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文字数 362文字
歌い人は歌う
時に喜びを時に悲しみを
歌い人は歌う
きょうは誰(た)がために
一雫の雨に憂い去りゆく日々を思い
歩く道は遠ざかるほどに砂のように時間の狭間に消える
今日はとりあえず自分の足跡を残せた
一歩は前に踏み出せたようだ
次のドアはまだ固く閉ざされて鍵は見つからないけど
この部屋のドアは見つかったんだ
気長にいこうどうせ急ぐ事はないから
心の隙間に突き刺さるようなメロディを
奏でるまで歌い続けるよ
泣いてる君のために
日が昇り誰かを愛し日が翳り誰かを憎む
見えるものが全て真実とは限らず
見えないものが偽りだとも限らない
結末を望むのはもうよそう
キリがないから
流離い人になろうか水のない海の真ん中で
小舟に揺られながら
あの人の声は覚えてる顔はとうの昔に忘れててしまった
道無き道を急ぐ旅人よ
荷物を一つに預ろうか
僕はまだしばらくここにとどまっていたいから