如月真琴

文字数 2,771文字

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ま、ママぁーーーーーーー!!

行かないで……ひとりにしないで……。

ほらほら、男の子なんだから泣かないの。

大丈夫よ。すぐ帰ってくるからね。良い子にしてるのよ。

いつものミルクは戸棚に入ってるわ。

お腹が空いたら冷蔵庫を開けてちょうだい。


じゃあママ、行ってくるわね。

ママぁーーーーーーーーー!!
◇ ◇ ◇

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(あの子のママになってから3ヶ月が経ったのね……月日が経つのは早いわ。

 最初は逞しい男だと思ったのに、いつの間にかあんなに堕落しちゃって。可愛いけれど、少し可哀想だわ。そろそろ次の息子を探しましょうか)

あら、今日はお肉が三割引の日だわ! 買い物に行かなくっちゃ!
お目当てのお肉は3パック、それからお菓子、離乳食、おむつ、ティッシュペーパーにトイレットペーパー……日用品も足りない分、まとめて買っちゃいましょう。

っと……仕事に必要な分は一通り揃えたわね。

これでまた一週間を戦えるわ♪

刺し身ぃーーーー!! マグロの刺し身はいらんかねーーーーー!!
あらぁ、美味しそうなお刺身! これも買っちゃおうかしら♪
最後の1パックだよぉ
あ、それ……私も買おうと思ってたのに。
あら、それは悪いことしたわね。じゃあそのお刺身はあなたにあげちゃう♪

おばさんのことはいいから、美味しく食べてあげなさい。

そのほうがマグロさんも本望でしょう?

い、いいんですか……?

じゃあお言葉に甘えます。ありがとうございますっ……。


食べ物なんて食べるの久しぶり……霊体でも味は分かるのかな……。

美味しく食べてねぇ
◇ ◇ ◇

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さてさて……買い物も終わったし、どっか遊びに行きましょうか。


ふふふーん、それにしてもさっきの女の子、

なかなか可愛かったわねぇ! ママになってあげたいわ!

ねぇねぇそこのお嬢ちゃん、何だか影が薄いと感じたことはない?

この地球破壊規模サイレンで嫌なやつをまとめて殺してやろうよ!

え、いや……べつに誰かを殺したいとか、そういうのは……。

ま、間に合ってます……!

今なら安くするよー? 手軽にボカンって出来て気持ちいいよぉ~?
(あら、さっきの女の子じゃない。――なんだか厄介事に巻き込まれているみたいね。助けに行ってあげないと)
こら、そこの路上販売員、やめなさい。彼女嫌がってるじゃない。

それに張り紙が見えないの?

この辺りで怪しい勧誘は全面禁止されているわ。

おやおや、何ですかあなたは。

それに私は怪しい勧誘なんかではありません。

れっきとした、人類暗殺計画を企てる死神の使いですよ!

何を訳の分からないことを……はぁ。最近変な人が増えたわねぇ。

おいたはそこまでよ!(ポカッ)

ま、ママぁーーーーーーー!!

ママに殴られた……痛いよーーーーーー!!

え、な、何が起きたの……?
さぁ、今のうちに逃げるわよ! 早く!
ママぁーーーーーー!!
◇ ◇ ◇

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ここまで来れば安全ね。早く警察に通報しないと。
あ……あの、助けてもらって、ありがとうございます。

なんとお礼を言ったらいいか……。

礼には及ばないわ。困ったときはお互いさま、でしょう?
…………。

あの、私、帰るところがなくて……

もし時間があれば、少し付き合ってくれませんか?

それは放っておけないわね。

いいわ、おばさんが話を聞いてあげる。

ありがとうございま――。
ママみつけたーーーーーーーー!!

私に魂を捧げてよママぁーーーー!!

ひゃあ!?
いい加減に――しなさぁあぁあああい!!

ママ☆パンチ!! みぞおち辺りを的確に狙った一撃ッ!!

ぐふっ……無念……なり。
(し、しまった……正体が……!)
あら、あなたその身体……それに、透けてる……?
(しまった! もう一度……人間ごっこ!)
何を言ってるんですか! 私は幽霊なんかじゃありません!
幽霊より大変なことになってるわよ。
あちゃー。
◇ ◇ ◇

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なるほどね。事情は大体分かったわ。

私は間々家まどか。みんなからはママって呼ばれてるの。

墓森遥です……。

あの、幽霊になった私の姿を見ても、引かないんですか……?

当然じゃない。これまで言葉を話すマグロやら死神やらゴブリンやら……今更、幽霊ぐらいで何よ。可愛いものじゃない。
ありがとうございます……あなたは強いんですね。

そんな風に受け入れてもらったのは初めてで……何だか、心が温かくなってきました。

今なら私……成仏できるかもしれないです。

あらあら、随分と安い成仏ねぇ。

まだやり残したことがいっぱいあるんでしょ?

