19 ロック『統治二論』(4)

文字数 1,297文字

ロックに戻ります
各人は、各人の固有権(プロパティ)を護るため、政治権力(政治的共同体)を樹立し、法を制定する、ってところまででしたね?
だったかな?
おーい

さて、ロックはね、この政治的共同体における最高権力は立法権だとしている。

というのも、各人の固有権は、具体的には法によって保護されるわけだからね

でね、この立法権だが、当然のごとく、【立法部の権力は、その範囲をどんなに大きく見ても、社会の公共善に限定される】[『統治論』:P455]とされる。

公共善とは、要するに、各人の固有権が護られるってことね

だからね、【最高権力(である立法権力)といえども、いかなる人間からも、その人間自身の同意なしには所有物の一部なりとも奪うことはできない】[『統治二論』:P460]ということになる。

固有権を護るための立法なんだからさ、その立法が逆に固有権を侵害しちゃうのであれば、まさに本末転倒ってことになるからね

ですね

でも、ただ単に法律があるだけじゃダメでしょ。

実行力がなけりゃ

そのとおり

ロックは、法をつくる立法権力は一時的なもの(定期的に集まるようなもの)でもよいが、法を人々にキチンと護らせつつ、一方で、破ったヤツに罰を与える執行権力は(当たり前だが)恒常的なものじゃないといけない、と言う。

つまり、法をつくる立法権力と、法を維持する執行権力の2つがね、この政治的共同体には必須なんだ。

ただし、執行権力より立法権力が上位にくるのは言うまでもない

そして、さらにもう一つ、【政治的共同体の外部にあるすべての人々や共同体に対して、戦争と和平、盟約と同盟、その他すべての交渉を行う権力】[『統治二論』:P470」として、連合権力をロックは挙げている
政治的共同体には、①立法権力、②執行権力、③連合権力、の3つがあるわけですね

そう。

繰り返しになるけど、このうち、立法権力が最高権力なんだけどね、ただ、法と法との隙間、グレーゾーン、法の網の目からこぼれ落ちてしまう部分がどうしてもでてくるじゃない

あらゆる事例を法の言葉で網羅することなんてできませんしね

共同体と共同体との間、国際関係においては、国内法など通用しないじゃない。

ゆえに、連合権力はさ、フレキシブルな対応を求められることになるだろう。

だからね、連合権力は立法権の範囲を踏み出てしまうことがある

また、国内においても、法の網の目はすべてを網羅してないからさ、執行権力が法の範囲を踏み出て事態に対応する必要がどうしてもでてくる
これを、執行権力が法の範囲を踏み出てしまうことをね、ロックは大権と呼ぶ
ただし、この大権は、ロックの場合、専制君主の国王大権のような「なんでもアリ(俺様がルール)」的なものじゃなくて、独断的なものじゃなくてね、あくまで公共善に縛られるものであり、【大権とは、法規によることなしに公共の善を行う権力に他ならない】[『統治二論』:P495]と、ロックは言う
つまり、立法権力だろうが、執行権力だろうが、連合権力だろうが、いずれも公共善に縛られるってことですね?
うん、そのとおり!

[引用文献]

・ジョン・ロック『完訳 統治二論』加藤節訳、岩波文庫、2010

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登場人物紹介

デンケンさん(49)・・・・・・仙人のごとく在野に生きることを愛する遊牧民的活字ドランカー。かつては大学院にいたり教壇に立ったりしていたが、その都度その都度関心があることだけを考えていきたい、という専門性を磨こうとしないスタンス、及び『老子』の(悪)影響があり、アカデミズムを避けた・・・・・・がゆえに一介のサラリーマンである(薄給のため独身、おそらく生涯未婚)。

朝倉恭平(30)・・・・・・ご近所の鷺ノ森市文化創造センターに契約職員として勤務。

(チャットノベル『毒男女ぉパラダイス!!』の登場人物・朝倉5年後の姿)

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