『灰と幻想のグリムガル』level.1 ささやき、詠唱、祈り、目覚めよ
文字数 1,737文字
ささやき、詠唱、祈り、目覚めよ/十文字青
タイトルであれ? どっかで? と思った方、正解です。
アニメで放送していたやつ?(正解!)
ベニー松山さんの本? (そう、それも正解!)
実は私もアニメのタイトルを見て、ベニー松山氏の小説を思い出したのです。 『小説ウィザードリィ 隣り合わせの灰と青春』てやつですね。
何しろ、アニメの第一話のタイトルと小説の第一巻のサブタイトルが「 ささやき、詠唱、祈り、目覚めよ」ですからね・・・。
※ご存じないかたごめんなさい。この言葉、ウィザードリィというゲームで死んじゃったキャラの蘇生や治療を頼んだ時に表示されるメッセージとそっくりなのです。ベニー松山さんのもウィザードリィの小説ですから、こりゃ、狙ってるなあと思うわけですね。
ちなみに、ベニーさんの小説『隣り合わせの灰と青春』での「灰」と言えば(タバコの灰だって話もありましたけど)、死亡キャラを生き返らせようとして失敗して「灰」になる、かなりヤバい状況を指します。ゲームのノベライズだというのにギャグなしの超シリアスだった、かの名作のキーワードをこれまたタイトルに挿し込んでいることで、著者の意気込みというか、「シリアスに行きますよー」というメッセージを感じます。
これ、オマージュなのかなあ。パロディのつもりでそれっぽいワードをつなげただけだったらヤダなー。なんて最初思いながら、今時珍しい超スロースタートのアニメを観ていました。
何しろ異世界モノ、というか、イマドキのラノベにつきものの主人公が超有利だったり特殊な血筋や能力を持っていたりとかいう設定はまったく無く、どうやらこの世界に送り込まれた人間たちの中でも最底辺の、ごくごく普通な一般人レベルのスキルで、かつどちらかというと引っ込み思案の主人公が、いきなりの異世界に戸惑いながら、なんとか「生きる」術を身に着けていく。という、まったくもってキャッチ―じゃないストーリー。
でも、その分しっかり丁寧に世界と環境が描かれていて好感触のアニメだったのでした。
で、そのアニメを紹介してくれた方が、小説も「最初めっちゃ読みにくいけどね……」といいつつもすすめてくれたので、久しぶりにラノベジャンルの本をゲットして、読んでみたわけなのですね。
で、この、小説本のほうですが、アニメで慣れていたせいか、まったく読みづらい感じはなくて、アニメで省かれていた点なども書き込まれていてなかなか良かったです。
やっぱりラノベではあるのでそれなりに読者受けしそうなサブキャラだのエピソード展開だのも多いけれど、それはさておいて、アニメでも上手く描かれていた、あのモチーフ、生きることと隣り合わせの死=『灰』。真剣な生死の話をゲーム風(まだ、風です。たぶんこの後いろいろあるんでしょう)の世界できっちりまじめに描写する姿勢がとても好感触でした。
この著者さん、ゲーム世界をホント好きなんだろうな、ちょーまじめに普通すっとばしてしまうところを書いてるわー。
なんて思いながらページをめくると、最後あとがきの冒頭が、
『ドラゴンクエスト、 ウイザードリイ、ファイナルファンタジー、女神転生、 メタルマックス、 ロマンシングサーガ、プレスオオブァイア、ライブ・ア・ライブ、 クロノ・トリガー、 アークサラッド、 タクティクスオウガ、幻想水滸伝、ティルズオブファンタジア、 ワイルドアームズ、ファイナルファンタジータクティクス、スターオーシャン、マリーのアトリエ、サガフロンティア、ゼノギアス、等々……』
と、ページの半分近くゲームタイトルの連呼で始まります。
本当にゲームが好きで、大好きなゲームへの返礼のつもりで書かれた小説とのこと。どうりで愛がこもってるわけです。
ある意味とても今っぽくないお話しですが、こうした世界観に抵抗が無い方や、↑であげたゲームにハマった覚えのある方にはちょーおすすめですね♪
アニメも良い出来ですよー。すんごくまじめに作られてます。ちょっとタルく感じるかもしれないけれど、それがまた良いのです。未見の方はぜひみてあげてくださいまし。
さぁて、二巻目ポチりましょっと♪