第91話  めんこい女の子で、マジゲロ吐きそうなデラ美人

エピソード文字数 4,410文字

 ※ 


 美優ちゃんや王二朗くんとの話し合いも終わり、屋上から急いで教室へ戻る。


 戻った瞬間に休憩時間が終わると、俺を発見した西部は指差しながら睨んできやがる。


 やっと戻って来たか。ってな感じだな。

黒澤、後でゆっくり聞かせてもらうぜ

 ああ、是非そうしてくれ。


 ゆっくり考える時間も無かったので、授業が始るこのタイミングでよかったと思う。

おかえりっ!

 爽やかな染谷くん。何となく俺達がテンパってるのを分かっているのか、何も聞いてこない。

 

 君のこういう所が凄く助かるんだよな。


 染谷くんには美優ちゃんと話し合いの後、説明するから。

蓮くん。西部くんは任せてくだしゃい

 こそこそと伝えてくる美優ちゃんに、その後ろから西部の目がギラギラ輝いてるぜ。



 そして聖奈は寝たまんまか。

 まぁこの話は、こいつにはあまり関係無さそうだし、寝たけりゃ思う存分寝たらいいさ。


 その時、小さな声で「あいっ」っと聞こえてきた。

 聖奈の寝顔に少しながら微笑ましく思えてくる。


 


 そして教壇に向き直った時、思わず美優ちゃんと視線が重なる。

 彼女もニコっと笑顔を見せてくれると、こちらも同じように返していた。

 ふうっ。やっと落ち着いて考えることが出来る。


 

 

 さっき王二朗くん達が来なければ……あの後どうなったのだろうか?

 二人きりで話してて、色々とぶっ飛びそうになったのは間違いない。

 今こうやって、机に座っていると冷静に物事が考えられるようになった。



 とりあえずは彼女との関係も今以上を求めてはならない。

 このスタンスだけは崩しちゃダメだ。


 今のままでいい。今のままで……


 十分仲の良い関係なのに、ここでまた波風を立たせたくない。


 壊したくない。この関係を……

 俺にとってはそれが一番大事なんだ。




 でも何故、魔優ちゃんと名乗ったあの子のことをママと言ったのだろうか? これが一番の謎だ。


 どう考えても、美優ちゃんのママは楓蓮が世話になってるクルクル白竹ママの方だろう。

 それなのに何故……



 先程も考えてたが、蓮ではクルクルママを知らないからな。

 だから美優ちゃんはそう言ったのかも知れないが、そんなの蓮が喫茶店に行ってしまえばすぐにバレるだろ?


