第33話 ゲンスブールについての独り言

文字数 774文字

 アルバムとしては、「メロディー・ネルソンの歴史」が大好きである。
 ボショボショと、呟き、(ささや)くように歌うゲンスブール。
 しかし、聴いているうちに、訳の分からない感動に包まれることになる。

 フランス語で歌っている。歌詞にはあまり意味がないことが分かっているので、訳詞をさほど追おうとも思わない。ただただそのメロディーに酔うばかりだ。下田逸郎いわく、「うたことば」というのがあるらしい。何をいっているのか分からなくても、唄には「それを伝える力のようなものがある」と。

 圧倒的な存在感。シンプルなエレキギター。まるで力のチの字も入っていない。だから聴く側としても、力の入れようもない。ただ、気持ちよく、リラックスすることができるだけ。聴いているうちに、自然、ニヤけてくる。脱力、脱力。しかし、リズムに合わせて身体は自然と動き、妙なエネルギーが湧いてくる。

「くたばれキャベツ野郎」「ゲンスブール版女性飼育論」も、メロディー・ネルソンと同じく大好きである。甲乙なんかつけられない。このひとの、ぜんぶが好き。それが、ファンというものだろう。
「第四帝国の白日夢」の、やっぱりわけのわからない、でも前進的な、といってどこに向かうわけでもない、リズミカルさも大好きである。

 ゲンスブールといえば、カラオケでも歌える「ジュ・テーム…」が代表曲かもしれないが、「プレヴェールに捧ぐ」には涙ぐむのをを禁じ得ないし、「セックス・ショップ」のメロディの美しさには心酔するのみである。
 ブリジッド・バルドーと歌う「ボニーとクライド」、「イニシャルBB」。「チャーリー・ブラウン」「エマニュエル夫人のテーマ」「お前の体はジグ・ザグだ」、「手ぎれ」、「メスのカバ・イポポダム」…

 ゲンスブールを聴きながら、お酒を飲めたりタバコを吸えたりしているうちは、ぼくは性懲りも無く幸せである。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み