24 歓迎会を兼ねる
文字数 2,448文字
傭兵たちとの合同チームは、巨大クレーターとSNSで拡散されまくった大爆発(布理冥尊による報道統制により
上記ふたつの件は想像以上に深刻だったようで、司令官も庇いきれず、俺とアイルランド人にペナルティが処されることになった。
二人はレベルアップはゆるされても報酬を得られなかった。もともとポイント0のアイルランド人は、目の前に座っている人が降車する確率(要はささやかな幸運)が減少して、俺はフェロモンが増えなかった。
その後の戦いで魔法少女が到着する前に幹部補三体を倒したため、女性の目線がまた気になりだした。慣れてはきた。俺はイケメンと思いこめばいい。
モスガールジャーはDランクに格上げされた。でも、雪月花が鶴見の運河における親衛隊四体との戦いに完勝し、全国で唯一のSランクになったおかげで、彼女たちのサポートチームに戻されたままだ。独立した任務は増えるらしいけど。
ミッションで会ったのも一度だけだけど、かぐや姫は手を振ってくれて、巫女は微笑んでくれた。花魁の目はおっかなかった。
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妹が夏期講習だから問題なく家をでられた。
とてつもない財運を持つ広尾マダムの主催だからどこの高級ホテルでの祝勝会かと思ったら、東上線などにあるフレンチレストランだった。と思ったら、駅前の飲食店が集合したビルの最上階の高級感あふれる店じゃないか。バイトに行くときの格好のままでVIPのように案内される。
店は金曜の夕方六時から六人のためだけに貸し切り。十分前に到着したら、陸さんがすでにいた。腕は処理したようにつるつるだ。伸ばし始めた髪はさらさら。うふふと笑うが男性の服装で来てくれた。
続いて茜音と清見さんが、ピンクの野球帽をかぶった隼斗を連れてきた。自分の足で歩く隼斗は見るからに体調がよさそうだ。頬もうっすらピンクだった。
私は一度かかったから免疫ができてると茜音は言っていた。でも、今の
「蘭さんに通用しないなら私にも通じない。と本人が言っているし、惚れさせて色々と改善させるのも手かも」
茜音が五メートル離れた位置から目を逸らしながら言う。俺より賢い彼女が言うのならばそうすべきなのだろう。
しかしすでに五分オーバー。茜音がいうとおり、司令官は時間にルーズだ。碧菜の席を上座に開けて、その向かいに俺が座る。隣には不透明のパテーションを置いて茜音が座る。その隣に陸さん。碧菜の隣に隼斗。その隣には清見さんが陸さんと向かい合わせで座る。
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「遅れちゃってごめんね」
さらに十分後、生身である司令官が到着した。三十代ぐらいの黒づくめの男に車椅子を押させて現れる。こっちの世界でのボディガードだ。
「碧菜っぱ、もう治ったのだろ? 自分の足で歩け」
「だね。リハビリになるし」
茜音に言われて碧菜はひょいひょいと歩きだす。こんばんはと会釈して俺の前に座る。隼斗とグータッチを交わしたあとに二人でニコニコと語りだす。
この身長も体格もバストも平均的二十代日本人女性こそが、与那国三志郎の本当の姿。染めてない今どきのミドルヘア。細い目に大きめな鼻も、容姿が平均を
ジャンボな宝くじの当選金をMMORPGで意気投合した兄ちゃんに丸ごと投資したら、一月で開発したパズゲーが誰のスマホにもあるほどの空前ヒットになり、それを元手に云々と、わずか一年足らずでダミーの辣腕マネジメントにグローバルに丸投げして利益の九割を慈善団体に寄付するまでに至ったステルス投資家には見えない。
さっぱりしたカジュアルシャツとスカートと言い、エンタメ系専門学校を中退したフリーター? と答える人のが多いだろう。
あり余る金運財運の代わりに、目を覆いたくなる“不運”がペナルティで与えられる人にも見えない。一人で歩けば工事現場から鉄骨が落ちてきたり、一人でいる交差点にトラックが暴走してきたり、一人で公園にいればトラックが暴走してきたり、でもミラクルな悪運のおかげでいずれも全治一ヶ月で済んで、それを笑って済ませられる人間には見えない。
“
俺をちらちら見ていた蒼菜が、ようやくしっかり顔を向ける。
「智太君、いつもありがとう。自分からは意地でも挨拶しないなんて、さすがはレッドだね。今日は隼斗君の退院祝いとモスガールジャーの慰労会。上座の向かいでふんぞり返る新入りの、ようやくの歓迎会もかも。飲みほ食いほだから遠慮はなしでね。
それと、ここのオーナーは私。この部屋はクリーニングしてあるから、なんでも口にだしていい。布理冥尊のくそ野郎とか、
からから笑ったあとに俺の隣に目を向ける。
「茜音っち、私の目がうるんでいる? 智太君は、昼間のバイトが牛丼屋しか見つけられなかった、イケメン偏差値が50を
「分かったから早く乾杯しろよ。十五分も待たせているんだぞ」
間仕切りの向こうで司令官を叱るアメシロの声がした。藍菜の後ろに控えるボディガードの、俺を見る目が薄気味悪い。