 それなのに、美優ちゃんの話を聞く限り嘘とは思えないし、俺に分かってもらおうと必死になっていた。


 う~ん。訳が分からんというのが結論だが、本人もあまり聞いて欲しく無さそうだとは思ったので、この話は話題に出さない方が無難だ。




 もう一つ気になるのが「女の子に見えますか?」というあの質問だ。


 あの時の美優ちゃんは、常に真剣だった。というか何処となしか怯えていたような気もする。

 今でこそ思うのが「あの時、そう言って欲しかった」そんな気がするんだ。


 美優ちゃんは何故急に……そう思ったのだろうか。

 こればかりは彼女の気持ちになってみないと、俺だけの解釈だけで答えに辿りつくのは難しそうだ。

 ※


 授業開始から十五分ほど。


 不意にスマホがブルったので、教科書で隠しながら画面を確認してみると、SNSでのメッセージが着弾していた。

ちょっといい? 授業中悪いんだけど

 おっと。王二朗くんじゃないか。

 っていうか君も授業中だろ? とか思ったが、彼はSNSでやり取りしない? と提案してくる。


 丁度授業にも飽きてきてた所なので助かるぜ。



 そう思い王二朗くんの提案を承諾したが、どうせなら染谷くんや魔樹も一緒に改めて紹介したいと思った俺は早速提案する。が……

いや、俺は顔に似合わずシャイなんで。まずは君に餌付けしてもらいたいなと

 やべっ。失笑したのが周りの人間にバレてしまうと、染谷くんや美優ちゃんまで振り返ったじゃねーか。



 う~ん。確かに染谷くんや魔樹は一度は面識はあるけど、一気に紹介されるっていうのは、俺も無理なような気がする。


 この案はまず俺がしっかり王二朗くんとタッグを組んでからにしようか。

 そんなに焦っても仕方がないしな。



 その件はまた今度とメールを送ったが、次の受信が中々返って来ない。

 そう思っているとようやく王二朗くんが返してくる。

黒澤くんごめん。やっぱ直で話し合わない? ゴリにはこんな高度な精密機械使うの苦手でさ、文字のカーソルが小さすぎて、打ちにくくて

 ふふっと笑った瞬間、みんなが注目する前に立ち上がった俺は「すません。トイレ行きます」と逃げるように教室から出て行った。


 あぶねー。二回目はマズいだろと思って、笑いを隠しながら逃走に成功した俺は、まずはトイレに向かう。


 すぐに王二朗くんに連絡すると、その五分後。彼がやってきた。という訳で男子トイレでの密会となった。 

ごめんね。授業サボらせまくって
いえいえ。全然いいよ。それよりも色々と話し合わないとね
黒澤くん。やっぱり君には早く教えておこうと思って
聞きたいことは沢山あるが、王二朗くんもやたら急務らしいので、まずは彼からの警告とやらを聞いてみよう。


 

 まず王二朗くんが言うには君は間違いなく竜王さんに狙われるってことだ。


学校じゃ分からないけど、外で出会ったりしたらケンカ吹っかけてくる確率は100%だろう

そうなんだ……まぁ俺は狙われても全然平気なんだけど。
あいつはケンカになると、基本自分の手を汚そうとはしない。襲ってくるとしたら見ず知らずの頭の悪い連中が、君に因縁つけてくる可能性が高い
そんな奴俺が逆にボコるから大丈夫だよ
 俺が平然とした態度で言ったのが意外だったらしい。
君って結構強い感じ。っぽいね? なんとなく分かるわ

 おっと俺のケンカ強いオーラを感じ取ってくれたのか? 

 それは説明しなくていいから助かるぞ。

竜王さんはそういうヤンキーっぽい繋がりがあるの?

前に住んでた地元には結構沢山いるが、やるなら現地調達したヤンキーで突っかかってくると思う。

あいつ。捨てゴマ使うの好きだから

 なるほどね。自分の手は汚さず人にやらせるってか。
だけど、あんな女の子がヤンキーを調達できるとは思わないんだけど

いや。あいつを甘く見たらダメだ。その辺のヤンキーよりもクッソ強いから

あの容姿に騙されちゃいけない。中身は99%男だと思った方がいい

男って……

ああ。その辺は長年の付き合いがある俺を信用して欲しい。


しかもケンカのレベルは俺と大して変わらん

 マジかよ。巨漢である王二朗くんと互角だと? 

 それにも驚いたが、彼は更に続ける。

それにもう一つ注意して欲しいのが、あいつの兄貴だ
 兄貴?
同じ髪の色してて、こっちもムカツクほど男前なんだけどさ、そっちの兄貴の方がヤベーから

 竜王さんの兄貴? 兄貴。兄貴……


 まさか、あのナンパーマンじゃねーだろうな?

 

 確か早朝マラソンの時も「竜王」って名乗ってた気がする。


 やっぱあの男もろくでなし野郎だったか。

なるほどね。大体分かった
何かあれば教えて欲しい。すぐに駆けつける

 蓮の方はこれくらいでいいだろう。

 エンカウントしたらぶっ潰す以外に選択肢は無いからな。


 特に、兄貴の方は遠慮なくやらせてもらうぜ。

ねぇ。そういえば何で竜王さんとケンカしてたの?
 俺は話題を変える。

あいつね……急に高校辞めるとか言い出すんだよ。つまんねーとかで。

それよりも攫いてー女の子見つけたらしくってね。アホかって話になってたんだよ

 それで言い合いになってたのか。
その攫いたい子ってどんな感じ?
あーこれがさ、ものすんげーめんこい女の子で、マジゲロ吐きそうなデラ美人らしいと、冴子は言っておった
 何でそんな言い方?
白竹さんじゃなくて?
違う。だけど……彼女も隙あらば襲われそうだけどね

 そこまで言うと、王二朗くんは「マジしっこ」とか言いながら個室に入ってしまった。

何だか。その白竹さんところの喫茶店でバイトしてるらしいんだ
へぇ~~もしかしてなんだけどさ、その人。楓蓮とか言う人じゃない? ポニテのねーちゃん

多分その人だと思う。冴子が言ってたんだ。

ありえねー美人だっぺ。と言っておったそうな。

 という事はつまり……

 竜王さんは楓蓮を狙い出したわけか。


 よし。俺の狙い通り。

あれ? ってか何で黒澤くんがその人知ってるの?

