逃げちゃう勇気未満街

文字数 1,388文字

 今日もまた、満員電車で通勤する。毎日毎日、電車でぎゅうぎゅう詰めになっての通勤。ああ、何処か遠くへ行きたい。行きたいけれど、その気力も体力もない。仕事以上に消耗するのが通勤電車。通勤時の電車に比べて、退勤時の電車は程良く遅い時間が楽で良い。ホワイト会社の退社時間は、大学生らも混じっているだろう。終点に近付けば、近付きたくない人間の濃度が増す。単純に酔っ払いが増えるのに加えて、残業に次ぐ残業で壊れた人も増えるからだ。
 フレックスタイムを使える状態なら、朝はゆっくり出来るし、ラッシュを避けて帰宅も出来る。まあ、それが出来ていたら、満員電車で消耗して吐きそうになってはいないのだが。



 何とか吐かないで電車から降りた。だが、更に都会へ向かう電車に、これから乗り換えだ。駆け込み乗車マンと、絶対避けないくせに何駅もドアの近くに居座るデカブツに苛立ちながら、今日もまた心を無にする。
 会社の最寄り駅に到着。自分は、満員電車でもみくちゃにされてから、直ぐには仕事に取りかかれないタイプだ。体力と精神力、どちらも削られた状態では集中出来ない。なので、コンビニで買い物しつつの寄り道をしながら会社へ向かう。

 オフィス街のコンビニは多種多様で、ニーズに合わせて色々な物が販売されている。それこそ、泊まりで仕事をする人向けのアイテムを揃えている店もある。そう、満員電車で愚痴を言える内がマシだ。終電を逃すか、元々電車の時刻表なんて知らない位に休めない仕事もあるだろう。それに比べたら、コンビニで一息つけるのは、まだ序の口なのだろう。
 満員電車で乱れた服や髪型を、コンビニの鏡を見ながらさっと直す。少しでも変だと、ネチネチ言ってくるお局様が、令和の会社にも残っている。
 それの何が嫌って、年下にしかネチネチ言わないのだ、お局様は。上司でなくとも、年上が小汚くても何も言わない。結局、マナーを正したいのではなく、弱いものいじめが生きがいタイプなお局様なのだ。それで、新人が耐えきれず、どれだけ辞めたことか。むしろ、その為に雇われているのかと思う位に、お局様が原因で辞める新人は多い。
 なお、上に何も言わず逆らわずでも、上に好かれないのはお局様が証明している。お局様は、人に仕事を押し付けるのだけは頑張れるタイプでもある。だから、同期も結構消えたらしい。「お局様を無視出来た同期だけが出世し、今も会社に残っている」と、忘年会で聞いた。だが、酒の席での噂話は、信憑性に欠ける。ただ、会社に在籍する年齢毎の人数だけを考えれば、確かにお局様の同期は少ない。就職氷河期やリーマンショックと言う理由ではなく、その年だけ人数が少なく謎と言えば謎なのだ。

 事実はどうあれ、お局様はお局様だけに定年が近い。仕事を押し付けてばかりの人間を再雇用するとは思えないし、するなら会社に未来はない。そうでなくとも、新人が辞めがちな会社は危ないのだ。
 ともあれ、お局様のターゲットはより若い相手。特に、若くて可愛い女性である。だから、余計に気持ち悪いのだが。
 何が何でも、貶したいオーラを隠さない。勿論、男性もターゲットにはなるのだが、圧倒的に新人の女性が狙われる。だから、不快だ。まあ、自分より上の人達がしてきた様に、自分もお局様から新人を守りはしない。お局様のターゲットになればどうなるかを、何度も見て知っているからだ。
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