第43話 思い出の場所
文字数 592文字
街路樹の下、リシャールはじっと石造りの建物を見つめた。
子供の頃、この別荘で三人で遊んだ。唯一の友ともいえるジュリオと、妹のように可愛かったエレナ。いつしか足は遠のいてしまったが、ここには幸せな思い出が刻みこまれている。
束の間、追憶にひたるリシャールの頭を、いきなり梨華がぐいっと押さえつけた。
「な、何を !?」
「隠れてっ」
植え込みの陰から梨華が指差す先には、別荘に近づく人影。王宮の衛兵だ。
全部で四人。そのうちの二人は門の前に立ち、あとの二人は中へと入っていく。
「ジュリオを探しに来たんだ」
梨華は眉根を寄せる。
「急がなきゃ。もし彼がここにいたら、先を越されたら厄介だわ。裏門とかある?」
あります、と答えるリシャールに、
「案内して。先回りするわよ」
通りの裏側、門には鍵はかかっていなかった。中に入ると、敷地の木陰で梨華は突如、羽飾りのついた帽子をかなぐり捨てた。
「あーもう限界! こんなうっとうしい格好してられないわっ」
叫ぶや否や、フリルのついたピンクのドレスを脱ぎ始める。
「り、梨華 !?」
赤面して明後日 の方を向くリシャールに、
「何赤くなってるのよ。ちゃんと下に着てるわよ」
脱ぎ捨てたドレスの下は、いつもの立襟の赤の上着と動きやすい脚衣である。
「さ、早くジュリオを探さなきゃ」
建物の裏口にも鍵はかかっていない。リシャールの先導で二人は廊下を急ぎ足で歩いていく。
子供の頃、この別荘で三人で遊んだ。唯一の友ともいえるジュリオと、妹のように可愛かったエレナ。いつしか足は遠のいてしまったが、ここには幸せな思い出が刻みこまれている。
束の間、追憶にひたるリシャールの頭を、いきなり梨華がぐいっと押さえつけた。
「な、何を !?」
「隠れてっ」
植え込みの陰から梨華が指差す先には、別荘に近づく人影。王宮の衛兵だ。
全部で四人。そのうちの二人は門の前に立ち、あとの二人は中へと入っていく。
「ジュリオを探しに来たんだ」
梨華は眉根を寄せる。
「急がなきゃ。もし彼がここにいたら、先を越されたら厄介だわ。裏門とかある?」
あります、と答えるリシャールに、
「案内して。先回りするわよ」
通りの裏側、門には鍵はかかっていなかった。中に入ると、敷地の木陰で梨華は突如、羽飾りのついた帽子をかなぐり捨てた。
「あーもう限界! こんなうっとうしい格好してられないわっ」
叫ぶや否や、フリルのついたピンクのドレスを脱ぎ始める。
「り、梨華 !?」
赤面して
「何赤くなってるのよ。ちゃんと下に着てるわよ」
脱ぎ捨てたドレスの下は、いつもの立襟の赤の上着と動きやすい脚衣である。
「さ、早くジュリオを探さなきゃ」
建物の裏口にも鍵はかかっていない。リシャールの先導で二人は廊下を急ぎ足で歩いていく。