悪魔降臨

文字数 791文字

「貴様はッ!」
「なんだい?イエスちゃん知り合いかい?」
「ハハッ!知り合いか、そりゃー随分な知り合いだな」
「うるさいぞ、この悪魔め!」
「イエス!そうだよ、俺は悪魔だぜ。間違いなくそうだぜ」
「え?なに?悪魔なの?」
「そうだぜ、人間よ。神がいれば悪魔もいるさ」
「う・る・さ・い!消え失せろ邪悪な者め!」

 そう言うとイエスちゃんは手のひらをその男に向けて光を放つ。それはパワーを持って大砲のように彼を襲う。唸るような疾走音の後、大爆発!

「う、うわっ!急に何をするんだよイエスちゃん!」
「悪魔を滅するのは神の仕事だ。ふん、粉微塵のチリと化したか」

 しかし、爆発の粉塵の中からその男はひょっこりと現れる。

「もー、とんだ挨拶だなー。そりゃー昔は色々あったけどさー、昔の話じゃん。今はもう仲良くしようよ〜」
「できるかーッ!!」

 イエスちゃんは怒りにかまけて光のビームをドカドカと乱発するが、悪魔の彼はひらりひらりとかわしてゆく。

「ふふふふ、神様〜。なんかちょっと弱くなってんじゃないですかね〜」
「なっ!何をーッ!!」

「いや、実際弱くなっているんですよ〜。神様見た?この時代を。少し人と触れ合ってみて感じたでしょ?希望を持つ人が少ないことを、明るい笑顔の者が少ないことを。楽しみ、喜び、面白さが極端に減っていることを。そして、それに反して。怒りや、憎しみ、後悔や、絶望が蔓延していることに…」

 おや?なんだか影が濃くなって来た。いや、何かどす黒い空気が広がって来ている気がするのだ。悪魔を標榜するその男が、言葉を積み上げるごとに、その身体が大きくなっている気がする。いや、気のせいではなかった。初めは私と同じくらいだった背丈の彼は今や、倍以上の大きさになり。私とイエスちゃんを覆うような巨大な姿となって、全ての光を遮り。圧迫を強めているのだった。
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