第4話 「ホームボタン代替先は、6日の誕生石」

文字数 5,528文字

作者追記:ホームボタンが無くなるとトリプルクリックは自動でトップボタン(電源スイッチ)に切り替わります
Face ID が ホームボタンを駆逐する!
ありゃりゃあ〜?

昨日せっかくトリプルクリックに設定したショートカットが無駄になっちゃうんすカ?

(第3話参照)

そんなこたあねェぜ
そーは言っても…新型はホームボタンなくなっちゃうんすよね?

いくらなんでも

物理無しじゃ

無理プッシュ♪

ハハハ、それは…


もうすぐわかるぜ♪

こっちはコッチでなんとかするさ…
はぁ…。

iPadも…ホームボタンがFace IDに取って代わるのはiPhone Xが出た頃から予想されていた

俺はかねてよりホームボタンに頼らない色反転の術を特訓してーー
あー、話の腰折るっすけど

そもそも何でするんすか?

色反転

んえ“ッ?
えと…っ

もちろん小林なりに調べたんすよ?

でも先輩は__

色覚異常とか

色覚異常とか

色覚異常じゃ

ないっすよね?
お♪

ミドリおめえ見ずれぇんだな

けど、ちゃんと読めてるぜっ

ん〜、なんつーのかな?

色がわかんねってんじゃなくて、光が眩しいんだな。俺は…

コレが視力弱い人向けのものでもあったってこと

小林が教えてくれるまで考えもしなかったぜ

////////////
色反転は、ツイッターや地図アプリの夜間モードでお馴染みだし

執筆に限ったもんじゃねえと思うが…


小林気づかなかったのか?

あー。言われてみれば

夜目の感度を慣らしたり狂わされたりするのは立派なフラグなのに小林盲点っした〜♪

(おめえがiPad執筆奥義とか抜かすから空気読んだんダイ!)

そういう訳で色反転は物理ボタンが無くなったからって切り捨てるには惜しいショートカットなんだ


こんどはどうするんすか?

クッソどうでもいい)

出よ★

AssistiveTouch!

お〜♪

(キャラ立ってきたー(棒

画面上にショートカットを作る魔法だ

時折アイコンに被さったりして見づらかったり操作の邪魔になったりもするが


ワンタッチで色反転できるようになるのはメリットだ

(……魔法♪)ッな!なんという事じゃ

コヤツ、トリプルクリックのたった三分の一の詠唱世界色をひっくり返しおった!

ありえん!  こんなデタラメな…ッ!

……っへ。


こんなス魔法どこの文献にもなかったろ…だがな、

まだ驚くには早ぇぜ

大魔導士

コバヤッシェル!

んな、

なにを!?

俺はさっきのと同じ工程に一触れ加えるだけで!

ホーム帰還!

スクリーンショット!

siri召喚!

サイレントミュート!

オートウィスパー!

その他モロモロの特殊詠唱を発動できる!

認めん、認めんぞおおお!

貴様のような若造が、、、

禁断果実の継承者である筈がッ⁉︎

。。。
。。。
詳しいやり方は

Appleに聞くなり

AssistiveTouchググれ

わ〜あ”。

(取説として媒体的に敵わないと見るや外部サイトに丸投げしたあああ!)

やっぱ…小林は

こういうノリの方が

いい顔すんのなッ

(えッ…。。)

(/////////////はうぁぅぁぅぁぅぁぅっxxx)


えと、その、もしかして__

うわッ!わかったゾ!

先輩が書いてる小説は…っ

異世界転生ものだなああああッ!

!!?
あ“……
んな!

なぜ解ったッ

やぁ…そのお、話の流れ的に?

洞察力った小林の推察力でえ…

(アレ?踏んじゃった?

照れ隠れした先は__


地雷原⁉︎)

恐れ入ったぜ小林…

バレないようにずっと書いてきたつもりだったんだがな…

あのぉ…先輩。

小林が訪ねても

「あぁ。小説」

とだけ答えて頑なに見せずにiPadカチャカチャってたっすけど、それ…


小説なんすか?

