第25話 蘇るミシュアの声

文字数 1,385文字

「あなた、鍵は?」声とスリッパの音が追いかけてくる。
「いや、自転車はいいや、歩いていく」振り向いて頷いた。
「それがいいですね。最近少しお腹が出てきましたものね」
「大きなお世話だ」気づかれぬように腹を撫でた。そんなことは自分が一番よく分かっている。

 通りに出ると、柔らかな日差しが家々の隙間の道路に落ちていた。“嘘です” 私もどこかで妻に使ってみよう。たまにはやり返しておかないとな。

 見上げた空にはのんびりと、うろこ雲が浮かんでいた。



 あなたがすがろうとした宗教が神の声を代弁し、そしてあなたを救い、癒すなどとはゆめゆめ思わないことです。
 あなた方がもう少し進化すれば、地上から

でしょう。

 ミシュアの声だ。

 

。それを念頭に置いて行動することは、けっして難しいことではありません。わたしたちはそもそも、ひとつなのですから。しかし人類はそれを忘れたかのように見えます。

 他に道はたくさんあったとしても、たったそれだけを追いかければ、きっと真実が見えてきます。揺るぎのないものが姿を現します。愛を放射すれば、愛が返ってきます。なぜなら神は愛。

 愛を映す鏡だからです。

 原初から終わりまで、アルファからオメガまで、たったひとつのものしか存在しません。それが神、大いなる存在です。それ以外は存在しないのです。だからあなたもわたくしも神の一部なのです。

 厳密に言えば、始まりも終わりもありません。時間というものも存在しません。あなた方の偉大なる教師仏陀は、それを無始無終と説きました。

 余計なことは考えない方が賢明です。心を無にする時間を作ってください。
 思考は悲観を好みます。やがてそれは否応なく不安を呼びます。思考はあなたを不安へと導いてゆきます。

 あなたが迷うのは自然のことです。しかしそれが、迷い苦しむ状況であるのなら、迷わないことです。

ことです。
 あなたの行く道は、迷っても迷わなくても同じです。しかし、我欲を捨てれば、少しだけ違った、素晴らしい世界へ移行できます。

 あなた方の偉大なる教師仏陀は、その境地をなんと呼んだかご存じですか。
 無念無想です。
 過去でもなく、未来でもなく、今という一瞬を生きてください。

 あなた方の地上での命には限りがあります。生まれいずる前はその期限を知っていたのに、人類は、あえて忘れるようにできています。
 今日を最後と思って、日々を大事に生きてください。地上での最後の日は、予期せぬ時に必ず訪れるのですから。



 あなたに関わるすべての人を()めてあげなさい。関われることに感謝しなさい。しあわせを祈りなさい。そしていつも笑っていなさい。

 辛ければ、悲しければ、泣いてもいいのです。そこから立ち直ったら、何事もなかったかのように笑っていなさい。あなた方日本人はとても素敵な言葉を持っています。

「笑う(かど)には福来(ふくきた)る」

 これがわたくしが、最後に贈る言葉です。
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