第1話 神頼み

文字数 521文字

「だから、たくさん参拝者が居たら、誰のお願いかわからなくなっちゃうでしょ」
美穂のいつもの主張が始まった。
夕日が射す教室内には、私と美穂と後、さっき生徒会室から戻ってきた貴志の3人だけだ。

「何の話?」
貴志が話題に入ってくる。
「初詣とか・・・神社参拝のときの話」
美穂が振り向き説明する。
美穂が言うには、お願い事と共に住所や氏名を言うべきだと。
そうでないと、誰のお願い神様がわからなくなってしまうというのである。

私は、美穂に反論した。
「神様って、願いを叶えてくれる存在でしょ。
 全知全能の神様なら、イチイチ住所や名前言わなくてもお見通しじゃない」

美穂は、納得いかない様子で、ちょっと唇を尖らせて貴志の方を向く。
「貴志は、住所や名前を言う派? 言わない派?」
意見を求められ面倒くさそうに貴志は答えた。
「俺、言わない派・・・。
 っていうか、要らないと思う。必要ない」

必要ないとの断言に美穂と私は驚いた。
「必要ないって神様が万能だから?」
「誰のお願いかわからなくても良いってこと?」
私たちは、たたみかけるように貴志を問いただす。
「うん。誰が願ったかなんて関係ないってこと」

貴志は、私たちに願いごとの中身を教えてくれた。
「俺の願い『世界平和』だから・・・」
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