ほら、ママに話してみなさいな。

それが……私、誰かに褒められたことが無くて……。

それに恋だって全然足りなくて……未練だらけで、成仏できないんです。

それは可哀想だったわねぇ。いいわ、ママがうんと褒めてあげる。

よしよし、辛かったわね……なでなで。

ま、ママ……。
あらあら、もっとちゃんと呼んでくれないと困るわ。
ママぁぁぁぁああああ……!!
あらあら……うふふ。辛かったわね。大変だったわね。

ほら、このミルク飲んで元気だして。

あ、ありがとうママ……ごくっごくっ。

温かくて、飲みやすくて、すごく美味しい……!

そういう風に褒めてもらえると、逆にちょっと恥ずかしいわ♪

私の自家製ミルクなの。しっかり味わってね。

自家製……なんですか?

ママの身体からミルク……出るんですか?

あ、当たり前じゃない。

あれ、何だか目が怖いわよ? ど――どうしたの?

ママの身体から直接飲みたいです!
何言ってるのこの子!?

じ、自分が何言ってるか分かる!?

こういうことよ!?
構いません。始めましょう。

それに――もしかしたらこれで、

成仏できるかもっていう確信があるんです。

今まで色んな赤ん坊の世話をしてきたけど、

そんなこと言ってきたの、あなたが初めてよ。

……仕方ないわね。

ちょっと脱ぐから、そこで待ってなさい。

……

…………

……………………

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はい、準備できたわ。存分に吸っていいわよ。

……あまりジロジロ見たらダメよ? 恥ずかしいわ。

わぁ、ここからミルクが出てくるんですね!

ママのここ……とっても大きくて立派。いただきます……。

ぁんっ……そうよ、上手ね。歯を立てちゃだめよ。

そう、ゆっくり……んんっ、吸われてる。


ああ、出ちゃう、ミルク出ちゃうぅ!

ひゃあっ!? 口の中いっぱいにママのミルクが……。

温かくて美味しい……。もっと、ください……!

ああっ、そんなにがっつかないで!

ゆっくり丁寧に味わうのよ……そうよ、いい子ね。

幸せ……これがママの味。

そういえば私、こんな風に誰かに甘えたこと無かったなぁ。


もっといっぱい、ママに甘えたかったなぁ――。

あなた……身体がどんどん透けてきてる……。


――成仏、するのね。

ありがとう、ママ。

最後にあなたに出会えて……良かった。

…………私も、遥のママになれて、良かった。

いってらっしゃい。成仏しても元気で暮らすのよ。

おしまい。

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そこまで!

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登場人物紹介


名前:間々家 まどか 


性別:男 


設定:29歳。

週3で家政夫、週2で迷子センターでアルバイトしている。そして週の1日はママサービス。装備は裸エプロンに網タイツ。


能力:ママみ♡るく

頭を撫でることで、ママとして認識してしまう。対象年齢誰でも可能。

いつか「ママなのに母乳が出ないの?」と子供に聞かれてから、ママ失格だ……と感じたまどかは、悲しみ、1日中泣いた。その日から、ち〇こからミルクが出るようになった。

比喩ではなく、実際にミルク。超絶おいしい。みんな飲むべき。でも直飲みはダメ絶対。絵面がよくない。

ママとして認識し、関わることで本当のママの存在を忘れる。

ママとなれるのは1人だけで、次の子供を見つけると、その子のママではなくなる。


「みんなからは、″ママ″って呼ばれてるよ。ママに甘えていいからね。」


作者:南雲あや


「わ、私なんて――死んでいる価値もない



スケスケで丸見えな浮遊霊

○墓森 遥(はかもり はるか)

性別:女


母校のハルマゲドンに巻き込まれて死んだ内気な少女。享年17歳。

あまり強い魔人ではなかった彼女は大した活躍も出来ず此世を去った。

誰かに褒めてもらうこともなく、誰かに恋されることもなく――。


彼女が次に目覚めたときに感じたのは浮遊感だった。

身体は透けて、足も見えない――まさに幽霊。

現世にたっぷり未練を残した彼女は、

亡霊の姿となってこの世に留まっていた。


誰かに褒めてもらいたくて――誰かと恋がしたくて。

幽霊活動(略してユウカツ)をこそこそ始める彼女だったが、

この姿は大きな問題を抱えていた。


見えてしまうのだ――誰にでも。


「――あれ? 普通は幽霊って見えないもんじゃないの?」

先輩幽霊によると、これは稀によくある(?)ことで、

恋に関する未練が強いと発生してしまうバグらしい。

おかげで街を歩けば騒がれる。幽霊がいるって。

恥ずかしがり屋の彼女にとって、それは大問題だった。

一刻も早く成仏したい、消えてしまいたい――。


未練が消えれば成仏できると先輩は言う。

それには、生身の人間と両思いになる必要があった。



能力名:人間ごっこ

実体を持つ人間を生み出し、憑依できる能力。

スケスケで丸見え体質の彼女にとって生活に欠かせないもの。

見た目を自由に変えることができて、不自由なく動かせる。

ただしビックリすると能力は解除されてしまう。

亡霊になっても大した力を持つことは出来なかった。



恋する動機:今度こそ成仏するため。




イラスト:三日月アルペジオ

作者:如月真琴

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