前書きのようなプロローグ
文字数 1,370文字
目覚めた玲奈が最初に見たのは、部屋の天井であった。
自室で朝を迎えた描写から書き出された小説は、例えばその手のコンクール等では、その一行を読んだだけで審査員が容赦なく"駄作"とレッテルを貼り切り捨てる、という都市伝説のような話を何処かで聞いたことがあるけれども、ちょっと面白いので、そのように始めてみた。
僕はこの小説が人生で2つめの作品だし、確かに文学賞をとって友達に自慢したいしモテたいけれども、それは納得のいくものが書けるようになってからチャレンジしてみたい大切な夢でもある。
やっとの思いで1つ書いてみて見えたのは、せめて5つ書けたら出してみよう、というフワっとしたプランだった。
…じゃなくて、とにかく玲奈は自室で目覚めた。
柔らかな初秋の陽光がカーテンに差し、そのスクリーンは淡い影を揺らしている。
ふと少し肌寒いと感じた。
見ると玲奈は何も着ていなかった。
驚いて半身を起こす。ここは確かに自分の部屋…。
灯りはついていないが様子を見渡せるくらいには薄明るい。
しわのよったシーツ、脱ぎ散らかった衣服、開けっ放しのテレビラック、ベッド横の小机に種類の違うハイボールの缶が2つ…。
2つ?!
ハッとして玲奈は傍らを見る。
玲奈の隣に男が眠っていた。
ッ?!…
玲奈はしばらく固まって動けなかった。
ベッドの壁側に、こちらに背を向けた格好で男が寝息を立てている。
誰?!
玲奈には、同じベッドで寝るような男の心当たりがない。
え?!何で…
玲奈はひどく混乱し困惑した。
が、何とか平静を保とうと努力した。
玲奈は先ず、その男が目を覚まさないように、静かにベッドを抜け出た。
音をたてぬように衣服を集める、男の衣服もあるので自分の衣服だけ集め部屋を出た。
そして手早くシャワーを浴びる。
この音で男が起きるかもしれないが、そのときは仕方ないだろう。
鏡に全裸を映し確認しながら一回りする。
身体の何処にも怪我はないようだった。
湯が染みる箇所もない。
シャワーを終えて、取り敢えず着ていた衣類を再び着ようとして気が付いた。
けむり臭い?…。
…何か思い出しそう…
嗅覚の先に記憶の塊があるような気がした。
が、玲奈はとりあえず服を着た。
匂いは気になるがクローゼットは男が寝ている部屋にあった。
部屋に戻る途中で玄関に目をやると、見慣れないスーツケースが置いてあった。
その横に…、
――ギター?
楽器のケースが立てかけてあった。
どちらもあの男の物だろう。
今、ここにある見慣れない物が、それを初めて見た昨日の記憶に結び付こうとしている。
が、決定的な糸口は未だみつからない。
部屋に戻ると、男はまだ寝ていた。
――そうだ…。
シャワーを浴びている間ずっと気になっていたのだ。
玲奈はゴミ箱を確認した。
丸まったティッシュと使い終わって結ばれた それ があった。
玲奈は何だか開き直った気分になってため息をついた…。
まじまじと背を向けて寝ている男を眺めた。
顔を見れば思い出すのだろうか…。
明るく染めたそれなりに長い髪…
起き上がれば肩くらいまであるだろうか…
ブランケットからのぞく腕や肩は、そこまで逞しくはないが筋張っていた。
それにしても気持ちよさそうに寝ていて一向に起きる気配がない。
玲奈はスマホを探した。
ベッド横の小机にハイボールの缶と一緒にあった。
スマホを手に取り見る。
――今日が土曜日だから昨日は…
自室で朝を迎えた描写から書き出された小説は、例えばその手のコンクール等では、その一行を読んだだけで審査員が容赦なく"駄作"とレッテルを貼り切り捨てる、という都市伝説のような話を何処かで聞いたことがあるけれども、ちょっと面白いので、そのように始めてみた。
僕はこの小説が人生で2つめの作品だし、確かに文学賞をとって友達に自慢したいしモテたいけれども、それは納得のいくものが書けるようになってからチャレンジしてみたい大切な夢でもある。
やっとの思いで1つ書いてみて見えたのは、せめて5つ書けたら出してみよう、というフワっとしたプランだった。
…じゃなくて、とにかく玲奈は自室で目覚めた。
柔らかな初秋の陽光がカーテンに差し、そのスクリーンは淡い影を揺らしている。
ふと少し肌寒いと感じた。
見ると玲奈は何も着ていなかった。
驚いて半身を起こす。ここは確かに自分の部屋…。
灯りはついていないが様子を見渡せるくらいには薄明るい。
しわのよったシーツ、脱ぎ散らかった衣服、開けっ放しのテレビラック、ベッド横の小机に種類の違うハイボールの缶が2つ…。
2つ?!
ハッとして玲奈は傍らを見る。
玲奈の隣に男が眠っていた。
ッ?!…
玲奈はしばらく固まって動けなかった。
ベッドの壁側に、こちらに背を向けた格好で男が寝息を立てている。
誰?!
玲奈には、同じベッドで寝るような男の心当たりがない。
え?!何で…
玲奈はひどく混乱し困惑した。
が、何とか平静を保とうと努力した。
玲奈は先ず、その男が目を覚まさないように、静かにベッドを抜け出た。
音をたてぬように衣服を集める、男の衣服もあるので自分の衣服だけ集め部屋を出た。
そして手早くシャワーを浴びる。
この音で男が起きるかもしれないが、そのときは仕方ないだろう。
鏡に全裸を映し確認しながら一回りする。
身体の何処にも怪我はないようだった。
湯が染みる箇所もない。
シャワーを終えて、取り敢えず着ていた衣類を再び着ようとして気が付いた。
けむり臭い?…。
…何か思い出しそう…
嗅覚の先に記憶の塊があるような気がした。
が、玲奈はとりあえず服を着た。
匂いは気になるがクローゼットは男が寝ている部屋にあった。
部屋に戻る途中で玄関に目をやると、見慣れないスーツケースが置いてあった。
その横に…、
――ギター?
楽器のケースが立てかけてあった。
どちらもあの男の物だろう。
今、ここにある見慣れない物が、それを初めて見た昨日の記憶に結び付こうとしている。
が、決定的な糸口は未だみつからない。
部屋に戻ると、男はまだ寝ていた。
――そうだ…。
シャワーを浴びている間ずっと気になっていたのだ。
玲奈はゴミ箱を確認した。
丸まったティッシュと使い終わって結ばれた それ があった。
玲奈は何だか開き直った気分になってため息をついた…。
まじまじと背を向けて寝ている男を眺めた。
顔を見れば思い出すのだろうか…。
明るく染めたそれなりに長い髪…
起き上がれば肩くらいまであるだろうか…
ブランケットからのぞく腕や肩は、そこまで逞しくはないが筋張っていた。
それにしても気持ちよさそうに寝ていて一向に起きる気配がない。
玲奈はスマホを探した。
ベッド横の小机にハイボールの缶と一緒にあった。
スマホを手に取り見る。
――今日が土曜日だから昨日は…