第5話 ショックの連続
文字数 3,219文字
「右側一世…?もしかしておじさんの知り合いなの?僕を助けてくれたの?」「質問は後だ、脚を見せてみろ。」僕の質問を遮 って僕の脚を手にとった。
「やっぱり毒におかされていたか。」
その言葉を聞いて自分の脚を見てみると驚いたことにまだら模様ができている。僕の白い脚は青カビチーズとかいうやつみたいになっていてちょっと吐き気がした。
「なにこれ、僕の脚はどうしちゃったの!?」「これは呪毒といって、恨みをもって死んだ化生 や魔物の体の一部から染み出てくる毒なんだよ。おそらく敵の本拠地にいた君の周りには魔物達の死体でもあったんだろう。」
「うん、ミルベウスって奴が周りに怪物達の頭を置いてたんだよ。」
「そうか、奴にあったんだな。取り敢えず解毒が先だ。まあこの分だと心配する必要はないよ。」
そう言って彼は僕のすねに、白地に文字を書き込んだ布を巻いて何かを呟いた。すると、すねが光った。
「これでよし。あと1時間ぐらいしたらこの布をとっていいぞ。」「今なにしたの?」
という質問に彼はにやりとして答えた。
「そりゃもちろん悪魔が使う術なんだから魔術さ。」
悪魔だって?それにしては荘厳 さも貫禄 もないなあ。
「君は右側一世だって言ったけど、もしかして君も白の宝珠を取り返しに来たの?」
「そうさ。魔神様に頼まれてね。君が白の宝珠に選ばれた子だね。名前はなんてんだい?」
「南郷光一郎。」
それよりも言わないといけないことがある。
「へえ、光一郎か。これから俺はお前と行動する事になるんだ、よろしくな。」
「そんなことよりも、左側一世が…。」「やられたんだろ。
安心しな。彼はエネルギーの集合体だ。バラバラになったってことはエネルギーが飛び散ったってだけだ。集めりゃまた元に戻るさ。」
僕はそれを聞いて安心した。おじさんが言ってたことは本当だったんだね。
だったら僕も成長するよ。
「……そんなことよりってなんだよ。お前は明日から俺と一緒に化け物どもと闘うんだぜ。お互いを信頼し合わなくちゃ奴らには勝てねえ。その為の信頼の第一歩が自己紹介だろうが。」
「ご、ごめんなさい。」彼はムスッとしている。
「と、その前に俺はお前が持ってる白の宝珠を返しに行かなきゃならん。2つ持ってるんだろ。1つよこせ。」
なんで分かったんだろう。僕は疑問に思いながら1つ渡した。
「なんで分かったのかって顔してるな。教えてやるよ。
六宝珠は元々は1つだった。それ故に一つ一つの宝珠が引き合うのだ。それが例え左側一世の切り開いた異空間を超えた先でもな。
お前を助けたのも宝珠の引き合う力だ。
当然すぐそばにある宝珠の数ぐらいわかるってわけだ。」
なるほど。でもまだ疑問はある。
「白の宝珠一個だけよりも二個使った方が強くなれるんじゃないの?」
「お前には二個同時に使いこなすだけの力がない。それにこれは天界にあるべき秘宝なんだ。そうやたらに持ち出すものじゃない。
とにかく今日は休んで明日から特訓だ。まずは鍛えることから始めないとな。
選ばれし人間とはいっても、お前はまだただの子供だものな。」
彼は地面に絵を描き始めた。
なにそれ、と僕がたずねると彼は
「これは天界に帰るための術式さ。俺だけの力で帰ったら時間がかかるから、大地の神の力を借りるんだ。」
と言ってブツブツとまた呪文を唱え出した。
…そうだ!
