ケツに入りしもの

文字数 1,359文字

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映画ノベライズブログ(https://inaba20151011.hatenablog.jp/entry/2019/10/13/184300)


 私は玄関のドアのそばに隠れる。

 近くにあった、棒付きキャンディーを手に持つ。

 戦争で百人もの白人を一騎当千した、駄菓子屋のおばあちゃんが言っていた。

 やられる前に、やれ。

 破壊的な興奮が私を包む。

 玄関のドアが開いた。

 棒付きキャンディーを、おもいっきり入ってきた人物に突き立てる。



「おうっ!?」



 ゴトッと、倒れたその人物は、見知らぬ警察官だった。

 ……あれ?

 ポカンと、けいれんする警察官を見下げる。

 えっ? これ? もしかして、やっちまった?

 警察官はピクリとも動かなくなった。

 息を吸い込む。落ち着く。解決策を思いついた。

 妖精さんのせいにしよう。

 口封じのために、やつをやらなければならない。

 床に何かが転がった。

 丸いキャンディーだ。

 やつがきた!

 キャンディーは床下の穴に転がっていく。

 地下室がある。

 そこに誘い込んで、やっちまえばいい!



「どこ狙ってんのよ、くそ野郎!」



 と、挑発しておいて、地下室に飛び込んだ。

 中は意外にも広く、廊下が続いていた。

 あめ玉が連射されて襲いかかってくる。

 うそっ!? 連射機能があるだなんて聞いてない!

 待ち伏せてヤルつもりだったけど、さすがに数が多すぎる。

 逃げ出して、通路を走っていった。

 黄土色の照明が天井で揺れている。

 あめ玉がようしゃなく身体をたたいた。

 殺傷能力はなくても、痛くて死ぬ!

 たまらず捨ててあった布をかぶって、隠れた。

 銃を持ち、ガスマスクをかぶった萌美が歩いてくる。



「戦争は楽しいです。生きる充実感を与えてくれます。勲章には、なんの意味もありません」



 萌美が何か訳のわからないことをつぶやいている。

 戦争? 妖精は何かと戦争していたの?

 足音が近づき、そして遠くなっていく。

 チャンスだ!

 布を投げ捨て走りだす。



「やってやりますよ! あいつにキャンディーを食わすんです!」



 萌美があめ玉を撃ってきた。

 戦争をしているつもりなの?

 妖精に何があったのかわからない。



「はうっ!?」



 ケツに何かが入った。

 あめ玉だ。

 悲鳴を上げると、天井が崩れ始める。

 ええっ!? なんでこんなにモロいのっ!!

 萌美の声が途切れる。

 土に埋まったのか?

 この世は奇妙だ……この世は奇妙だ……この世は奇妙だ……。

 あっ、やばい。幻聴まで聞こえてくる。

 走り続けていると、光が見えてきた。

 外だ!

 私はケツにはまったあめ玉の怒りを込めて、木製で壊れたドアを蹴り上げた。

 太陽が私を照らしている。

 妖精から逃げ切れた。

 湿った空気が乾燥していく。

 やった。助かったのね。

 喜びの笑いを上げたあと、私は野ぐそしようと思った。



 後日、私は警察に通報。

 妖精だと言ったら、頭がおかしいと思われるので、凶悪な殺人犯としておいた。

 警察が捜査したものの、埋もれた地下室から遺体は見つからなかった。



 萌美は行方不明のままである。





ハンティングパーク【了】


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