第15話 仮想世界の日本食……
文字数 2,362文字
カンナとヘレンは、地味な村娘になりきっていた。二人とも眼鏡をかけ、髪の毛は三つ編みにした。
「ヘレン、こんな風でいい?」
「いいですわ!」
二人で鏡の前で頷きあった。
これからカンナは、メリアがいる村にいく事にした。やはり彼女は生贄儀式を再びする恐れがあるし、うまくいけばこの屋敷に連れて帰したい。
そうなると自分はこの屋敷から追い出される可能性があるが、公爵様の事を考えると、そうした方がいいと思った。今は自分をメリアと思い込んでいる公爵様だが、ずっとこのままでは居られないだろう。
その事をヘレンに相談したら、一緒にメリアにいる村までついてきてくれる事になった。
馬車も手配してくれる事になった。ただ、村で目立つ格好するのは目立つだろう。カンナもヘレンも村娘に変装して村にいく事になった。
はじめて乗る馬車はグラグラと揺れ、あまり心地よくはなかった。やはり、元いた世界に交通手段と比べると色々不便なところはあるのだろう。
「本当にメリアお嬢様は、トリップ村にいるんですかね?」
「いるわ」
ヘレンは半信半疑だったが、元いた世界で漫画の内容を把握しているカンナは、確信していた。
「和食のカフェを開いて、隣国の騎士から溺愛されたりしてるの」
「へぇ。信じられませんよ」
そうは言っても村につき、実際メリアのカフェを目の前にしたヘレンは、認めざるおえないようだった。
「うそ、本当にカフェだわ。メリアのホッコリ田舎和食カフェですって。カンナお嬢様は、よくわかりましたね」
ヘレンは目を丸くしていたが、褒められてうれしくはない。この事も別に自分が努力して得た知識でもないし、かえって恐縮してしまう。
カフェは村に中心部にあった。レトロな外観で、日本の昭和風のカフェをイメージしている事はわかる。店には日本特有の食品サンプルも飾られていた。
そこを見ると、ナポリタン、オムライス、カレーピラフなどのメニューが展開されているようだ。
和食カフェと銘打っているようだが、メニューは日本風の洋食がメインみたいだ。ただ、味噌汁やミニおにぎりなどのサイドメニューは普通に和食も多かった。納豆や大根の漬物まである。
漫画では前世の記憶を活用した設定だったが、日本人女性の記憶を食べた悪霊を使役してできたメニューだと思うと微妙な気持ちになる。
店は定休日のようで静まりかえっていた。確か漫画では連日繁盛していたのだが。
「このカフェ、ちょっと気持ち悪いわ。あのメニューのサンプルに幽霊みたいのがくっついているように見える」
「本当?」
霊的に敏感なヘレンは、身震いしていた。カンナは何も感じないが、元ネタは日本人女性の記憶を食べた悪霊のアイデアだと考えると、確かに気持ち悪い。
「とりあえず、このカフェの噂を聞いてみましょうよ。現地の人は何か知ってるかもしれない」
ヘレンはそう提案した。長くメイドをしていたヘレンは環奈よりはコミュ力は高いらしい。カフェのそばを歩く村人に気軽に声をかけていた。
「あのカフェの評判や噂はご存知ですか?」
ヘレンは農民風の村人に笑顔で声をかけた。
「事情があってあのカフェの店長の事を探しているんです。教えてくれますか?」
カンナは元いた世界では人見知りの方だったが、今はそんな事言ってられない。思い切って声をかけた。幸い、村人は優しそうな老人だった事もあり、声をかけやすかった。漫画世界らしく村人でも美形で、ほうれい線もとってつけたみたいで不自然だったが。
「あぁ、あのカフェね」
村人は、呆れたような顔を見せた。
「最初は日本食っての? ちょっと珍しくて人気だったけどさ。店長のメリアが偉そうなんだよ」
「偉そう?」
「どういう事ですか?」
カンナとヘレンは同時に声を上げていた。