なん…だと?
“小説”

と言うからからには

もっとこう…硬派なもの執筆してるイメイジあったんすけど

異世界転生モノって…

ラノベっすよね?
あぁ…そうだが

ラノベだが…えッ


小説じゃねえの?

n〜っっ。
ヤッ!

だってよ!

ライトノベルなんだぜ⁉︎

まんま小説じゃねえかッ‼︎

具体的にどう違うかと言われると…

わからないっすけどぉ〜。

小林小説読まなっし〜__

ふぁッ!?

小林おめぇ!

新規アニメ流れるたびに

「あ、これラノベ上がりっすね〜」

とかドヤってたじゃねえかッ!

いやいやいやいやッ!

原作知らなくたってわかるっしょ?あんなっ

テンプラ盛ら盛ら盛られたらッ…!

あ“〜〜

胃がモタれるってか…

そういわれてみっと解らなくもねえが…

なんだ小林

言う割には読んだことねえのかよ…

聞きてえことあったのによ〜

///////♪

ナンスカなんすかッ?

これでも小林、先輩よりは…

”多少“は詳しいと思うっすYO♪

おおッ!

そうなのか⁉︎

知り合いに書いてるヤツいるんすよ!(読んだ事ネーけどなッ)

船乗ったつもりで

バッチコーイ!

じゃあ、聞くがよ…
うん。うん…。
小説って…

“どこまでが”小説

なんだ?

(イキナリ難問きたあああ!時間稼げえ〜‼︎)

……どうして先輩は小説の定義?を気にするんスカ?

ああ…

俺は“小説を”

書きたいんだ

うん。
そんで、本格的にやってみたくて

作業環境をメモ帳から小説アプリに移行させたんだ

うんッうんッ
したらどうも、

4万字超えてるらしくてよ

わぉ♪

頑張ってるじゃないっすか!

(4万…4マンって…どないなモンマン?

フリーザ編のギュニュー特戦隊クラスか?

だいぶ長くなっちまったけど

これって、まだ……


“小説”って言えんのか?

っぇ”?
ほらよ、上巻下巻ってあるよな?

このまま書き綴って

“中説”とか“大説”になっちまったらどうすっかなって

俺が書きたいのは小説なんだっつーの

あ?、あ”〜。。


(う“わ!“多少”どころじゃ済まなかったあああ!?斜め下過ぎて用意が無ぇよッ)

それはっすね__


(いや、待て小林。

さっすがの先輩もギャグだろコレ?でも…

万が一にもプライドを傷つけかねない。  ここは一つ事実に基づいたマヂレスだ!)

大丈夫っすよ、せ〜んぱい♪

10巻以上続いてる小説だってあるし(見覚えが)

漫画と同じで10年以上続いてたり休載してる小説だってあるっす!(たぶん)

おお小林!

そうなのか小林ッ

そっすよ小林!

100巻とか30年は連載しないと小説の域は出ねっす!

(うおっしゃ墓穴も掘った〜!  これなら他人から突っ込まれてもダイッジョーブ! 小林も一緒に埋まってあげるネ♪パーペキ!)
っふぃ〜、

一安心だぜ

これでアリスに見せられる。

んあ?

アリスがなんだって?

俺は

アリスに小説を見せる

ええ〜と…#

アリスさんが

先輩の。

小説を。

読みたいって、


いったんすか?

んや?
ん“え?
アリスのヤツがよぉ〜

あのナリで小説読んだことねえってのが?

周りから思われてるようで気にしてるみてえでよお


なんかおススメ無いかって

聞かれたんだ

っへ〜

あのアリスさんが〜っ


(なんでコイツに聞いた)

n”で?

っで、だから


俺が書いてや__
ストおおおっぷ!

ちょとマテイッ!

なにかがおかしい…
何もかもがオカシイッ!


なんでそうなんだ斎藤ッ!

え…? いやぁ、だってよ〜

アリスに勧めるにしても

俺小説知らねえし…


だぁら自分で__

書かねえよッ!