だってその人。俺のマジねーちゃんだから


何だかストーカーがどうのこうのって言ってた気がするからさ

なんだと? って、うおっ!

 何だその驚き方は。そう思ってたら「驚きすぎて液体が手に引っかかった」らしい。

え? じゃあ君はその……めんこいお姉さんの弟さんだったの?
そうだよ。楓蓮って俺の姉さんなんだ

 自分の事を姉さんと呼ぶのも慣れなければ。

 

 大丈夫。怖くない。

 俺の正体がバレるなんてありえないのだから

姉さんには強く言ってて欲しい。本当に危ない奴なんだと

でもさ、俺が言ってもまず絶対聞き入れてくれないし、それよりもクッソ強くて、俺も歯が立たないんだよ。

その辺は放っておいていいと思う。多分ヤンキー達が返り討ちに遭うと思うから

しかし……いくら強くても、あいつはマジで卑怯者なんで、何するか分からない。車使って拉致ったり、薬使って眠らせたり、どっかの漫画に出て来そうな悪人だから

 心配してくれるのは有りがたいが……などと余裕ぶっこいていると、王二朗くんは急に手を床につけて頭を下げてくる。


 トイレなのに容赦ない土下座だった。

あの人に何かあれば……俺は死んでも死にきれん。

頼む黒澤くん。姉さんの壁役にこの王二朗を……口添えしてくれんか?

 まさか。こんな事態になるだなんて思わなかった。

 ここまで彼を動かす、その原動力は一体何なんだろうか。

あいつはマジだ。絶対君のねーさんを狙ってくる。

間違いない。信じて欲しい! 何かあってからでは遅いんだ

 あまりの迫力に「言ってみるけど、期待はしないでくれ」と濁す感じに答える。

そっちの件は君に頼んだ。もし断られても俺は俺でねーさんを勝手に守るんだけどさ。

そんであの馬鹿兄妹を締めあげねーと……マジで迷惑かけたくない

 楓蓮に護衛はいらない。

 本当はそれを君に分かってもらおうとしたのだが……逆に圧倒される形となった。


 と、同時に……王二朗くんがここまで危険視する竜王さんはマジでやばいとも思った。



 そう。俺はこういう話が聞きたかったんだ。

 竜王さんはヤバイと聞いてたものの、今までは楓蓮に対しエキサイトした部分が見えなかったからな。


 それはつまり実被害が無いだけに半信半疑だという気持ちもあったが……

 やはり本格的に対策を練らないと、まずいかもしれない。

ありがとう黒澤くん。じゃあ俺は早速行動に移させてもらう

 王二朗くんはスマホで時間を確認すると「また連絡する」と言った瞬間、物凄いスピードでトイレから消えてしまった。


 早速行動って何をするんだ? まだ十一時過ぎだぞ。

 

 俺もトイレから出てくると、今しがた教室から出てきた王二朗くんは、カバンを持って一目散に階段を下っていく。



 王二朗くん。君も結構フリーダムだね。



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登場人物紹介

キャラのプロフィールは、章の始まりにも記載しています。


ここに記載されているのは主要人物です。

その他の登場人物は章の始まりなどに記載しています。


読者視点は神視点。

物語の中の人達が知らないことを全部見る事ができます


また、二章からはキャラの心の声まで聞こえます(フキダシが灰色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年


 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 とても弟思いの良いお兄さん(お姉さん)

 ★ 白峰楓蓮 しらみねかれん


  蓮の女性の姿。白峰というのは偽名。

  黒澤家とは繋がりを見せないように演じる。


  心の中は男の子なので、女の子のファッションやらに興味が無い。

  とても美人なのにあまり自覚がなく、女性の姿はオマケだと思っている。

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生


 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。



 ★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは家族だけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。


 ★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。


 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。

 など、全てを兼ね備えている人。


 二人目の主人公。

 ★ 白竹 美優 しらたけ みゆう


 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。

 自分の家の喫茶店で働いており、メイド服で接客をこなす。


 学校と喫茶店では、雰囲気がまるで違うのには理由があり……

 

 三人目の主人公。 

 

 ★ 白竹魔樹 しらたけまき


 蓮の隣のクラス。美優は双子の姉弟。


 学校ではとてもクール。喫茶店では男の娘?

 双方を知る蓮にとっては、非常に疑問な人物。


 四人目の主人公

 ★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的。学校ではいつも笑顔で誰にでも優しいが……

 

 五人目の主人公

 ★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲



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