「この世界って少しずつ変わってるんだよね。だとしたら僕の家の場所も変わってるかもしれない。どうしよう。」
困った困ったと僕が悩んでいると、
「仕方がない。俺の魔術で家まで飛ばしてやるよ。こっちへ来い。」
と言われ彼の方へ行くと右手に小さく文字を書かれて頭と右肩とお腹を触られた。
「よし、これで完了だ。これからお前は自分の家に帰りたいときは右手を握りこぶしのまま高くかかげろ。そうすれば飛んで帰られる。さあ、飛べ。」そういって僕は飛ばされた。
僕は自分の家の前にいる事に気付いた。家の見た目も表札も変わってはいなかった。家に入ろうとすると向こうから見たことのある奴がやってきた。
よしすけ…鈴木善助だ。中学一年生でこの町のガキ大将みたいな奴だ。
ヒーローごっこだとか言って殴られたり、買ったばかりの漫画を取られたりしたことがある。
全く顔も合わせたくないような奴だ。知らんふりしてやろうか。
「よう、光一郎じゃんか。」
向こうから挨拶 をしてきたとあっては無視するわけにも行かなくなった。
なんたってこんな時にこの道を歩いているんだ。
「…何か用?」
と僕が尋ねると、奴はえっ?て顔をした。
「何って用はないけどお隣さんには挨拶するのは当たり前じゃないか。」
それを聞いて僕はギョッとした。
お隣さんだって?冗談じゃない。僕の家の隣は洋子ちゃんの家……………じゃない。
表札が『花野』ではなく『鈴木』となっている。
「どうしたんだ光一郎?なんか悩みでもあるのか?」
その言葉で僕が振り返ると善助の奴が心配そうにこちらを見ているのが分かった。
どうしたんだと言いたいのはこっちの方だ。なんだか人が変わったんじゃないの。
お互いに黙って見つめ合っていると遠くから声がした。
「鈴木せんぱーい!」
知っている声だ。まさしく洋子ちゃんの声だった。彼女は駆けてこちらへやってきた。
「鈴木先輩、探しましたよ。ここにいたんですね。」
「ごめんごめん。忘れ物を取りに帰ってきたんだ。でもさ、まだ待ち合わせの時間には20分もあるじゃん。」
洋子ちゃんが善助と楽しそうに話してる。それに洋子ちゃんが浴衣姿だ。
「ど、ど、どっか行くの?」
とさりげなく聞くと
善助が「これから初デートに花火を観に行くんだ。知ってるだろ、本所河原祭り。
それが今日そこの河川敷で開かれるんだ。光一郎は行ったことなかったっけ?」と言った。
僕は途中から話が頭に入ってこなかった。
え?デート?洋子ちゃんとガキ大将が?僕付き合ってたなんて知らなかったよ。
知らなくてよかったよ。
「あっママー!あのお兄ちゃんだよ、わたしのお人形さんさがしてくれたの。」
その声に振り返ると小さな女の子がぴょんぴょんと跳ねながらお母さんらしき女の人に両手を振っていた。
母親の方は善助にお辞儀をしながら言った。
「この子のお人形を捜してくれてどうもありがとうございます。お人形を無くしてからのこの子はずっと落ち込んでたんですよ。
なんとお礼を申し上げれば良いやら。」
「いえ、当然のことをしたまでです。年下の子が泣いていたから助けてあげた、それだけです。
僕らはこれから用事があるのですみませんが余りお話をする時間はないんです。」
と、善助が返すと親子は頭を下げながら立ち去っていった。
「鈴木先輩、さすがです!知らない子のためにも頑張るなんて。」
と洋子ちゃんは感心している。
なんだよ。すっごくいい奴じゃないか。これも宝珠の力なの?だとしたらすっごい嫌がらせだ。
僕はいつか善助の奴を殴ってやろうと思ってたんだ。意地悪で嫌な奴だから。
