詩小説『薄荷味の縁側にて』3分の暮らし。全ての大人へ。

エピソード文字数 711文字

薄荷味の縁側にて

この香りはあなただ。
口に入れたなら、澄み切っていく。
見違えるように、潤っていく。

開け放った縁側に、
胡座をかいて座り込む。

壁に立て掛けられた竹箒。
集めたはずの落ち葉は、
風にさらわれ、散らばっていた。

通りがかりの野良猫一匹。
こちらに気づき、慌てて駆け出し、
丸まるツツジの中へと消えていった。

舞い込んで来るのは、生温い風。
秋の日は暖かく、うたた寝日和だ。

ゆっくりと走る車の音。
微かに誰かと誰かが話す声。
風呂を沸かせる音と湯気。
そこには人の生きる生活音がある。

あなたとの暮らしを浮かべてました。
生温い温度で続いています。
日々はだらっと垂れ流されるように。

行きずりの関係には肩書きがない。
長ったらしく続けてみても、
残るのは虚しさだけ。

書き綴るペン先は、
終止符という文字を知らない。
それならば、どうか、どうか、
このインクが切れるまでは。

秋風に誘われるままに、
あなたは私の隣へ腰を降ろし、
縁側のふちで足を投げ出して、
バタ足みたく揺らしていた。

頬を飴玉で膨らまし、
言葉もないまま微笑むと、
僕の方へと擦り寄って、
口付け交わし、
飴玉は僕へと移されました。

なんて澄み切ってるんだろう。
見違えるほどに潤うの。
汚れてることなんて忘れてしまう。
終わりがあることすら忘れてしまう。

太くなくていい。
ただ短くてはいけない。

か細くて構わない。
長くあれ。

別れよ、じゃれてくるなと、
口に飴玉、縁側にて目を閉じた。

蜜を垂れ流すようにふたり、
見慣れた日々よ、
生涯忘れ得ぬ想い出になるかもしれない。

この香りはあなただ。
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登場人物紹介

主人公はあなたです。それぞれの恋愛模様を『詩小説』で。

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