港の荷下ろし

文字数 666文字

 天の子どもは街に出ました。

 そこは活気のある港町です。
 汽笛があちこちで鳴り響き、船が忙しなく出入りします。
 桟橋ではたくましい体つきの男たちが、威勢のいい声を上げ、船の荷を積み降ろしていました。
 天の子どもは男たちに声をかけました。

「あの、ぼくにも何かやらせてください!」

 男たちは天の子どもの声を無視して黙々と作業を続けます。
 そして一つの船の作業を終えると、男たちは次の船に移動しました。

「来な!」

 移動する男たちのうちの一人が天の子どもを呼びました。
 そして天の子どもを作業の列に加えます。
 天の子どもは、一番前で、船からの荷物を待ちます。

「行くぞー!」

「おう!」

 船の上から水夫が合図すると、男たちは、一斉に声を上げました。

 最初の荷物が船から投げ落とされます。
 天の子どもは、はりきって受けとめましたが、荷物に押し倒されるように、そのままひっくりかえってしまいました。

「何やってるんだ!」

 船から荷物を投げ下ろした水夫が怒鳴ります。

「おまえには無理だ」

 先ほど声をかけた男が、天の子どもの後ろえりをつかみ、ねこの子をつまみ出すように、列からはずしてしまいました。

 男たちはまた黙々と作業を続けます。

 船から降ろされた荷物は、男たちの手から手へ、軽やかに渡っていきます。
 そして最後尾の男が荷物を荷車に積むと、荷車を押す仲間が、入れ替わり立ち替わり、どこかへ運んでは戻ってきます。
 見ていると簡単そうなのですが、誰にでもできるというわけではありません。

 天の子どもはしょんぼりと列に背を向けて、とぼとぼと歩き去りました。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み