文字数 1,706文字



「らっしゃい、らっしゃい。今日はピーマンが安いよ。
はい、らっしゃい、お姉ちゃん、今日のトマトが赤くて綺麗なように、お姉ちゃんも綺麗だよ」
「いやだ、飛田さんったら、もう、私もう50歳よ。いやーねー、もう」
「お姉ちゃん、「はい、らっしゃい、らっしゃい。檸檬は甘くてすっぱいよ。今日は特別1個サービスだよ」
「もう、飛田さんったら、私は四捨五入すれば60だよ」
「らっしゃい、らっしゃい、そんな歳に見えないから、らっしゃい、ビタミンCをとって、もっと綺麗になってよ」
「もう、飛田さんったら、いやーねー、一袋買うわ。」
「お姉ちゃん、ありがとう。約束通り、1個サービスしちゃうよ。今日は特売日だよ、らっしゃい」
「やめろよ。俺だって、八百屋の家に生まれてたくて、生まれてきたわけじゃないんだぞ、畜生」
飛田という少年を囲んで、六人のこどもたちが、「らっしゃい」を連呼していた。
「畜生、畜生、やめろよ」
「はい、らっしゃい」
小学生4年くらいだろうか、俺より、背が高い奴がいないのを確認してから、
「お前たち、何やってんだ。これ、完全にいじめだぞ。飛田君がかわいそいうじゃないか」俺は叫びながら彼らに近づいていくと、飛田君が以外にも背が高いことに驚いた。そして、グループで一番背が高い奴がいじめられているのを。少しだけ嬉しくなった。
「なんだよ、うるせーなー」リーダーっぽい奴がそう言った。
「空気よめよ、俺らはいじめなんかやってねーよ、いじっているだけだよ。一番おいしいのは飛田だよ。邪魔すんなよ」ほかの奴がそう言うと、
「そうだよ、そうだよ、ソースだよ」飛田君以外はそう言って、笑いころげて、ハイタッチしていた。
「あ、こいつ知っている、ため息王子だ」一番小柄な奴がそう言うと。
「ため息王子!?」飛田君を含めみんなで口をそろえて、そう言った。
「別名、熱くない修三ともいわれている。松岡修造っているじゃん、ちょっと熱すぎるくらい、熱い奴。でも、あいつ身長188cmもあるんだぜ。それに、普通に爽やかイケメンだし。超格好いいんだぜ。俺の母ちゃん、大好きだし。その点、ため息王子の修三は、」
「おい、俺のこと、呼び捨てにするな」
「ちいせいこというなよ、修三。ため息王子の修三は、チビで、年がら年中冬みたいなため息ばかりで、冴えなくて。冬は、ため息で雪だるまを作ったって逸話もあるしな」
「ねーよ、このやろう」
「ねえ、修三、あ、ため息王子、彼女とかいたことあるの。てか、何歳」
「20歳だよ、今彼女いるよ。」
「えー」ガキどもが目が飛び出そうなくらい絶叫した。
「じゃあ、見せてみろよ。どうせ、デブか、ブスか、その両方だろ」リーダー格がそう言うから、
「おう、見てくれよ」俺は英子の写メを片手にこいつらに見せた。
「おー、美人だ、マジ綺麗、可愛い、おい、おい、おい!!」
ガキどもが、そう絶叫すると、一番デブの奴が、
「きっと、神様がアルツハイマーになったんだよ」
「アルツハイマー!?」ガキども全員がそう言うと、
デブが、
「神様もさ、とんでもない数の人から祈られたり、嫌なことがあったら神のせいにされたり、脳がやられて、頭がおこしくなったんだよ。じゃなきゃ、修三にあの美人は無理だよ」
「ねえ、修三、もうキスしたの」飛田君がそう言うと、
「彼女はクリチャンで、結婚まで、そういうのを求めてないんだよ。いつだってできるけれど、俺は彼女を悲しませたくないんだよ」俺がそう言うと、いじめから助けたと思っていた飛田君が、
「要するにするだけの度胸がないんだね。だせ、ショッボ」彼がそいうと、リーダー格が、
「ため息が移るー、みんな逃げろっ」そう言うと、みんな俺から逃げて行った。
「おいっ」俺はそう言うと、目がさめて、目の前には、母ちゃんが立っていた。
「修三、どうしたの。大声でアルツハイマーって叫んでいたわよ。やめてよ、そういうの」
俺は目が覚めて、夢であることを知って、ホットした。所詮、俺なんかが英子と付き合っているのは、神様がアルツハイマーになったんじゃないかって、本気で考えこんだ。

おしまい
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登場人物紹介

篠崎修三・・・20歳で初めて出来た彼女がクリスチャンだった。

佐藤英子・・・修三の彼女。3年前にクリスチャンになった。ちなみに修三とは保育園の時の同級生

上田基一・・・修三と同じ大学で同級生の友達。両親がクリスチャンで、小学校に入る前から教会に通い14歳の時に洗礼を受けてクリスチャンとなる。高校に入ったころから、高校3年生あたりから教会生活やクリスチャンに疑問を抱くようになり、大学に入学してから間もなく教会を離れる。現在は彼女、飲み会など遊ぶことが楽しく、教会を離れて良かったと思っている。

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