「あぁ。俺ら農民のスープや肉料理もバカにしてるし。日本食っていうのも最初は珍しかったが、味噌や納豆はきつい。あんこも甘い豆っていうのが苦手さ」
村人は顔をしかめた。日本食は日本人として誇りに思うが、それをそのまま出して受けるかどうかはわからない。寿司もカルフォルニアロールのようにアレンジしている方がとっつきやすいとも思う。
漫画ではあっさりメリアの日本食が村人達に受けていたが、そう簡単では無いのかも知れない。
「メリアは俺らの事バカにしてるしな。挙句隣国の騎士に尻尾振ってやがる。ビッチだよ。恋愛にハマってカフェも不定期営業になってる。まあ、日本食も珍しかったのは最初だけだな。今はもう村の連中も飽きてるよ。やっぱり、多少不味くても慣れたウチらの料理のが落ち着くんだわ。味覚っていうのは、記憶や遺伝レベルで結びついてるもんなんだよな。理屈じゃ無いんだよ。急に新しい物を出されても」
そう言って村人は、去っていった。
メリアとカフェの評判は、村人の言うように悪いようだった。
この村人だけでなく、他の村人の事も聞いてみたが、全員口を揃えて同じ事を言っていた。
メリアは偉そうで、かなりの嫌われ者である事は確かのようだった。
確かにカフェの料理は認める村人もいたが、そんな者でも「メリアは偉そうで性格悪い」と言っていた。
「昔のメリアお嬢様は、そんな性格悪くなかったはずなのに」
ヘレンはこの事にショックを受けていた。やはり、悪霊からアイデアを受けているような状況は、その人の性格なども悪化させているようだった。
「そんな、ショック受けないで。次はメリアお嬢様の家に行ってみましょう」
ショックを受けているヘレンの手を引き、村外れたにあるメリアの家に向かった。
「あれ? あの人はメリアお嬢様ではない?」
カンナは農家が立ち並ぶい田舎の畦道を歩いている時、麦畑の方にいるメリアの姿をみつけた。
「行ってみましょう!」
「ええ!」
ヘレンと一緒に麦畑の方に足をすすめた。
「ヘレン、こんな風でいい?」
「いいですわ!」
二人で鏡の前で頷きあった。
これからカンナは、メリアがいる村にいく事にした。やはり彼女は生贄儀式を再びする恐れがあるし、うまくいけばこの屋敷に連れて帰したい。
そうなると自分はこの屋敷から追い出される可能性があるが、公爵様の事を考えると、そうした方がいいと思った。今は自分をメリアと思い込んでいる公爵様だが、ずっとこのままでは居られないだろう。
その事をヘレンに相談したら、一緒にメリアにいる村までついてきてくれる事になった。
馬車も手配してくれる事になった。ただ、村で目立つ格好するのは目立つだろう。カンナもヘレンも村娘に変装して村にいく事になった。
はじめて乗る馬車はグラグラと揺れ、あまり心地よくはなかった。やはり、元いた世界に交通手段と比べると色々不便なところはあるのだろう。
「本当にメリアお嬢様は、トリップ村にいるんですかね?」
「いるわ」
ヘレンは半信半疑だったが、元いた世界で漫画の内容を把握しているカンナは、確信していた。
「和食のカフェを開いて、隣国の騎士から溺愛されたりしてるの」
「へぇ。信じられませんよ」
そうは言っても村につき、実際メリアのカフェを目の前にしたヘレンは、認めざるおえないようだった。
「うそ、本当にカフェだわ。メリアのホッコリ田舎和食カフェですって。カンナお嬢様は、よくわかりましたね」
ヘレンは目を丸くしていたが、褒められてうれしくはない。この事も別に自分が努力して得た知識でもないし、かえって恐縮してしまう。
カフェは村に中心部にあった。レトロな外観で、日本の昭和風のカフェをイメージしている事はわかる。店には日本特有の食品サンプルも飾られていた。
そこを見ると、ナポリタン、オムライス、カレーピラフなどのメニューが展開されているようだ。
