第12話

文字数 785文字

バスの運転席、すぐ後ろに座る幼い男の子。一番前方の景色が見えなくなる席。はしゃいでいた。楽しそうに。

運転席にある操作系のトルグスイッチ。機能表示するためのランプ類。停車と発進。繰り返しなるアナウンス。幼い男の子にとって、興味の対象になるのは…当然だ。

帽子から覗く白髪交じりは、ベテラン運転士を感じさせて。日々、ハンドルを握って…飽きる程に把握した道を走って。

幼い男の子は、車外が見える窓と広告で景色が見えなくなるアクリル板の間に顔を押し当てて、覗いていた。黙りながら。熱心に。

運転士さんは、ニヤニヤ笑う。幼い男の子の好奇心に。同じことをしている男の子を、何人も見てきただろう運転士さんの反応に。

男の子「…コイツは良い奴だ」

明らかに、運転士さんの後頭部に目線が向かって。笑顔をくれた運転士さんに関心が向いたようだ。幼い男の子の後頭部を眺めながら、笑顔になっているのは…優しい問題。

だんだん背筋が伸びてきて、話しかけようとしているのか…。それは、待って。事故になる…。

母親「邪魔したら。あかんよ?ウフフッ」
男の子「…ニヒヒッ」

男の子は母親に笑みを振り向き返していた。考えていることを、優しい口調で。母親から伝えられ。見透かされて。ちょっと嬉しそうにしている。ハハッ。

悪い事しないので、怒らないで?って笑みにも見えた横顔。実際は怒られたことないだろうな?あの幼い男の子。

近所に大手コーヒー専門店が出来ていた。黙りながら、前を通りすぎた。ガラス越しにアルバイトさんと店員さんが見えた。

あの子達の楽しいは、僕の近くにはなかった。見映えの良い整った外観。店内の空気と統一された世界観。小物や観葉植物。

働く人の手間を考慮されたメニューと味のバランス、価格。僕が独りになる理由を探した。

僕「また、独りか…」

競馬で負けて怒鳴り散らす人。理不尽に感情的。あぁは。なれないのも…悪いのかもな。

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