冷たい腕の記憶
文字数 252文字
――止めろ!
誰かが叫んだ。おそらくは、男だろう。
光る何かが、振り下ろされる。
何かを庇う様に、腕が伸ばされる。
僅かな弧を描き、それは地面に叩きつけられた。
冷たい金属音に続いたのは、絹を裂く様な悲鳴。
力なく落ちた手のひらは、もう二度と動かない。
――……には関係の無い事だ!
鮮やかな赤に塗れ、男は叫んだ。
誰を庇っているのかは分からない。
叫ぶ声の主の顔も見えない。
しかし、それは、まるで自分の事の様に思われた。
その名前は、明らかに違うはずなのに。
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