書くワキャねえだろ?

アリスさんみたいな人が好む小説Q&Aコーナーで聞いてみろよ!ググれよカス!得意だろ!そういうの!

あー、その手があったか

だがな小林。

そんな事はもうどうだっていいんだ…

n〜だトォ〜ッ?
アリスが本を読んだ事がないというなら


それは読書における処女__

書女……しょ…


              ……っ!?

謂わば、読処女だ!
読処…

じょ…っ!!

為れば当然___
筆下ろし

我が処女作にて

膜契ベシ!!

ウ”

あ“

‼︎!

どうだ小林。

恐れ入ったか?

はぁ、はぁ…はぁ、はぁ……っ

冗談と、思いたいっすけど…

せんぱい…、たまに、そういうこと…平気でやっちゃうっスよね?

ん?
ほらぁ、

ちょっと前にもあったっしょう


前って…

なんの話だ?

ほらあ、あのぉ…なんだっけ?

そうだ、

アリスさんが指輪欲しそうにしてた〜とかいって

なんか知らんけど金属加工の技術習得に町工場いってたじゃないっすかッ

ああッ

ソレナ!

色々と考えあぐねた末…

金属の棒を

力づくでアリスの指に

巻きつける事にしたッ!

もうツッコム気力きねえヨ…。


(ああ…なんだろう?)

それでよお、金属って急激に曲げると結構熱くなんのな!

アリスさんの指がヒシャゲようと小林構わないっすけど…

傷害事件にだけはしないでくっさいね♪


(こういうの…なんつったっけ?)
だがよ小林

俺の気持ちを伝えるには

それ以外のシチュエーション考えられねんだ

(そうだ…エゴだ、エゴイストだよ…。でもあれレぇ?__

これからどんどん冷え込んでくるしよッ

(物騒というか、もっと野蛮な言葉の筈なんだけどぉ…。なんでだろうな〜__

指の先から暖っためてやりてえじゃんか!
そう…ダネ


(コイツ見てると違う、全く別の響きに感じられるんだョ…__

そうだ小林!

おめぇさ、練習台なってくれよ!

アリス指輪のッ!

っへ! 小林が!?


(__あれ?なんだっけ?

こんな事頼める相手…他に誰がいるってんだッ!

見れば小林の指……アリスのみてえに細ぇやスゲエ!

短けぇけど丁度いーわコレッ

んな?  どうよ?

ちょっと……考えさせ__


(なんつー石だっけ…__
おお!やったぜ小林サンクスな!
(__そうだ)


先輩…わ…あの

何月産まれな__

うあッ!
かッ!?
ん〜…


なんだ、そんな事か

そんな昔のこと俺が憶えてるわけねぇだろ

ッハぁ…
あ〜、でもそういや

なんかけっこう寒かった気がすッシ…


2月頃じゃね?

おまえさぁあ?

誕生日もすぐ出てこないなんて…

今までどーやって生きてきたんだよ


(2月…そうだ、

アメジストだ__)

(__この響きに似てるんだ……先輩は)


…今日は、何日したっけ?

うあッ!
またかよ!
ん〜っ


たしか、まだ六日……?

__なら構わねえか

なんだよまだって…

今日の日付くらいハッキリしろってんだ

大事なこと決めらんないじゃん…

だ…だいじ…なこと?
今日わね…


エゴジストの日なんすよ♪

なんだそりゃ?

イミワカンねー

誕生石っス♪


小林決めたっス!

った、たんじょー…


せき?

あ〜


スッキリした

ふぁあ、小林、もう眠くなってきやした…
そうだな…

もうそろそろいいか。

いや〜。

ヒヤヒヤしたぜ。

小林からそれっぽい単語出まくるから、バレちまってんじゃねえかってよッ

んな…


ま〜たナニか下らねえこと企んでるんじゃないっしょーね?

