番外編 図書室での後の夜-前編-
文字数 1,500文字
「して、どうでしたか? リア様とお二人で過ごしてみて……」
「セルバン……どうというのは……」
「ほら、リア様の印象など……何かありませんか?」
「印象か……」
正直言って、突然現れた魔術師を名乗るあの少女の存在はとても怪しい。
確かに現状彼女に頼る他ないし、一見して人も良さそうだ。しかし言動の節々に何か隠している気配があるので、完全に信用するべきか否か情報が欲しいところである。
だから私は殿下の判断を仰ぐためにもそう聞いた。
そうしてアルフォンス殿下は「ふむ」としばらく考え込んだのちに、ぽつりと呟いた。
「可愛かった……」
「…………はい?」
何やら、とても不自然な単語が聞こえてきた気が……。
殿下も馬鹿ではない、私が『彼女が信用できる人物かどうか』という点のご自身の見解を求めたことを分からないはずがない……ないよな……。
「いや、違うぞっ!!」
「そうでしたか、安心しました」
一瞬、疑いかけてしまったが違うらしい……いや、よかった。
「だからその、彼女はな……」
「はい」
「……児童書や童話が好きらしい」
「………………」
ふむ、なるほど児童書や童話が好き…………。
いや、流石に訳がわからない!! 殿下は何を考えているのか……。
これでは最初の可愛かったの方がまだマシなくらいだ。
そもそも、お二人は図書室で一体どんなやりとりをしたのかが疑問である……。
「あ、あとな……笑顔が素敵だった……」
そう仰ったアルフォンス殿下は、視線をふらふらと泳がせたすえに片手で顔を抑え俯いてしまった。
「………………」
これは……これは……うむむ。
まさか……この僅かな間に骨抜きにされたのだろうか。
確かにリア様は可憐で美しいお方だ。
私も昨晩、薄暗がりの中で遠目から僅かにお姿を拝見しただけも、思わず見惚れてしまったほどである。恐らく老若男女問わず、彼女に対して同じような反応をするだろう。
しかも不思議な雰囲気を持ち合わせており、一度目にするとけっして忘れられないとても魅力的な女性だと言える。
正直、社交界で美しい女性は数多く見てきたつもりだったが、それを含めてもリア様は明らかに別格と言ってもいいだろう。
だがそうだったとしも、アルフォンス殿下はまぁ……元々お盛んな方であったため間違いなく女慣れはしているはずだ。
少しのことでどうこうするとは……いや、しかしこの10年のことを勘案するとそうもなるか……。
…………あ、重要なことに気付いてしまったかも知れない。
アルフォンス殿下の女性遍歴 を手繰ったところ、リア様のようなタイプは恐らく……いや、間違いなくいない。
完全にリア様の性格を把握している自信はないが、あの方は屈託 なく純粋でしかも心優しい人柄に思えた。
これははっきり言って当時のアルフォンス殿下とは相性の悪い性格だ。
色々とタチの悪い性格だった殿下は、善良な人柄であればあるほど反 りが合わなかった。だから近くにそのような人物がいた可能性は無いに等しい。
というか私の知る限りいなかった。
つまりこの10年ですっかり毒気 が抜けたところに、リア様のあの性格が効きすぎてしまったということか……?
確か呪いを解くために、真実の愛どうこうというものもあったが……この調子ではとても…… 。
「はぁ……」
物憂 げにため息をつくアルフォンス殿下を見て、私も別の意味でため息を付きたくなったのだった。
「セルバン……どうというのは……」
「ほら、リア様の印象など……何かありませんか?」
「印象か……」
正直言って、突然現れた魔術師を名乗るあの少女の存在はとても怪しい。
確かに現状彼女に頼る他ないし、一見して人も良さそうだ。しかし言動の節々に何か隠している気配があるので、完全に信用するべきか否か情報が欲しいところである。
だから私は殿下の判断を仰ぐためにもそう聞いた。
そうしてアルフォンス殿下は「ふむ」としばらく考え込んだのちに、ぽつりと呟いた。
「可愛かった……」
「…………はい?」
何やら、とても不自然な単語が聞こえてきた気が……。
殿下も馬鹿ではない、私が『彼女が信用できる人物かどうか』という点のご自身の見解を求めたことを分からないはずがない……ないよな……。
「いや、違うぞっ!!」
「そうでしたか、安心しました」
一瞬、疑いかけてしまったが違うらしい……いや、よかった。
「だからその、彼女はな……」
「はい」
「……児童書や童話が好きらしい」
「………………」
ふむ、なるほど児童書や童話が好き…………。
いや、流石に訳がわからない!! 殿下は何を考えているのか……。
これでは最初の可愛かったの方がまだマシなくらいだ。
そもそも、お二人は図書室で一体どんなやりとりをしたのかが疑問である……。
「あ、あとな……笑顔が素敵だった……」
そう仰ったアルフォンス殿下は、視線をふらふらと泳がせたすえに片手で顔を抑え俯いてしまった。
「………………」
これは……これは……うむむ。
まさか……この僅かな間に骨抜きにされたのだろうか。
確かにリア様は可憐で美しいお方だ。
私も昨晩、薄暗がりの中で遠目から僅かにお姿を拝見しただけも、思わず見惚れてしまったほどである。恐らく老若男女問わず、彼女に対して同じような反応をするだろう。
しかも不思議な雰囲気を持ち合わせており、一度目にするとけっして忘れられないとても魅力的な女性だと言える。
正直、社交界で美しい女性は数多く見てきたつもりだったが、それを含めてもリア様は明らかに別格と言ってもいいだろう。
だがそうだったとしも、アルフォンス殿下はまぁ……元々お盛んな方であったため間違いなく女慣れはしているはずだ。
少しのことでどうこうするとは……いや、しかしこの10年のことを勘案するとそうもなるか……。
…………あ、重要なことに気付いてしまったかも知れない。
アルフォンス殿下の
完全にリア様の性格を把握している自信はないが、あの方は
これははっきり言って当時のアルフォンス殿下とは相性の悪い性格だ。
色々とタチの悪い性格だった殿下は、善良な人柄であればあるほど
というか私の知る限りいなかった。
つまりこの10年ですっかり
確か呪いを解くために、真実の愛どうこうというものもあったが……この調子ではとても…… 。
「はぁ……」