でも、目の前にいるこいつは昨日までのこいつじゃなかった。
ご近所づきあいができて、小さい子を助けることができて、しかも洋子ちゃんもこいつのことが…。
「あっ!やばいそろそろお祭りが始まっちゃうな。悪い、光一郎。俺たちもう行かなきゃ。じゃあな。」
「バイバイ光一郎君。また明日学校で会いましょ。それじゃあね。」
待って、待ってよ。2人の影は夕日の中に消えていった。
今日はいろんなことがあった。
でも、他の事がどうでも良くなるぐらいに今起きた出来事が今日1番のショックだった。
「やっぱり毒におかされていたか。」
その言葉を聞いて自分の脚を見てみると驚いたことにまだら模様ができている。僕の白い脚は青カビチーズとかいうやつみたいになっていてちょっと吐き気がした。
「なにこれ、僕の脚はどうしちゃったの!?」「これは呪毒といって、恨みをもって死んだ
「うん、ミルベウスって奴が周りに怪物達の頭を置いてたんだよ。」
「そうか、奴にあったんだな。取り敢えず解毒が先だ。まあこの分だと心配する必要はないよ。」
そう言って彼は僕のすねに、白地に文字を書き込んだ布を巻いて何かを呟いた。すると、すねが光った。
「これでよし。あと1時間ぐらいしたらこの布をとっていいぞ。」「今なにしたの?」
という質問に彼はにやりとして答えた。
「そりゃもちろん悪魔が使う術なんだから魔術さ。」
悪魔だって?それにしては
「君は右側一世だって言ったけど、もしかして君も白の宝珠を取り返しに来たの?」
「そうさ。魔神様に頼まれてね。君が白の宝珠に選ばれた子だね。名前はなんてんだい?」
「南郷光一郎。」
それよりも言わないといけないことがある。
「へえ、光一郎か。これから俺はお前と行動する事になるんだ、よろしくな。」
「そんなことよりも、左側一世が…。」「やられたんだろ。
安心しな。彼はエネルギーの集合体だ。バラバラになったってことはエネルギーが飛び散ったってだけだ。集めりゃまた元に戻るさ。」
僕はそれを聞いて安心した。おじさんが言ってたことは本当だったんだね。
だったら僕も成長するよ。
「……そんなことよりってなんだよ。お前は明日から俺と一緒に化け物どもと闘うんだぜ。お互いを信頼し合わなくちゃ奴らには勝てねえ。その為の信頼の第一歩が自己紹介だろうが。」
「ご、ごめんなさい。」彼はムスッとしている。
「と、その前に俺はお前が持ってる白の宝珠を返しに行かなきゃならん。2つ持ってるんだろ。1つよこせ。」
なんで分かったんだろう。僕は疑問に思いながら1つ渡した。
「なんで分かったのかって顔してるな。教えてやるよ。
六宝珠は元々は1つだった。それ故に一つ一つの宝珠が引き合うのだ。それが例え左側一世の切り開いた異空間を超えた先でもな。
お前を助けたのも宝珠の引き合う力だ。
当然すぐそばにある宝珠の数ぐらいわかるってわけだ。」
なるほど。でもまだ疑問はある。
「白の宝珠一個だけよりも二個使った方が強くなれるんじゃないの?」
「お前には二個同時に使いこなすだけの力がない。それにこれは天界にあるべき秘宝なんだ。そうやたらに持ち出すものじゃない。
とにかく今日は休んで明日から特訓だ。まずは鍛えることから始めないとな。
選ばれし人間とはいっても、お前はまだただの子供だものな。」
彼は地面に絵を描き始めた。
なにそれ、と僕がたずねると彼は
「これは天界に帰るための術式さ。俺だけの力で帰ったら時間がかかるから、大地の神の力を借りるんだ。」
と言ってブツブツとまた呪文を唱え出した。
…そうだ!