和食カフェと銘打っているようだが、メニューは日本風の洋食がメインみたいだ。ただ、味噌汁やミニおにぎりなどのサイドメニューは普通に和食も多かった。納豆や大根の漬物まである。
漫画では前世の記憶を活用した設定だったが、日本人女性の記憶を食べた悪霊を使役してできたメニューだと思うと微妙な気持ちになる。
店は定休日のようで静まりかえっていた。確か漫画では連日繁盛していたのだが。
「このカフェ、ちょっと気持ち悪いわ。あのメニューのサンプルに幽霊みたいのがくっついているように見える」
「本当?」
霊的に敏感なヘレンは、身震いしていた。カンナは何も感じないが、元ネタは日本人女性の記憶を食べた悪霊のアイデアだと考えると、確かに気持ち悪い。
「とりあえず、このカフェの噂を聞いてみましょうよ。現地の人は何か知ってるかもしれない」
ヘレンはそう提案した。長くメイドをしていたヘレンは環奈よりはコミュ力は高いらしい。カフェのそばを歩く村人に気軽に声をかけていた。
「あのカフェの評判や噂はご存知ですか?」
ヘレンは農民風の村人に笑顔で声をかけた。
「事情があってあのカフェの店長の事を探しているんです。教えてくれますか?」
カンナは元いた世界では人見知りの方だったが、今はそんな事言ってられない。思い切って声をかけた。幸い、村人は優しそうな老人だった事もあり、声をかけやすかった。漫画世界らしく村人でも美形で、ほうれい線もとってつけたみたいで不自然だったが。
「あぁ、あのカフェね」
村人は、呆れたような顔を見せた。
「最初は日本食っての? ちょっと珍しくて人気だったけどさ。店長のメリアが偉そうなんだよ」
「偉そう?」
「どういう事ですか?」
カンナとヘレンは同時に声を上げていた。
「あぁ。俺ら農民のスープや肉料理もバカにしてるし。日本食っていうのも最初は珍しかったが、味噌や納豆はきつい。あんこも甘い豆っていうのが苦手さ」
村人は顔をしかめた。日本食は日本人として誇りに思うが、それをそのまま出して受けるかどうかはわからない。寿司もカルフォルニアロールのようにアレンジしている方がとっつきやすいとも思う。
漫画ではあっさりメリアの日本食が村人達に受けていたが、そう簡単では無いのかも知れない。
「メリアは俺らの事バカにしてるしな。挙句隣国の騎士に尻尾振ってやがる。ビッチだよ。恋愛にハマってカフェも不定期営業になってる。まあ、日本食も珍しかったのは最初だけだな。今はもう村の連中も飽きてるよ。やっぱり、多少不味くても慣れたウチらの料理のが落ち着くんだわ。味覚っていうのは、記憶や遺伝レベルで結びついてるもんなんだよな。理屈じゃ無いんだよ。急に新しい物を出されても」
そう言って村人は、去っていった。
メリアとカフェの評判は、村人の言うように悪いようだった。
この村人だけでなく、他の村人の事も聞いてみたが、全員口を揃えて同じ事を言っていた。
メリアは偉そうで、かなりの嫌われ者である事は確かのようだった。
確かにカフェの料理は認める村人もいたが、そんな者でも「メリアは偉そうで性格悪い」と言っていた。
「昔のメリアお嬢様は、そんな性格悪くなかったはずなのに」
ヘレンはこの事にショックを受けていた。やはり、悪霊からアイデアを受けているような状況は、その人の性格なども悪化させているようだった。
「そんな、ショック受けないで。次はメリアお嬢様の家に行ってみましょう」
ショックを受けているヘレンの手を引き、村外れたにあるメリアの家に向かった。
「あれ? あの人はメリアお嬢様ではない?」
カンナは農家が立ち並ぶい田舎の畦道を歩いている時、麦畑の方にいるメリアの姿をみつけた。
「行ってみましょう!」
「ええ!」
ヘレンと一緒に麦畑の方に足をすすめた。
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