第10話 河童の里

文字数 1,244文字

○長野県M市、標高600mの山郷 9:00pm
東京から来たサラリーマン太郎は、祖母からの手紙で有給をとって久々に信州の山里を訪れた。
山路は、勿論外灯もなく星明かりだけが頼りである。JRM駅からバスに乗って、山里の停留所で降りたもののなかなか祖母の家にはたどり着けない。
もう何時間山路を歩いてるんだろうか、ググっても山里ではWifiが効かないし。そろそろ九時か、歩き疲れたな。こんなことなら、格好つけずに登山靴で来るんだったな。
Ppppp...pppp

Battery off

携帯のバッテリーが切れた。

充電する処なんて無いし、下手したら今晩は野宿だぞ。

ワォー!

ガサッ。

なんかの獣道かな、気味悪いな。

おまけに信州特有の濃霧が出て、視界まで悪くなってきた。

太郎、歩いているうちに旅館「河童の里」を発見。
おやっ、あんな処に鄙びた旅館が。

今晩は、ここに泊まろうか。

○「河童の里」受付
リンゴーン♫
夜分遅くに済みませーん。

予約してないんですが、飛び込みでも構いませんか。

(主人)部屋なら空いてますよ。食事もご用意できますから。「胡瓜の間」にお泊まり下さい。

キュルキュル。

はーっ、何とか助かった。ありがとうございました。(語尾が気になるな)
部屋のカギを受け取り、胡瓜の間に進む太郎。
○胡瓜の間

既に卓には食事が用意されている。

あれーっ、馬鹿に手回しが良いな。
(女将)冷菜ばかりですから。献立は、胡瓜の炊き込みご飯、胡瓜の味噌汁、胡瓜のぬか漬け、胡瓜と焼き鮎の和物ですわ、キュルキュル!
まさに胡瓜づくしだね。早速いただきましょうか。
胡瓜酒は、いかが?まあ、一献。

キュルキュル!

女将に酌をされる太郎。
なんか、青臭い冷酒だけど妙にすすむな。
散々呑み食いして小一時間後。
はーっ、なんか妙な飯だったけど満足したな。

ところでお代はいくらですか?

もーっ。あなたの胡瓜は貰いました。

クチャクチャ。 

キュルキュル!

口元から、ソーセージ状のものを覗かせながら咀嚼を繰り返す女将。
やっぱり若い子の○ニスは、いきがいいわ。

キュルキュル!

おっ、俺のセガレを返せー!
.................
翌朝、6:00am
チョットあんたどこで寝てるんですか、起きて!
Zzzzz...uhmm
どこでって、ワタシは河童の宿でセガレを女将に取られて..,
(駐在)ここはね、Sn川の河原キャンプ場なんだけどね、コロナ禍で閉鎖されてるんだ。勝手に進入して野宿されたら困るよ。
では、セガレを取られたワタシはどこに訴えればいいのでしょうか。
朝から下半身がテント張ってて、何を言ってるんだか。それに手に持っている胡瓜は何?
あっ、ら、これは女将のお土産かな。

ワタシは決して怪しい者じゃありませんよ。

れっきとした東京からの旅行者です。

免許証もありますよ。

最近、田畠の農作物が荒らされていると被害届が出されていた。野生動物の仕業かと思っていたが、あんたみたいな東京からの旅行者だったとはね。
だから、違うんだってば。
話は、駐在所でゆっくり伺います。 

キュルキュル!

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