「この世界って少しずつ変わってるんだよね。だとしたら僕の家の場所も変わってるかもしれない。どうしよう。」
困った困ったと僕が悩んでいると、
「仕方がない。俺の魔術で家まで飛ばしてやるよ。こっちへ来い。」
と言われ彼の方へ行くと右手に小さく文字を書かれて頭と右肩とお腹を触られた。
「よし、これで完了だ。これからお前は自分の家に帰りたいときは右手を握りこぶしのまま高くかかげろ。そうすれば飛んで帰られる。さあ、飛べ。」そういって僕は飛ばされた。
僕は自分の家の前にいる事に気付いた。家の見た目も表札も変わってはいなかった。家に入ろうとすると向こうから見たことのある奴がやってきた。
よしすけ…鈴木善助だ。中学一年生でこの町のガキ大将みたいな奴だ。
ヒーローごっこだとか言って殴られたり、買ったばかりの漫画を取られたりしたことがある。
全く顔も合わせたくないような奴だ。知らんふりしてやろうか。
「よう、光一郎じゃんか。」
向こうから
なんたってこんな時にこの道を歩いているんだ。
「…何か用?」
と僕が尋ねると、奴はえっ?て顔をした。
「何って用はないけどお隣さんには挨拶するのは当たり前じゃないか。」
それを聞いて僕はギョッとした。
お隣さんだって?冗談じゃない。僕の家の隣は洋子ちゃんの家……………じゃない。
表札が『花野』ではなく『鈴木』となっている。
「どうしたんだ光一郎?なんか悩みでもあるのか?」
その言葉で僕が振り返ると善助の奴が心配そうにこちらを見ているのが分かった。
どうしたんだと言いたいのはこっちの方だ。なんだか人が変わったんじゃないの。
お互いに黙って見つめ合っていると遠くから声がした。
「鈴木せんぱーい!」
知っている声だ。まさしく洋子ちゃんの声だった。彼女は駆けてこちらへやってきた。
「鈴木先輩、探しましたよ。ここにいたんですね。」
「ごめんごめん。忘れ物を取りに帰ってきたんだ。でもさ、まだ待ち合わせの時間には20分もあるじゃん。」
洋子ちゃんが善助と楽しそうに話してる。それに洋子ちゃんが浴衣姿だ。
「ど、ど、どっか行くの?」
とさりげなく聞くと
善助が「これから初デートに花火を観に行くんだ。知ってるだろ、本所河原祭り。
それが今日そこの河川敷で開かれるんだ。光一郎は行ったことなかったっけ?」と言った。
僕は途中から話が頭に入ってこなかった。
え?デート?洋子ちゃんとガキ大将が?僕付き合ってたなんて知らなかったよ。
知らなくてよかったよ。
「あっママー!あのお兄ちゃんだよ、わたしのお人形さんさがしてくれたの。」
その声に振り返ると小さな女の子がぴょんぴょんと跳ねながらお母さんらしき女の人に両手を振っていた。
母親の方は善助にお辞儀をしながら言った。
「この子のお人形を捜してくれてどうもありがとうございます。お人形を無くしてからのこの子はずっと落ち込んでたんですよ。
なんとお礼を申し上げれば良いやら。」
「いえ、当然のことをしたまでです。年下の子が泣いていたから助けてあげた、それだけです。
僕らはこれから用事があるのですみませんが余りお話をする時間はないんです。」
と、善助が返すと親子は頭を下げながら立ち去っていった。
「鈴木先輩、さすがです!知らない子のためにも頑張るなんて。」
と洋子ちゃんは感心している。
なんだよ。すっごくいい奴じゃないか。これも宝珠の力なの?だとしたらすっごい嫌がらせだ。
僕はいつか善助の奴を殴ってやろうと思ってたんだ。意地悪で嫌な奴だから。
でも、目の前にいるこいつは昨日までのこいつじゃなかった。
ご近所づきあいができて、小さい子を助けることができて、しかも洋子ちゃんもこいつのことが…。
「あっ!やばいそろそろお祭りが始まっちゃうな。悪い、光一郎。俺たちもう行かなきゃ。じゃあな。」
「バイバイ光一郎君。また明日学校で会いましょ。それじゃあね。」
待って、待ってよ。2人の影は夕日の中に消えていった。
今日はいろんなことがあった。
でも、他の事がどうでも良くなるぐらいに今起きた出来事が今日1番のショックだった。