『夏に吹く風』について

文字数 1,459文字

さて、なぜ私がフラれたのかというと、ヤマダさんが本当に存在していたからだ。

オワリとヤマダは本当に両思いだったのだ。

二人は同じ部活だったし、オワリとヤマダは仲が良かった。

ヤマダも同じクラスで、二人の仲が良いのは知っていたが特に気にしていなかった。

まあ、好きじゃなかったからだと思う。

どちらかというと、二人になるために朝早く、体育館でなく教室へ行ってたのは、ヤマダでなく私だ。
それは全く偶然だが、オワリも私も朝イチで教室にいるタイプだったのだ。

そんなある朝、私が教室に入ろうとすると、ヤマダが泣きながら教室から飛び出してきた。
こんなドラマみたいなシチュエーションとタイミングがあるかというくらいぴったりドアのところで鉢合わせし、私が教室に入るとオワリが1人でいた。
ヤマダはオワリに振られたんだと思った。その次の日くらいに、オワリは私に手紙を渡し、ヤマダに乗り換えたのだ。

なので、「好きな人がいる」とフラれたということに加え、「その人も自分のことを好きだと言っている」とまで伝えられ、私はフラれたのだ。

完敗だ。

オワリが実際に何を思ってそこまで徹底的に私にダメージを与えたのかはわからないが、その辺の残酷さを、『夏のとなりで』で、私は美しいものに変換したな…と自負している。


その後、フラれた私のことはたぶん知らずに、ヤマダはオワリといっしょにいてウキウキしていた。

私は、やり場のないエネルギーを勉強に向けた。

おかげで、数学で満点をとらせていただいたが、それがオワリに響いたかといえば、響いていないであろう。
一人相撲だ。

実在・ヤマダは、キャラクター・ヤマダとは違って、けっこう明るい女の子だった。

その後私は気づけばヤマダと同じ大学に進学していた。
けれど、3年にはオワリのことを何とも思っていなかったし、もうすでにその時点で抹消したい思い出だったので、ヤマダが同じ大学でも何とも思わなかった。

たまたま同じ研究室のメンバーと一緒に過去の話をしている時、『一瞬付き合うことになった人はいたけどヤマダに取られた』というような話をしたら、え?あのコに?何で?と、みんながびっくりしていた。

ヤマダはいつオワリと別れたのか知らないが、大学に入ってもっとモテそうな体育会系男子と付き合い始めていたのだ。
それも、なぜ?とみんなが思っていたくらい、ヤマダは謎にモテるというか、アピール勝ちする女子だったのだ。

そんなわけで、一応モデルとなる存在はいたものの、『夏に吹く風』のヤマダは実在の人物とは異なる。

実在するヤマダに関しては本来なら憎い相手のはずなのだが、私はオワリのことを好きじゃなかったので別に憎くもないし、なんか話が美しくまとまる材料になってくれて良かったな、と今は思う。

私はけっこう、自分が生み出したヤマダが好きだ。
なんか、地味だけど自分の人生を良い方へ持っていこうとするガッツが好きだ。
名づけて、『ガッツ・ヤマダ』

実在のヤマダがいなければ、キャラクターのヤマダは生まれなかった。

なぜあんな恋愛ごっこが私の人生に起こったのか?あの時間は必要だったのか?とずっと思っていたが、夏シリーズの最初の4話で私の消化しきれていなかったものが役立った。

…なぜ起こったって、私が告白したから起こったとしか言い様がないが、全く好きでない相手に告白するなんて、本当にどうかしている。

しかし、今なら言える。
サンキューオワリ!
サンキューヤマダ!

だけどやっぱり、私のことはどうか記憶から消してくださいと本気で願っている。

何度も言うが、好きじゃなかったんだから。
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