⒈ バルカ・サリ砂漠で
文字数 2,303文字
巨大な赤い太陽が、
「ミナ、疲れたら言えよ。無理しなくていいんだからな。」
カイルとミーアのやや後ろから、レッドが落ち着かい様子でそう声をかけた。
「無理なんてしてないってば、もうっ。」
ミーアは勢いよく振り返って、もともとふっくらした
レッドはこのセリフを、
「そんなに心配しなくても大丈夫さ。ミーアの足取りを見てれば分かるって。」
レッドと肩を並べているリューイが、カイルに聞こえない小声で言った。
「けど、こんなところでまた体調を崩されでもしたら ―― 。」
そこで、レッドの顔つきがサッと変わった。急に立ち止まり、険しい顔で一点を
うごめく影と、殺気に気づいたからだ。
「レッド・・・。」と、リューイが低い声で
「ああ・・・何かいるな。」とレッドが応じると、リューイは、「誰か・・・だろ?」と苦笑した。
「
レッドは、嫌悪感に顔をしかめるというよりは、困ったな・・・という表情になる。いつもはただの煩わしいものに過ぎないそれらも、今回は少々手間取ることになりそうだからだ。
ここでふと、テオの助言を思い出したレッド。そして、「幸先がいい・・・ね。なるほど。」と、皮肉を呟いて肩をすくった。いったい、どういう意味の幸先がいいだか・・・。
その間もさきさき歩き続けていたカイルとミーアを、リューイが呼び止めた。
そんな二人の警戒心になど全く気付く様子もなく、カイルが振り向く。
「なに?」
「それ以上行くな。」
「なんで?」
カイルは首をかしげた。
二人をその場に立ち止まらせたまま、レッドとリューイは、前方に見える怪しい場所へ向かって歩きだした。いつでも対応できるよう気を引き締めて。
ところが、あえて二人が近付いていっても、相手はなかなか姿を現そうとしない。
二人は抜かりなく、その砂丘の
向こうはまだ息を潜めている。
「何か用か。」
レッドは不愛想に、見えぬ相手に声をあげて呼びかけた。
するとようやく、一人、また一人と体を起こし始めた。そこに腹這いになって様子を
やがてその集団が周りにそろうと、中でもリーダー格に見える巨漢に、レッドは視線を定めた。
「先に言っておいてやるけど、俺達はそっちが期待してるほど旅費を持ち合わせちゃいない。金目の物もゼロだ。」
「あるさ。」と、男は言った。
そして、どういうことかと顔をしかめたレッドを見ながら、
「向こうの小僧だ。」
そう言われて、レッドはカイルを振り返った。そして、「ああ・・・。」と、思わず納得の声を漏らした。
盗賊というものは、金品だけでなく金になれば
だが、それなら、リューイもミーアもじゅうぶん金になる。なのになぜ、カイルだけに狙いをつけるのか・・・。レッドはリューイと顔を見合い、それからミーアに視線を向けて首を捻った。いくら顔が良くても
「あいつだけ?どうして。」
「黙って小僧をこっちに寄越しな。逆らうと――」
「断る。」
レッドは聞き慣れた
すると男は含み笑い、「ふ、いいだろう。いた――」
「痛い目にあってもらおうか。俺は気が短けえんだ・・・ってところか?」
「少しは
そんなレッドをただ睨みつけていた一味の頭は、無言でまた顎を動かした。だが今度は、子分達に「二人を片付けろ。」という合図を送ったのである。
レッドは辺りを見回した。離れたところに、かなり風化の進んだ建物か何かの跡がある。
「カイル、ミナを連れて向こうの
そう鋭い声を上げたレッドは、やむなく剣の
二刀流の鷲・・・それは、そら恐ろしいまでの
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