ぐっふふふ〜


まぁだ気付かねぇのか小林〜


今日はなんたって小林の__

__斎藤の言葉を遮るように

古時計の鐘を模した音が

スマフォの簡素なスピーカーから鳴り響く

お、キタキタ♪
あれ、せんぱい?
スマフォの音に気をとられているうちに

斎藤は姿を消していた


程なくして部屋の照明は落とされ

スマフォも鳴き止んだ


小林は

静寂と暗闇に包まれる

せん……パイ?
廊下の角から

ユラユラと

いくつかの灯れ火が近づいてくる


産まれた時の事を憶えてなくとも

小林は思い出す


今日がなんの日だったのか


スマフォは再び鳴き出した

ちゃちな音で

高音域の音色が割れることもあるけれど

小林には

聞き間違いようのないメロディだ


イベント用に細工され

“to you”の歌詞が意図的に抜かれている

そこに

男の声が小林の名で埋めていく


いつもなら

なんて音痴なんだと

悪態の一つでもつけようものだが


そんな粗末な旋律にも

小林の鼓動は全力セッションしているようで

喉から息が詰まっていた……

Happy Birthday!

小林!

パッと

部屋に明かりが戻った


斎藤の両手に持たれたホール状のケーキが

彩る

どぅよ小林!


小林好きだったよな?

シェル口バーヴェン!


第6層まで作り込んであるんだ…

わかんだろ?

うまそ〜


メイドイン・アビス!


あ、いっちった。

あとコレ

プレゼント!

斎藤は小林にiPadを手渡した


ラッピングもされてない

10.5型の

角には細かい傷も入った

今日にも型落ちとなるiPadだ


初期化処理と急速充電を同時に行ったせいで

やや熱を帯びていたが


小林は

そんなこと解らないくらい

火照っていた

白紙にしちまったから

昨日教えた設定全部消えちまってるけど


やり方は覚えてんだろ?

 
小林は覚えていた

三度押せば

色がひっくり返るiPadのホームボタン

視線をやったその周りは

ステンレススチールのリングで囲われていた


脳の無酸素運動の果てに

銀にボヤける

あー

その前に指紋登録からだなッ

でもその前にケーキしようぜ!

男の声に

ボタンに吸い込まれそうになる指を留める


小林の脳裏を過るのは


いつ知ったか…

どこで読んだのかも思い出せない

たわい無いけど

ちょっといい話


どこか遠く

海の向こうの結婚式で

ツガイ所縁のiPhoneからホームボタンを抜き取って

そのリング状の導電性センサーを加工し

愛を籠めたカップルがいたという


元々センサーは

指平を通電させ

指紋が置かれたれた事を感知するためものだから

万人の指平でも余るように造られていて

そのまま通して填めるには

小林小指でもキツキツだ


こりゃムリだろうという諦めが

笑窪となって漏れるが

この男なら

あるいはと


夢想する

小林には

いつも世話なってっからな!

ホント…

ありがとな。
どんなに堪えても

堪え切れない


たじろぐまいと

全身を張り詰めさせた筋繊維も

屈託のない笑みと響きの前では

スルリと絹のように解けてしまうのだ


もう保たないと

小林は席を立つ

おっ

小林ウンコか?

も少し経ったら俺のも出そうだ!

シュッシュ忘れんなよッ!

バカッ!
叫びだった


鳴かずに吐くには他にない


鍵を閉め

小林は拭った

堪えて堪えて堪え切れなくなったものを

声を殺して出し切った


小林は思う

あの胸に飛び込めるのが

どうして小林でないのかを

この想いをあの頬に擦寄せ

つ滴らせることが叶わぬのは何故なのかを


小林は

不平不満を混走させ

総てに諦めがついた手を

水洗レバーに掛ける


そして__


 

__溜息と共に下水へ流した


成人したての

一番搾り……。

おーい小林!

聞こえてねーぞ〜

シュッシュしとけー

知ってんダロ!

小林のは薄いって!


少しくらい我慢しやがれ♪

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登場人物紹介

見た目は子供

中身はシュウトメ


ハタチ独身クソ美ッチ!


晩年片想いのあの人に…

ついつい意地ワルを説戒♪

特に思い入れ無い

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