性同一性障害

文字数 611文字

休日なので漫画を読んだ。藤本タツキのファイアパンチという漫画。作中、映画好きのトガタというキャラクターに心惹かれた。

物語も終盤に差し掛かるところでトガタは自身が性同一性障害であることを告白する。"彼女"もしくは"彼"は「祝福の力」という体が再生する超能力を持っているため、性別適合手術を受けても体が女性に戻ってしまうと述懐するのだ。
僕はこの述懐は様々なことを示唆していると感じた。

性同一性障害やトランスジェンダーに関心のない多くの人にとって、この問題は性別適合手術で全て解決すると思ってしまいがちである。

しかし、当事者やトランスジェンダーに関心のある方なら気付いていることだが、"性別適合"という言葉はある種、嘘の言葉である。そもそも、身体の問題で手術自体が受けられない人も大勢いる。手術を受けても例えば女性になったとしても子供を生むことはできないし、ホルモン治療は継続するだろうし、声が高くなったり低くなったりはしない。身体に負担をかけてまで手術を受けるべきか悩む人もいるだろう。

生まれ持った身体という存在を完全に乗り越えることは出来ない。性同一性障害やトランスジェンダーの方はその事実と向き合い続け、どこかで折り合いをつけなければならなくなる。

トガタもまた生まれ持った身体という強度に絶望している一人だ。

彼らの苦しみに寄り添うには想像力が必要だ。それは、「手術をすれば良い」という安易な考えとは程遠い所にあると思った。
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