クイズ・誰から誰へ? 第1問「誘惑」

文字数 765文字

『だれがどすたの物語』より、第10話「誘惑」

基本的に、ある一人のキャラクターの三人称一元視点で書かれていますが、一か所だけ別の人に切り替わっています。
なぜかというと、その切り替えのおかげで、そのキャラクターが誰か判明するしかけになっているからです。
Q1. 基本の視点人物は誰でしょうか?
Q2. 一か所だけ切り替わる視点人物は誰でしょうか? その部分は、どこからどこまででしょうか?

mimura_akira

【誘惑】

 木こりの若者が、沼に、斧を落としてしまいました。
 とほうにくれて、暗い水底をのぞきこんでいると、

 いつのまにか、その斧が浮かんできて、手もとでひたひたと小波に揺れました。

 若者は斧を持って、家に帰りました。

 金の斧とか銀の斧とかは出てこないです。
 斧は、鉄でないと、木が伐れません。

 あくる日、若者は、もう一度沼に行って、
 そっと斧を落としてみました。

 自分でもばかだと思いました。たった一丁の、大事な斧です。あれがないと木が伐れません。暮らしていけません。

 斧は、やはり、浮かんできて、ひたひたと小波に揺れました。

 その夜、若者は眠れませんでした。何度も何度も寝返りを打ちました。
 こんなに胸が苦しいのは、初めてでした。
 姿も見えなければ、声も聞こえないのです。あるのはただ、斧をそっと押しつけてくる、柔らかい肌の感触だけ。そして、あの香り。蓮の花でしょうか。

 あくる日、若者は、何も持たずに沼に行きました。
 そして、水際に両手をついて、詫びました。

 おゆるしください。金気[かなけ]のものがお嫌いだということは、わかりました。
 だけどおれには、木を伐るか、鉄砲を撃つか、
 どちらかしか、ないんです。

 あのとき、沼に身を投げていれば、あの恋は成就したのかもしれないと、
 晩年、祖父は私に、笑いながら語ったものです。

mimura_akira

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登場人物紹介

ミミュラ


このコラボノベルの管理人。ときどきアマビエに変身する。

アーシュラ・K・ル=グウィンをこよなく慕い、勝手に師と仰いでいる。

ヒツジのくせに眠るのが下手。へんな時間に起きてしまったり寝てしまったりする。

犬派か猫派かでいったら、犬派。(←ヒツジだけにお犬さま方にはつねづねお世話になってます(^^ゞ)

たい焼きは頭から、チョココロネは太いほうから食べる派。

ミニャノ

管理人に「眠り下手仲間」のよしみで誘われ、このコラボに参加することになった紀州犬。と言っても紀州には何のゆかりもなく、出身は相州鎌倉。現在、台湾台北に生息中。

「鳩サブレー」は頭からでも尾からでもなく、袋の状態のまま、指でぶちぶち潰してから食べる派。

日本語と中国語の間をふらふら往き来する人生ボケ担当大臣(自称)。ときどき別形態になるんだって。

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