともにマニュアル化してくる。
で、まずは前1000年頃までにね、讃歌集『リグ・ヴェーダ』がまとまってくる。
ちなみに、リグは「讃歌」、ヴェーダは「知識」の意
[サラスヴァティという河の神への歌]
奔湍と滋養とをもって、このサラスヴァティは流れいでたり、(敵に対する)要害として、金属の防壁として。車道によるがごとく、大河は(その)威力により、他のあらゆる水流を(後に)推しやり進む。
・・・・・・(中略)・・・・・・
サラスヴァティよ、天則(賛歌)の両扉を開けり、恵み深き(神)よ、賛美者に増し与えよ、勝利の賞を授けよ。――汝ら神々は常に祝福もてわれらを守れ。
いや、単に自然力の神格化だけではなしに、宇宙的秩序を司る神もでてくるよ。人気どころでいうとヴァルナ神とか。
あるいは、契約を司る神(ミトラ)もいたりと、う~ん、わりとバラエティーに富んでるよ。
また、いちいち引用しないけれど、宇宙(世界)創造にまつわる歌、なんてのもある
のちのヒンドゥー教では超メジャーになってくるヴィシュヌとシヴァなんだが、『リグ・ヴェーダ』ではむしろマイナー。
ヴィシュヌの賛歌はあるにはあるが、数が少なく、シヴァについてはむしろその前身ともいえる暴風の神ルドラがでてくる程度
[参考文献]
・『リグ・ヴェーダ讃歌』辻直四郎訳、岩波文庫、1970
・山下博司『古代インドの思想』ちくま新書、2014