第72話
文字数 852文字
教室の窓から見える真っ青な空。真四角に切り取られた鮮やかなブルーに、気持ちは吸い込まれて、身体は抜け殻みたい。
先生が念仏みたいに唱えている物理の公式なんて、頭にはいってこない。路頭に迷ったあと、耳のなかに反響して消えていくだけ。
ここ最近、遊さんのことばかり考えてしまっている。これではいけない。考えまい、とすると今度は考えちゃいけない、ということに気を取られてしまう。
それもこれも大胆にも遊さんの耳たぶを噛んでしまう、なんてことをしでかしてしまったから。遊さんはその事に一切触れてこないから、余計モヤモヤしてしまう。けれどこちらから言い出すキッカケもない。
私にしたら一大事。だけど遊さんにしてみたら、全然大したことじゃないのかな。その差にほんの少し切なくなる。それでもここ1ヶ月遊さんとLINEでのやり取りは続いている。1日に1回くらい。
大学からの帰り道で子猫に挨拶されたけれど、そのこがどこか私に似ていた、とか。そんなたわいもない、でもどこか優しいメッセージが、夜中にそっと届く。遊さんは何の気なしに書いているのかもしれない。けれどそれらがどれだけ私をときめかせているか、わかっていないと思う。
そんな事を考えていると、時間はあっという間にたってしまう。勉強への集中力が落ちているのは自分でもよくわかっている。朝のホームルームで、前に受けた模試の結果が返ってきた。初めて浪人生も含まれて行われた模試にしても、酷い結果だった。
第1志望 D判定。
こんな成績なんか今まで取ったことがない。はあ、とため息をつくと、席の前に誰かが立つ気配がして、ゆっくり顔をあげる。陸だった。
「真琴、模試どうだった?」
思わず瞳を見開く。教室でこんなに堂々と、名前で呼んでくることも、模試の結果を聞いてくることも、今までなかったから。しかもいつも浮かべている柔和な笑みはなくて。代わりにあまり見た事のない、男子特有の淡々とした表情で、私を見ている。周りにいる女の子たちの視線が、背中にいくつか刺さるのを感じた。
先生が念仏みたいに唱えている物理の公式なんて、頭にはいってこない。路頭に迷ったあと、耳のなかに反響して消えていくだけ。
ここ最近、遊さんのことばかり考えてしまっている。これではいけない。考えまい、とすると今度は考えちゃいけない、ということに気を取られてしまう。
それもこれも大胆にも遊さんの耳たぶを噛んでしまう、なんてことをしでかしてしまったから。遊さんはその事に一切触れてこないから、余計モヤモヤしてしまう。けれどこちらから言い出すキッカケもない。
私にしたら一大事。だけど遊さんにしてみたら、全然大したことじゃないのかな。その差にほんの少し切なくなる。それでもここ1ヶ月遊さんとLINEでのやり取りは続いている。1日に1回くらい。
大学からの帰り道で子猫に挨拶されたけれど、そのこがどこか私に似ていた、とか。そんなたわいもない、でもどこか優しいメッセージが、夜中にそっと届く。遊さんは何の気なしに書いているのかもしれない。けれどそれらがどれだけ私をときめかせているか、わかっていないと思う。
そんな事を考えていると、時間はあっという間にたってしまう。勉強への集中力が落ちているのは自分でもよくわかっている。朝のホームルームで、前に受けた模試の結果が返ってきた。初めて浪人生も含まれて行われた模試にしても、酷い結果だった。
第1志望 D判定。
こんな成績なんか今まで取ったことがない。はあ、とため息をつくと、席の前に誰かが立つ気配がして、ゆっくり顔をあげる。陸だった。
「真琴、模試どうだった?」
思わず瞳を見開く。教室でこんなに堂々と、名前で呼んでくることも、模試の結果を聞いてくることも、今までなかったから。しかもいつも浮かべている柔和な笑みはなくて。代わりにあまり見た事のない、男子特有の淡々とした表情で、私を見ている。周りにいる女の子たちの視線が、背中にいくつか刺さるのを感じた。